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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第2回/全3回)

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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第2回/全3回)

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パラ実校舎を防衛せよ

 一方こちらはハチに似た姿のスポーン変異体――暫定的にアピスと呼ばれている――により、操られてイレイザーと戦っているパラ実校舎。国頭 武尊(くにがみ・たける)は腕組みをしてアピスを見つめた。
(ナカマの所に行きたいって理由は分からないでもないが……大事な分校をぶっ壊されては困る。
 アクリト教授が以前、『原始的な感性に訴えかければ意思疎通が図れるかもしれない』と言っていたように思うが……)
彼のパートナーの猫井 又吉(ねこい・またきち)ダイノザウラーのメインカメラで周囲を撮影しながら校舎を守るべく出撃している。その映像を夜露死苦機械犬ニルヴァーナ分室にある映像出力装置を使い、内部からモニターしているが自由な視点視野というわけには行かない。アピスのいる『校舎』最深部からは外をうかがい知るすべはない。にもかかわらずアピスは外が見えているかのごとく校舎を第二の体として操っているのだ。
「何か、見るすべがあるんだろうな……」
武尊は呟き、アピスの顔をまっすぐ見た。触角の間にひとつ宝石のような瞳があり、、その左右、やや下に大きな複眼を持つ生き物は、繊細な触角を動かして武尊のほうに向けた。これもきっと何かのセンサーの役割をしているのだろうと武尊は思った。テレパシーによる接触が良いだろうと判断し、思念を送ってみる。
『外が見たいんだ』
イメージ映像として、真っ暗で何も見えないイメージと比較して明るく周りの景色がよく視えているイメージを送ってみる。だがアピスには意味がよくわからなかったらしい。
『……?』
混乱した思考が帰ってくる。ついで描画のフラワシを使い、ポータラカお絵かきボードに外で暴れているイレイザーの絵を書き、その絵を塗り潰してみる。アピスの触覚が震える。
『ナカマ、マモル』
やや重々しい、ハッキリした強い思念波が返ってきた。少し間をおき、アピスが触覚を嬉しそうに震わせた。
『ナカマ、クル』
『ナカマ?』
武尊が問い返すと、レナトゥスのイメージ映像と共に喜びに近い感情の波が押し寄せてきた。
「うーむ。子育て経験者でも居ればもっと上手く出来るのかもしれないが……。
 コレばっかりはどうにもならないか」
校舎の外では又吉がダイノザウラーを駆って、時折頭部周辺に来るイレイザーをレーザーバルカンで牽制し、無尽パンチを叩きこむというつもりで巨大イレイザーの頭部付近に陣取っていた。僚機も迎撃してくれているので、いまのところさほど激しい攻撃は来ていない。
「舐めんじゃねーぞコノヤロー。
 水中戦闘用に改造したダイノタンク(仮名)にパワーアップしたダイノザウラーの凄さを思い知らせてやるぜぇ!
 ……と言いたいとこだけどよ、武尊の奴がメインカメラの映像をどうとかって言ってたからな〜。
 激しく動きまわって戦えねーし。あーあ」
 ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)恐竜要塞グリムロックで出撃していた。やはり思いは同じ、校舎を守るというものだ。
(パラ実分校校舎が無事ならば今後の活路を見出せると思うし。校舎は可愛い我が子みたいなものだからな)
巨大イレイザーも決して動きが鈍いわけでも戦闘力が低いわけでもないが、やはりここは万一を見据えて動くべきだとジャジラッドは考えたのだ。要塞砲やイコンで迎撃しにくい小型の敵には、超電磁ネットで動きを止め、弁天屋 菊(べんてんや・きく)ととそのパートナー親魏倭王 卑弥呼(しんぎわおう・ひみこ)と連携して対処することになっていた。魔導レーダー、顕微眼、ダークビジョンを使い、敵がどの方角から来るかを察知し、仲間に通知する。また要塞内にも対イコン傭兵を配置。万一を考え、アンチナノマシンブレードも装備しての万全の構えである。
「今までのようにイレイザーだけが敵ってわけじゃなさそうだしな……」
スポーンたちが生活する遺跡をパラ実分校校舎――アピスの操る巨大イレイザーだが――は守ろうとしているようだ。両方守れれば理想だが、パラ実生としては万一の際は遺跡を捨てて、どうにか校舎を戦線から離脱させるよう、武尊には伝えてある。
(アピスはパラ実分校生に対して敵か味方かくらいの認識しかおそらくはあるまい。
 今回のことで味方以上の信頼に足る者として認識してくれれば良いんだが。
 これまで以上に友好な関係が結べれば、何らかの働きかけに対しても積極的に動いてくれるんじゃないか……。
 一段落したら、簡単な言語学習キットでもアクリトに頼んで、アピスに読み聞かせでもしてやるか)
こちらに接近しつつある一群を発見し、要塞砲を撃ち込むと同時に超電磁ネットを展開する。菊はジャジラッドからの連絡を受け、ネット周辺の小型のイレイザーを相手取る。卑弥呼がイナンナの加護で菊と自分の防御をあげ、野性の蹂躙で魚類、甲殻類などを大量に呼び寄せ、イレイザーの視覚情報を担っていると思しきあたりに雲霞の如く纏いつかせる。
「鯛やヒラメの舞い踊り……、幻惑されてるうちに仕留めてやるよ」
言うなり我は射す光の閃刃を広範囲に放つ。菊が傷を負ったイレイザーにシルバーアヴェンジャーを振るい、止めを刺す。
「水の中でどれだけ刀を振り回せるのか……って、考えてる暇が有ったら身体を動かさないとな」
「魔法攻撃にはそういう制限はない分、ラクだね。まぁなんにせよ、早いとこ片付いてくれないと困るね。
 意思を持って暴れる校舎じゃさ……」
卑弥呼が言う。
「うーん。アピスが赤ん坊と同じだとしたら、疲れて寝るまで暴れさせておくとかになるんかねぇ……。
 湖底遺跡を守りたいらしーから、守らせてやって満足するか飽きればねぐらに帰ってくれるんじゃねーかなぁ?
 とはいえ……ガラガラの代わりに巨大光条兵器を与える展開になるんじゃないだろうな……」
「どうなんだろうねぇ」
「レナトゥスがここにたどり着いて、アピスとコンタクトを取ることで何か変わる……ってか無事辿り着いてくれないと始まらない気がするんだよなぁ」
菊は言って、校舎を仰ぎ見たのだった。

 なお、このとき召喚された魚の一部は、その晩の食卓を賑わせたという。