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空を渡るは目覚めし艦 ~大界征くは幻の艦(第3回/全3回)

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空を渡るは目覚めし艦 ~大界征くは幻の艦(第3回/全3回)

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「撤退かあ。よおし、ピヨ、まだ残ってる人をつかまえて戻るぞ」
「ピヨォ!!」
 アキラ・セイルーンに言われて、ジャイアント・ピヨが遺跡の中を逃げ回っているロートラウト・エッカートを見つけた。即座に近寄っていって、その短い嘴でつまみあげる。
「ああっ、食べちゃダメだからネ。お腹、壊すヨ」
 アリス・ドロワーズが、一応注意する。
「あーん、ボクは餌じゃないよー。みんな、エヴァルトのせいだーっ!」
 首根っこをつままれたロートラウト・エッカートが、ジタバタしながら叫んだ。
 
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「コハク、無事だった?」
 黄金のイコングラディウスが、真紅のマントを翻してコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)の前に降り立った。
 無事に遺跡から脱出してきたコハク・ソーロッドが、連れていたローゼンクライネと共にグラディウスのコックピットに入り、増設された機内オペレータ席に座った。
「敵の母艦はどうなったのかな?」
「ゲートに逃げ込んだようですね」
 コハク・ソーロッドの問いに、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が答えた。
「すぐにフリングホルニに行って、後を追いかけるよ」
 そう言うと、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がグラディウスを発進させた。
 
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『まだ残っている人がいたんだね。早くつかまってよ』
 Esprit・Mで駆けつけた黒乃音子が、飛行形態で無限大吾たちの許へ降り立った。
「助かる。シャトルの場所までまで運んでくれないか!」
 無限大吾が叫んだ。
『脚部につかまってよね。ちょっと乱暴だけど、シャトルのとこまで運ぶよ』
 無限大吾たちがEsprit・Mの脚部につかまるのを長曽禰サトが確認する。
「いくよー」
 無限大吾たちを振り落とさないように注意しながら、黒乃音子がEsprit・Mを発進させた。ヴィマーナ母艦がゲート内に消えたことによって、イコンの出力は正常に戻っている。
「皆さん、早くシャトルに乗ってください!」
 遺跡の外では、魯粛子敬が脱出してきた人々をシャトルへと誘導していた。そこへ、Esprit・Mから下りた無限大吾たちが合流した。
 シャトルの中には、すでにトマス・ファーニナルたちと、桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)エヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)エリス・クロフォード(えりす・くろふぉーど)、ニルス・マイトナー、フレロビー・マイトナーたちが搭乗していた。他の突入隊の者たちも、もう一台のシャトルに無事辿り着いたようだ。
「よおし、急いでフリングホルニに戻るよお!」
 フレロビー・マイトナーがシャトルの発進をうながした。
 
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「修理を頼むよぉ」
 逸早くフリングホルニに戻ってきた清泉 北都(いずみ・ほくと)が、アシュラムで運んできた神剣エクス・カリバーンをイコンデッキに転がした。
「とりあえず、次の出撃に備えて、補給と機体整備をいたしましょう」
 クナイ・アヤシ(くない・あやし)が清泉北都をうながして、アシュラムをイコンハンガーへとむかわせた。天城 一輝(あまぎ・いっき)ら、メカニックがあわただしく集まってくる。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)! おのれ、ソルビトール・シャンフロウめ! この俺をあんな目に合わせるとは、許さんぞ!」
 イコンからのそのそと出てきて名乗りをあげたドクター・ハデスであったが、誰も聞いちゃいない。
「くそう、とはいえ、あの艦隊相手に、ダメージを負ったカリバーンでは戦闘にならぬか……。仕方がない。ここで引くのは癪だが、現状をパラミタにいる十六凪に伝えて次の策を練るとするか。オリュンポス・パレスさえあれば、あんな艦隊など蹴散らしてくれるわ!」
 とりあえず神剣エクスカリバーンの通信機は壊れているし、フリングホルニの通信設備も使わせてはもらえないだろうということで、ドクター・ハデスは精神感応でニルヴァーナ創世学園に待機している高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)と連絡をとることにした。
 
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『――ということで、至急、十六凪に連絡をとって敵をこてんぱんにしてしまえ。そうだな、敵に対する口上は、これこれこういう感じでだなあ』
『――はいはい。このガラクタを持って、月基地へ行けばいいんですね。それで、オリュンポス専用秘匿回線確保計画を実行するんですよね』
 なんだか、凄く面倒くさそうに、高天原咲耶が答えた。ちょっと溜め息をつきながら、ハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)の方をチラリと見る。
「とりあえず、行きますよ」
「了解シマシタ」
 高天原咲耶に言われて、ハデスの発明品が後をついてくる。
 事態をまったく理解しないまま、二人は始めの回廊のゲートを通って、月基地へとむかった。
 
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 フリングホルニには、遺跡から帰還したイコンが次々に着艦していた
 急ぎ帰還したヤークト・ヴァラヌス・ストライカーから、デュランドール・ロンバスがエステル・シャンフロウをかかえるようにして飛び降りてくる。
 それよりも少し早く、便乗してワイヤーでつかまってきていたエヴァルト・マルトリッツが、自機であるヴェルトラウムIIの方へと走りだしていった。
 被弾して大破した十七夜リオのメイクリヒカイト−Bstが、猪川勇平のバルムングにささえられてイコンデッキに下りてくる。
 ローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)が、消火剤を積んだ小型飛空艇でそちらへとむかった。
 甲板上では、きらびやかなラ・ソレイユ・ロワイヤルが接舷し、鳴神裁たちをフリングホルニに乗り移らせている。
「ブリッジへ急ぎましょう」
 デュランドール・ロンバスに先導させて、エステル・シャンフロウがフリングホルニの通路を走っていった。
「無事に帰ってきてなによりだ。それで、あたしらの出番は……」
 戦闘要員として待機していたセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)が、通路でエステル・シャンフロウたちに声をかけてきた。
「話は後だ。大人しく指示を待て」
 指揮官が、いちいちと個人に説明などしている暇はないと、デュランドール・ロンバスがセフィー・グローリィアを退ける。そのまま、エステル・シャンフロウたちはブリッジにむかって走り去っていった。
「なんだよ、あわただしいじゃん」
 無愛想だと、オルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)がちょっと唇の先を尖らせた。
「それだけ、ワタシたちの出番が近いということですよ」
 エリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)が、そう言ってオルフィナ・ランディをなだめた。