リアクション
宵闇 .宵闇。 太陽が姿を隠し、闇が世界を覆う。夜に包まれたその瞬間、反撃は始まった。 ハイナは催眠のショックからいまだ立ち直ってなかったが、グレースは結界装置のおかげで、何とか立ち直りを見せていた。 グレースは作り笑いを浮かべながらも、ダニエルにもう一度会えてよかったと呟いた。 最後にもう一度会えてよかった。そんな呟きをグレースは漏らしたのであった。 そしてグレースはリボルバーに弾を込め、二本の小剣を腰に挿すと再び戦場に出ようとする。 だが、周りの米兵や契約者たちがグレースを止める。その状態で戦うのは無茶だ、と。 しかしグレースはこんな言葉を言い残して、制止を振り切って再び戦いに行った。 「私が私であるうちに、少しでもダエーヴァの数を減らさなければ……」 その言葉にどんな意味があるのか、グレースとグレースの強さに憧れを抱いているカルは、その言葉の意味がとても気になるのであった。 そして、ゆかりやジェイコブの部隊が基地の内部からダエーヴァをたたき出したころ、他の部隊も次々とダエーヴァの撃退に成功していた。 さらに、NavySEALsのTEAM‐9の名前を借りたローザマリアの【Night‐9】が迂回して包囲をするモッティ戦術の詰めの段階に入っていた。 ダエーヴァの後背に回り込んだヘリは、特殊部隊の隊員たちを次々とおろし、ローザマリアのパートナーの菊やエシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)。そして、フィーグムンド・フォルネウス(ふぃーぐむんど・ふぉるねうす)を降下させる。 音が発生するものには布を挟ませるなどして音を消し、銃には消音装置を取り付け、ローザマリアたちは、迅速に、隠密に行動開始した。 ノクトビジョンを起動し、光学迷彩とベルフラマントで姿と気配を消し去ると、姿なき狙撃手としてダエーヴァ達に次々と攻撃を叩き込む。 セオリー通り、攻撃を行ったら素早く移動を行い、自分の位置を悟らせないようにしながらローザマリアたちは狙撃を繰り返す。 偵察としてピーピング・ビーを先行させ、状況を探りながら菊は慎重に行動する。 最後尾の部隊に優先的に攻撃を叩き込み、混乱を誘発させる。 エシクは【Seal’s】の射撃による弾幕の援護を受けつつホエールアヴァターラ・バズーカで砲撃をしたり、菊の対イコン用爆弾弓発射に合わせて敵集団の背後から機晶爆弾を投擲し混乱に乗じ更に掻き回すなど、とにかく的に混乱をもたらし、包囲されていると思わせるように動いた。 フィーグムンドは特殊舟艇作戦群【Seal’s】とともに弾幕を形成しつつ、次第に包囲網を狭めていく。 そして、基地の方面ではキャロラインが反撃の号令を発していた。 「背後からの攻撃でダエーヴァは混乱しているわ。今こそ一気に打って出るべきです!」 その言葉を聞いた副大統領のベイカーは、大統領であるアイザック・ウィルソンに通信を入れる。 「大統領閣下、今こそ反撃の時です。さぁ、号令を!」 それを聞いて大統領は大いに頷いた。 「諸君、基地のダエーヴァはすべて追い出し、ひそかに戦場を迂回していた味方の背後からの攻撃によって敵は浮き足立っている。そしてまた、我らの友人はイリノイ州の基地を奪還し、ダエーヴァの巨人、ヒューベリオンを撃退した。時がきた。反撃の時だ。愛すべき国民諸君、誇るべき合衆国の軍人諸君、カウンターアタックを始める。我に続け!!」 その言葉とともに米兵たちが一斉に叫び声をあげる。 『大統領閣下に、続けー!!』 そして、一斉に反撃が始まった。 もちろん、契約者たちも大統領を守りつつ反転攻勢を始める。 「これがあるから、我らが大統領だ!」 シャウラは大統領の演説にテンションを最高潮にあげながら【二連磁軌砲】を撃ち始める。 「地球は俺達が守る! 俺達がオマエラを駆逐する!!」 通信回線がオープンなのにも気づかずシャウラは絶叫する。 その言葉は通信回線に乗って全軍に伝わる。 「これぞ、指導者の資質ネ!」 ロレンツォは通信回線をつながないで、操縦席の中にいるアリアンナにこっそりと漏らすのであった。 「よし! あの巨人と一緒に戦うぞ。あれは敵の巨人とは違う。あれは良い巨人だ。我々に勝利をもたらすためにやってきた、偉大なる巨人だ。兵隊ども、大統領に続け!」 「サー、イエッサー!」 士官と下士官と兵士達に最も敬愛されるべきおやっさん。大半の新兵が彼にしごかれ、その生徒の中には今の大統領もいる。そんな愛すべき教育士官。鬼軍曹が兵士達を煽る。 そして、米軍と契約者の一斉攻撃が、次第にダエーヴァを駆逐してゆく。 「我々も基地の外に出る。負傷者を収容するぞ!」 ゆかりは周囲の兵士たちそんな号令をかけて、基地の外に出て行く。 そして、戦いで怪我をした兵士たちを収容し、治療を施していく。 「……何とか基地を失うのは避けられたのね」 「そうですね。実にめでたいことです」 ゆかりの呟きに、ジェイコブが反応する。 「さて、もう少しだけ暴れましょうか……」 アルコリアはパートナーたちに声をかけると、再びギガースと戦うために戦場に向かっていった。 「よし、モッティ戦術は成功のようね」 ローザマリアは安堵のため息とともにそんな言葉を漏らす。 「大尉、御苦労さまでした。撃退が成功したのも、大尉のおかげです」 「もったいないお言葉です。ジェファーソン閣下」 マサチューセッツのトーマス・ジェファーソンからの通信に、ローザマリアは苦労が報われた思いがした。 「2人とも、何とか立ち直ったな。エクス、ディミーア、セラフ……反撃だ!」 凶司は立ち直ったネフィリム三姉妹とともにダエーヴァに対する反撃に打って出た。そして、三姉妹のファンクラブがそれに続く。 「ベアトリーチェ、もう一回行こうか?」 今度は巨大化できないものの、美羽はその練度と火力を利用して残りのダエーヴァを撃退するために再び基地の外へと出た。 「あれ〜 連隊どこ〜?」 真矢は、相変わらずさまよっていた。 一輝は、パートナーたちとともに基地の周囲の見回りをしていた。 「それにしても、イリノイ州の基地に人間はおろかダエーヴァの幹部もいないなんて……一体どういうことなんだ」 ひょっとしたらダエーヴァと契約する人間というのは、非常に特異な存在なのかもしれない。一輝はそんなことを考えつつ残敵の掃討をしながら見回りを続ける。 「おい、アルフ! 女の子捕まえたんだったら、僕にも紹介しろよ!」 エールヴァントは基地の外に出て残敵を掃討しながら、パートナーのアルフに声をかける。そして、そのうちにな! という返事をもらいながら、フレンドリーファイアに気をつけろよ? とアルフに警告をする。 「……さて、今回は、コープスが無限に沸いてくるのは防げたな。ま、結果オーライか」 昌毅はそんなことを呟きながら生き残ってるギガースに対して荷電粒子砲を撃ち込む。 「ほう? 次元振動爆弾? それがアメリカの新兵器か。なに! 大半はダエーヴァに奪われただと!?」 ハデスは軍事機密にあたるはずのそんな情報を、いかなる手段によってか入手して、これからどうするべきか。ということに考えを巡らせた。 「ダエーヴァの解析、できなくなってしまったわね……まあ、残骸を解剖でもしてみましょうか」 そして、同じように今後のことについて頭を悩ませるのがイーリャだった。 |
||