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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第2回/全3回)

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【光へ続く点と線】遥か古代に罪は降りて (第2回/全3回)

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ビショップを倒せ1

 大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)とともに薔薇学の誇りをかけて、イコン・ファーリスの愛機「バンデリジェーロで出撃していた。
「インテグラルナイトも正式化されたな。あれは未知の可能性と性能を秘めてはおる。
 せやけど、あまりにも未知の部分が多すぎる。まだ全ての性能を安定して使えないやろ。
 そのテスト運用が充分にこの戦闘で行なえるように、こっちはなるべく支援にまわる、それが今回の僕の考えや」
泰輔は一旦そこで言葉を切った。以前のジェイダスとの会話を思い出す。
『イコンがどうのではなく、各々の生徒たちがこの状況でどう振る舞うか、好奇心や美学をどう昇華するか、それだけだろう』
あのときジェイダスが念頭においていた美を、己がどれほどのことが体現できるのか、それを試す機会だと泰輔は考えていたのだ。
「僕らは、いわば花束や。
 大輪の薔薇のみだけで美しい存在かどうか――ちゅうこっちゃな。
 カスミ草や、ラッピングの紙、飾りリボン……そういうのぜーんぶまとめてこその、花束や。
 ……っちゅうわけで、カスミ草の意地、みせたろか!
 この戦いは、フルスロットルでバリバリいくでぇ!!」
泰輔がにいっと笑う。顕仁は泰輔を見つめた。高揚する姿は眩しいくらいに輝いて見えた。だがそういった感覚は暴走にも繋がりかねない。操縦を担当する自分は、手綱を引き締める方向で動いてこそバランスが取れるだろう。あらためて顕仁は自分の冷静さを問う。ここは冷静に、冷徹に、冷酷に動かねばならない。あたかも炎と氷のペアのように。
「我らは前座よ。
 後に続く、可能性の塊のインテグラルナイト達が、ちょうど仕留めるのにいい大きさに小分けする……な」
泰輔から視線を引き剥がし、まっすぐにモニターを見つめ、コンソールを叩く。
 遺跡に向かってくるイレイザーの群れの向こうに、ビショップ一体の姿が見える。パンデリジェーロはフルスロットルで一気に加速し、相手が動きを捕捉し切れぬうちにイレイザーの群れにウィッチクラフトライフルを打ち込む。被弾したあたりの群れが即座に反応し、10数体が群れを成してこちらに向かって突っ込んでくる。元の群れから十分切り離したところで、顕仁がワープ移動で一気に大きく離れた位置に機を移動する。目標を突然失ったイレイザーたちが戸惑う隙に、僚機からの一斉砲撃が放たれる。
「さてと、またケーキを切り分けに行くかいな。近接戦闘になったらソウルブレードで、叩っ斬たるでぇ!」

 普段アワビ養殖に使用している生体要塞ル・リエーで、マネキ・ング(まねき・んぐ)は迫りくるイレイザーの群れを見つめ、腕組みしているた。セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)が声をかける。
「なんだ、今度はどうしたんだ?」
マネキがキッと振り返る。
「スポーンのご家庭に我がアワビをご提供する事業は順調だが、どうやら我の邪魔をする者どもがいるようだ……」
「へ……? いやあれはこの遺跡を狙ってるわけだろ……」
マネキは聞いちゃいない。
「だが、愚かなるものどもよ。フフフ……水中で、我が生体要塞ル・リエーに挑もうなど片腹痛い。
 この要塞の真の実力を教えてくれよう!!
 見よ!スポーンたちの様子を!
 彼らは、我が提供したアワビをイレイザー共に盗られまいという思いから恐怖心に耐え震えているのだ……。
 そう……今の状況と彼らの心を救えるのは……」
そこでぐるりと振り返ると、メイン制御核でもあり、常に過度の眠気に襲われ続けており会話や行動すらままならないことが多い粘土板原本 ルルイエ異本(ねんどばんげんぼん・るるいえいほん)をビシッ!という感じで指差した。ルルイエ異本ことルイエは、この要塞の生体部分に関わる武装などを担当している。
「このアワビの神に抱かれしこの生体要塞のみッ!!」
「いやアワビどうこうじゃなくて、ただ攻撃におびえてるスポーン『も』いるってことじゃないのか……」
セリスの突っ込みはことごとくスルーして、マネキはひたすら暴走する。。
「さあ、今こそこの要塞の真の姿を顕すのだっ!!」
ルイエが指示に従い、眠そうに呟き始める。
「ん……養殖場……一時停止……全施設……養殖場職員は……全て戦闘態勢に……。
 生体砲……触手……全武装解放……。
 アワビもスポーンも……守る……」
セリフ自体はものものしいが、平たく言えば、養殖場に使っているエネルギーの大半をアワビの生存ぎりぎりまで落とし、他を全て戦闘用エネルギーに回すのと、普段全く使用していない武器類を稼動させるということなのだが。ル・リエーはゆっくりと浮かび上がり、スポーンの町を背にする形で旋回した。
「まぁ……マネキが言う、敵がアワビ盗るかどうかは置いといて……だ。
 遺跡やスポーンの街がある以上破壊させるわけにはいかないしな」
セリスが呟いた。ジャマー・カウンター・バリアをウインドシールドと連動し強化させて、敵からの攻撃に備える。手始めにパンデリジェーロが分断したイレイザーの群れをツァールの長き触腕でなぎ払い、要塞砲を打ち込んで四散させる。
「各種砲門を開け! いざというときは必殺のオリュンポスキャノンを発射するのだ!
 アワビを盗み取ろうなどと企む野蛮なるインテグラルやイレイザーどもを根絶やしにするのだよ!!
 いざ、ゆけ、ル・リエー。フフフ、ハハハハハハッ」
「マネキよ……なんかの悪役の親玉みたいに見えるけどなそれ……。
 それよりルイエがこの騒ぎが一段落するまで起きててくれれば良いんだが」
セリスがボソっと呟く。
 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)の姉、シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)は、キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)のインテグラルナイトの側で、生身でイレイザーと戦うというサポート(?)についていた。シルフィスティは相変わらずで、
「イコンは全て滅ぶべし、例え相手が大型でもその力を借りることなど金輪際あり得ない!」
と生身でのイレイザー戦を選んだのである。ほうっておけば暴走しかねない姉を懸念してリカインもまた付き合うハメとなっている。
(まぁ1対1の状況を守れば。いまさらイレイザーに遅れをとることはないと思うけど。
 相手は数が多いみたいだし、なにより味方からの強力な攻撃に巻き込まれるのが一番危ないという皮肉な立場。
 わざわざ生身でケンカ売るお馬鹿がいるなんて考えないだろうしね……。
 この際自分の 安全優先、フィス姉さんが撃ち落されても自業自得と割り切って回収だけすることにして、後方サポートに徹しよう)
そんなことを考えながら、キロスに話しかけてみる。
「兄は叩き伏せてでも超えるもの、っていうのは分からないでもないんだけど……。
 キロス君の場合はもう少し大事なところが抜けてるような気がするよ。
 キロス君はヘクトル君にはなれないけど、なる必要もないでしょ。
 逆にキロス君だからこそ出来ることもあるし、あったんじゃないかな?
 いつまでもそんな調子で香菜君のこと巻き込んでたら本当に愛想尽かされるよ?」
「うっせえ。余計なお世話だ」
ムっとしたようなキロスの返事は、ワンテンポ遅れて返ってきた。図星の部分もあったからこその反応であろう。
「相変わらず素直じゃないなぁ」
いっぽうのシルフィスティは超人的肉体で己の全てのパラメータを強化していた。イレイザーの攻撃に当たれば戦闘不能になることは理解しているため、アクセルギアとポイントシフトで高速移動による回避行動で敵の攻撃を避けまくりながらの迎撃をを行う。
「イコンと違って頭を飛ばせば止まるはずッ!」
シルフィスティのサポートのため、リカインが咆哮する。無属性の魔法ダメージが姉の対峙するイレイザーの動きを鈍らせ、シルフィスティの22式レーザーブレードが疾風突きで敵の頚部に猛撃を加えると、致命傷を負ったイレイザーは湖の底へとゆっくり沈んでいった。
「ねえねえ、ところでキロス君姉妹はいないの?」
たたみかけるリカインに、キロスはうんざりしたような声を上げた。
「……うるせえ兄貴一人で十分だよ、ったく」
そこにシルフィスティが口を挟む。
「そうそう、最悪キロスが暴走したらこっちも覚醒してほじくりだしてあげるつもり。
 ……ちょっと手元が狂うかもしれないけど!」
その言葉に、リカインはいやな予感を持った。
「ビショップが動いたッ!」
そこに比較的近くでイレイザーを迎撃していた伊勢から通信が入った。あたりにさっと緊張が走る。あまり前に出ることはないのだが、顕仁が珍しく音頭をとった。
「まず我らが囮になる、あとは機を掴んで一斉射撃を行え」
パンデリジェーロが高速でからかうようにビショップの前を駆け抜け、ソウルブレードでその胴体を掠める。そちらを向き直ったビショップの腰めがけて、キロスのインテグラルナイトが膂力に任せて斧を叩きつける。痛撃というほどではないが、それなりにダメージはある。のそりとそちらに体を向けたところにはもうキロスのナイトの姿はない。そこにH艦隊の主砲射撃がいっせいに火を噴いた。同時にル・リエーのオリュンパスキャノンも発射される。マネキが叫ぶ。
「アワビをを盗もうなどと考えた罪は重いのだッ!!!」
「あはははははッ! 今よッ! 覚醒ッ!」
シルフィスティがすでに破壊しか頭にない目つきでビショップへ突っ込もうとしたところに、リカインの滅技・龍気砲が彼女を巻き込んでビショップめがけて発射される。
「まあ、覚醒状態だし、そうダメージもないでしょ……」
シルフィスティが石のように落下するのを、慣れた手つきでキャッチするリカイン。複合攻撃よる凄まじい砲撃で、ビショップはそのまま溶け崩れるように霧散した。