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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第2回/全3回)

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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第2回/全3回)

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ビショップを倒せ2

 クローラ・テレスコピウム(くろーら・てれすこぴうむ)は、この遺跡にイレイザーの群れが向かっていると知った直後、フォトンでの出撃を決め、セリオス・ヒューレー(せりおす・ひゅーれー)と雑談していた。
「今までは、気づいた時には遺跡は壊されていましたが、今回は奴等が来る前にここまで守りを固められる時間がある。
 湖底に金属製のネットを広範囲に敷き詰めて埋め、ネット弾なものを仕掛けておければな……。
 完全に封じることができなくとも、多少動きは鈍るだろう。
 岩陰を利用してイコンを潜ませておき、奇襲をかければかなり有利だろう」
「圧倒的な数を一度に相手するのは愚作だしね。敵軍の足を止めたところに遠距離からの砲撃の雨を降らせ、数を減らす。
 そしてこれを突破する強敵を各個撃破する……軍隊の戦い方だね」
「ああ。だが少し調べてみたんだが、用意するのにものすごく準備が要りそうなんだ。
 金属製であれよほど特殊なネットでないと簡単に破られてしまうようだ。あまり実用的ではないな。
 フォトンは水中特化仕様ではないから、少しでも有利になるような方法があればと思ったんだが……」
「まあ、出来るだけのことを僕たちなりにすればいいじゃないか。
 いざってときはヴィサルガ・プラナヴァハもあるから、ビショップも相手取れないことはないと思うんだ」
「インテグラル・ビショップか……」
 そして今、二人はイコンに乗り、わりだした敵のルート側面に岩等を活用して潜んでいた。ここをしばらくたてばイレイザーを従えたビショップの一体が通る。遺跡防衛のために出撃しているヘクトルのヤークトヴァラヌスも針路上に陣取り、戦いの構えを見せていた。
董 蓮華(ただす・れんげ)スティンガー・ホーク(すてぃんがー・ほーく)とともに紅龍に機乗し、ヘクトル機の死角をカバーする位置についた。
「お久しぶりです、董蓮華です」
「……ああ。元気かね」
「ええ、元気にやってますっ」
そしてクローラが不意打ちをかけるべく潜む岩陰の座標をヘクトルに伝える。
「まずは前座どもを何とかしないとな」
スティンガーが皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「そう、こんなところで藻屑になってる暇なんかないのよ!
 丁度数日前私は水中戦の訓練をしていたわ! なんという偶然!?
 訓練を生かして落ち着いて対処したいわね」
蓮華が言った。ヘクトルの攻撃にあわせてイレイザーにライフルの弾を撃ち込み、ヘクトルの機体への攻撃をシールドで受け流す。
遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)アンシャールから通信が入った。
「イレイザーはこちらにも任せてください。遺跡に入らせないため、多少の危険は覚悟の上。
 前線でイレイザーの群れを薙ぎ払います」
「わかった、が、無茶は慎め」
短くヘクトルからメッセージが入る。
「俺たちはスポーンの街を守る。イレイザーを遺跡に立ち入らせはしない」
羽純は応え、高速機動を使い、命中と回避を上げ。多数のイレイザーに対応すべくホークアイで視界を広く、戦況を把握できるよう準備を整えた。殺気看破で敵の動きの変化の捕捉も万全に、各種レーダーやセンサーの情報と照らし合わせながら、歌菜に助言する。
「座標5−854の群れに。敵が固まっている」
「了解」
「慎重に、な。受けるダメージは最小限が鉄則だ」 
アンシャールはマジックカノンで弾幕を張りながら、羽純の加速スキルを使い一気に敵の中へ飛び込んだ。歌菜が戦慄の歌でイレイザーの足止めを試みながら、鼓舞の歌で威力を増した暁と宵の双槍の魔力の波動で攻撃でする。
「ダメージを与えるだけではダメだ。トドメを刺し、一体ずつ確実に倒せ。
 背後に生かした敵を残すな」
「うん、わかってる」
 十七夜 リオ(かなき・りお)フェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)とともにヴァ―ミリオンで参戦していた。
「食料ってのは大事だ。特に宇宙船みたいに限られたスペースだと持ち込む量に限りがあるしな。
 正直、、藻から食料を作るここのスポーン達の技術は正直喉から手に出るほど欲しい。
 そう思ってあの街に行ったんだよ。
 そしたらよ、スポーンがさ、楽しそうにお店やっててさ。
 食料品店に入ってみたのな。美味しかった……。んでさ、また買いに行くって約束しちまったんだ……」
きっとモニター越しにイレイザーの奥に佇むビショップを見つめる。
「だからさ、お前らにあの街を壊されちゃ困るんだよ!
「目標はインテグラルビショップの1体。確実にコイツだけは仕留める! 無理せず無茶して行くよ、フェル!」
「わかりました。ビショップまでの道を切り拓きます」
 フェルクレールトは周囲の状況を把握するためにディメイションサイトを使い、最適のルートを割り出す。手始めに回避のみでイレイザーたちの注意をひきつけ、ハメルンの笛吹きさながら、後方に多数のイレイザーを従えて、ビショップめがけて突き進んでゆく。
「いくらなんでも、単機ではムチャだ!」
ヘクトルが呼びかけ、そのあとをヤークトヴァラヌスで追う。すぐにクローラのフォトンも追随する。
「君たちに用はないから。はいはい、邪魔だよ」
立ちふさがるイレイザーをセリオスがスキル、反射回避や行動阻害を使い、あたかもただの障害物であるかのように避ける。ビショップの迎撃をきっちり回避しながら、リオのヴァ―ミリオンが艦載用大型荷電粒子砲で後方に引き連れたイレイザーを粉砕した。そしてそのまままっすぐにビショップの方へと向かう。
「正面切って行くつもりかッ!」
ヘクトルとクローラは進路を変え、ビショップの背後に回りこむような形をとった。リオの機体はまさに猪突猛進という感じである。それをサポートするにも、協力して当たるにしろ、別方向からアクションをかけるほうが良い。砲撃での爆炎にまぎれながら着々とビショップの背後に迫る。湖底の遺跡の崩れた建物や岩も、その動きを助けてくれた。
「接近されるまでにもう少し減らせる。焦って前に出て戦線を広げないで」
蓮華が呼びかけるが、リオからは決意を秘めた返事が返っただけだった。蓮華はすぐに威力を強化した多弾頭ミサイルランチャーをリオ機の周囲にいるイレイザーめがけて撃ち込んだ。スティンガーが敵の動きと殲滅量を計算し、蓮華に攻撃集すべきポイントをアドバイスすると共に、比較的手薄な位置をヘクトルに伝える。
「敵が副司令を狙う可能性も大いに有りうるから、最悪シールドを構え機体で受け止めるぞ」
「もちろんよっ!」
そこにビショップの右手から柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)のインテグラル・ナイト星喰が急接近してきた。はなから恭也の視野にあるのはインテグラル・ビショップのみだ。
「雑魚の相手をしてるより、指揮官に相当するビショップ潰した方が良いだろう。
 数で攻めてくんならこっちは頭潰して戦おうぜ」
荷電粒子砲とレーザーマシンガンでリオ同様針路前方のイレイザーを粉砕しながら、一直線にビショップへと向かってくる。
「まぁ、他のナイトとちっとばかりデザインが変わっちまったが、性能には問題ない。
 いや、本当ヤバイデザインだけど問題無いよ? 若干ルークみたくなってるけど問題無いからな。
 ちょっと侵食が進んでるだけだから!
 インテグラルがヴィサルガ使って同族を殺す。最高にふざけた使い方だと思ったんだがな。使用の許可はできませんだとよ。
 ヴィサルガ・プラナヴァハさえ使えたら! リミッターなんぞ超えて見せてやったのにッ!」
「ムチャをするなよ……」
どこか諦観のにじむ声でヘクトルから通信が入った。
「どうせならビショップとは一対一で戦いたかったが。騎士で僧正を潰してやろうと思ったのにな」
カルタリと機晶制御テンタクルで接近戦を仕掛けるが、ビショップは素早く動いてダメージを与えられない。
「まずは小手調べ、ってとこに気付けよ?
 くははっ、楽しくなってきたぜ。
 行くぞ星喰、あのデカブツを叩き潰してミンチにしてやる」
 出来る限りの攻撃を叩き込むッ!」
ほぼ同時にビショップの左手にいたヤークトヴァラヌスが一気にビショップとの距離をつめた。水中でも空中と動きは変わらない。ヘクトルの機体が接近できるように弾幕援護を行っていた紅龍がヘクトルの護衛位置から大きく外れる。
フェルクレールトが呼びかける。
「リオ、覚醒を申請」
「全てを振り払って飛ぶよ……V−LWSリミッター解除申請OK」
「了解、ヴァーミリオン、覚醒シークエンス、起動!ツインリアクター、フルドライブ!!」
 V−LWSリミッターリリース! さぁ、思う存分……翼を伸ばしな、朱雀!」
通常時は定形のレーザーウィングであるV−LWSの腰左右3対の翼が、覚醒に加えリミッター解除したために、その姿を保てなくなった。レーザーウィングの外周に炎が滴る眩い光の翼と化す。紅龍が即座に動き、ヴィサルガ・プラナヴァハを使い、その状態でビショップに組み付き、ミサイルポッドの全弾を叩き込んだ。スティンガーが薄く笑う。
「この距離だ。避けられはしない。勿論俺達も無傷ではすまないが、肉を切らせて骨を断つ!」
爆発のダメージにビショップが怯む。紅龍は残るパワーを振り絞り、戦線から脱退する。それを見届け、セリオスがクローラに呼びかける。
「いまだクロ!」
フォトンの対INT用のスタングレネードが至近距離からビショップの背部を直撃した。そのまま機晶ブレードで、ビショップの背胸部に鋭く突きを入れる。鉄の守りで自機を防御しつつ、ブレードを抜いて、更に一撃。向き直ろうとするビショップの横腹を切り裂く。フェルクレールトも同時にV−LWSで素早い剣戟を見舞っていた。星喰も持てる武装の全てを残存エネルギーを考えぬ勢いで叩き込む。リオがコクピットでビショップを見据える。
「光翼の剣舞……一撃……二撃……三四五六! これで終わりだよっ! 舞朱雀!」
歌菜のアンシャールもヴィサルガ・プラナヴァハを使用して暁と宵の双槍からすさまじい魔力の波動を放出し、ビショップ周辺のイレイザーをなぎ払っていたが、ビショップに総攻撃を行うと見て向き直る。
「さぁ、アンシャール、羽純くん、全力で行くよ! リミッター解除!
 私達の力が何所まで通用するか分からないけど……だ負けられないから……全力で行くだけですッ!
 暁と宵の双槍の斬撃、届けーッ!」
羽純は黙って微笑んだ。全員の最高の一撃がインテグラル・ビショップを見舞った。激しい白熱光に包まれ、ビショップの輪郭が黒く浮かび上がり、次の瞬間一気に灰となって空気のような奇妙な水中に雪片のように舞い散った。