蒼空学園

リアクション

　
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「しかし、主のイコン嫌いにも困ったものだな」
「ビヤーキーちゃん、良い子なのに、なんででしょうかね〜。お姉様」
　フリングホルニのカタパルトに上がってきたスフィーダタイプのＬｏｒｄ−Ｂｙａｋｈｅｅの中で、フォン・ユンツト著　『無銘祭祀書』（ゆんつとちょ・むめいさいししょ）とフォン・ユンツト著　『無名祭祀書』（ゆんつとちょ・むめいさいししょ）がぼやいていた。
「とにかく、ビヤーキーちゃん、ＧＯ！　ＧＯ！　なのですよー」
　メインパイロットシートに座ったフォン・ユンツト著『無名祭祀書』が、スロットルを開いてカタパルトからＬｏｒｄ−Ｂｙａｋｈｅｅを発進させた。
　
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「ファスキナートル、カタパルト・オン！」
　土佐のイコンデッキでは、誘導灯を振り上げた大田川　龍一（おおたがわ・りゅういち）が、艦載しているファスキナートルに指示を出した。
「発進指示、来ましたわ」
　サブパイロットシートのエレナ・リューリク（えれな・りゅーりく）が、メインパイロットの富永　佐那（とみなが・さな）に告げた。
「了解。ファスキナートル、出ます」
　大田川龍一が、勢いよく誘導灯を振り下ろすのに合わせて、富永佐那がファスキナートルを発進させた。
　
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「ええと、ここはどこ？」
　のんびりと飲み物を求めてＨＭＳ・テレメーアの艦内をふらふらしていた鬼龍　貴仁（きりゅう・たかひと）であったが、いつの間にかイコン格納庫隣の保守部品置き場に紛れ込んでしまっていた。
「これはなんだ……？」
　そこにおかれた巨大な砲身を見て、鬼龍貴仁が興味津々に近づいていった。
　ＨＭＳ・テレメーア用の予備の荷電粒子砲だ。修理交換用の部品らしく、砲塔用の外部装甲は取りつけられておらず、機構がむきだしである。
「こいつはいいかも……」
　そう独りごつと、鬼龍貴仁はすでにゲシュヴィントヒルフェに乗って出撃している鬼龍　白羽（きりゅう・しらは）と鬼龍　黒羽（きりゅう・こくう）を急いで呼び戻した。
　
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『――ウィンダムは、ハーポ・マルクスの直掩に着くよ』
『――了解だ。ばーさんも頑張ってるみたいだしな』
　ジェファルコンタイプのウィンダムから、下方に位置するハーポ・マルクスを確認しながら、高崎　朋美（たかさき・ともみ）とウルスラーディ・シマック（うるすらーでぃ・しまっく）が精神感応で言葉を交わした。
　ハーポ・マルクスでは、高崎　トメ（たかさき・とめ）が砲手として頑張っている。
　前方に位置するウィスタリアの左右には、カル・カルカー（かる・かるかー）のハーポ・マルクスとエリシア・ボック（えりしあ・ぼっく）のオクスペタルム号が前進してきていた。
「さて、やってみますかあ。いきますえ、ドリルはん」
「おう、任せとけ」
　高崎トメが、隣にいるドリル・ホール（どりる・ほーる）をうながした。先手必勝とばかりに、まずデッキガンで先制攻撃を遺跡の壁へ仕掛ける。
「始まりましたわ。さあ、いきますわよ、ノーン」
　それを見たエリシア・ボックが、オクスペタルム号の操舵輪を掴んだまま叫んだ。
「うん、やっちゃうよー！」
　ノーン・クリスタリア（のーん・くりすたりあ）が嬉々としてガトリングガンを発射した。ここにはいない御神楽　陽太（みかぐら・ようた）の分まで頑張るつもりだ。
「もう攻撃開始ですか！？」
　二隻の攻撃につられるようにして、アルマ・ライラックがあわててウィスタリアの要塞砲を発射した。
　まだ旗艦からの攻撃指示のないまま発射された砲撃が、巨大な遺跡の壁に命中して爆発を起こす。
「テレメーアは攻撃をしないのでございますか？」
　常闇夜月が、ホレーショ・ネルソンに聞いた。
「まだ攻撃指示は出ていない。ウィスタリアにも、砲撃を中止させろ。以降は、火器管制リンクシステムに従って攻撃を行うように」
「伝えます」
　ホレーショ・ネルソンの指示で、ローザマリア・クライツァールがウィスタリアに通信を入れた。
「誰が、発砲命令を出したか。まだ、中の状況は分からないんだぞ。勝手な攻撃は止めさせろ！」
　すぐに、グレン・ドミトリーが中止命令を出した。
「状況報告」
「着弾を確認。敵構造物に変化なし。防御障壁を展開しているものと思われます。遺跡内部、映像データ届きました」
　リカイン・フェルマータが、陣風からの遺跡外壁の映像と、ブラックバードからの遺跡内映像をメインスクリーンに分割して表示させた。
　遺跡外壁は微妙に画像がぶれており、何らかのバリアにつつまれているようであった。その範囲は、物理的な外壁を越えて上空にものびているようである。
　遺跡内では、すでに戦端が開かれていて、浮遊し始めたヴィマーナと突入部隊のイコンが戦闘を繰り広げている。すでに、多くのヴィマーナがゲート内に突入しているようであった。現行戦力では、ゲートへの突入を完全には防げないでいるらしい。
「アストロラーベ号と巡洋戦艦　アルザス接近。情報システム、リンクします。イコン・ヤークトヴァラヌス百式から着艦要請が来ています。また、伝言があります。再廻の大地のゲートとゴアドー島のゲート間の接続が断たれたそうです。現在、通信、及び回廊の使用が不可能になっています。さらに、ニルヴァーナ創世学園においても、月基地とアトラスの傷跡の宇宙港との通信回線が切断したままのそうです」
　あわただしく情報処理をしながら、リカイン・フェルマータが報告した。
「宇宙港は、通信施設が破壊されたままだから仕方ないとしても、ゲートの方は大問題だな。これでは、パラミタと連絡をとる手段がない。これは、敵の情報封鎖と見るべきか……」
　グレン・ドミトリーがちょっと考え込む。
「各艦が、ゲートへの直接攻撃の許可を求めています」
「それは待て。すでに敵は相当数ゲート内に侵入している。今ゲートを破壊してしまっては、再廻の大地のゲートが使用できるようになるまでは、追撃も連絡もできないことになってしまう。その確証がない以上は、ゲートの破壊は得策ではない。それに、味方が遺跡にいる以上、あれだけの規模のゲートを破壊したらただではすまないだろう」
　すっかり後手に回ってしまったと、グレン・ドミトリーが渋い顔をした。
「艦隊に移動指示。障壁を避け、遺跡東側上空から艦砲射撃で敵艦船を移動不能にする。完全破壊する必要はない、行動不能にさせ、ゲートに入れさせるな！」
　グレン・ドミトリーの命令一下、艦隊が回頭しながら一斉に移動を始めた。