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【蒼空に架ける橋】第2話の裏 幕開けのエクソダス

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【蒼空に架ける橋】第2話の裏 幕開けのエクソダス

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「さて……一体なんでこんな状況になってんだろうな、俺ら?」
「さてね……ワタシにも正直わからないわよ」
 屯所、に通じる道のど真ん中。垂とコルセアはその場に座り両手を上げていた(垂は右手のみだが)。
 そして彼女達の周りには傭兵達が囲っている。皆、銃口と殺気を向けて。

     * * *

――話は少し前に遡る。
「……誰もいねぇな」
 屯所に侵入した垂が辺りを見回す。どうやら傭兵達は他の場所へ出払ってしまっているようだ。
「よっこいしょっと」と肩に担いできた食材入り段ボールを下ろし、屯所内を警戒しつつ探す。
「……ちっ、こっちにも無いか」
 垂が舌打ちする。目当てであった自分達の武装が見つからないのである。
 尤も武装はナオシ達に奪われ、その直後船が爆散した為ここにあるはずがないのである。何処に行ったのかは御察し下さい。
「ん? お、いいねぇこっちはあるじゃねぇか」
 だがその直後、もう一つの目当ての物を見つけて嬉しそうに垂は笑みを浮かべる。ここは生活の場でもあるようで、食事の際の調理場も備えてあった。
「んー、こんだけあれば上等か」
 そう言って調理場を漁り、器具を取り出していく。
「何をしているでありますか?」
 その様子を不思議そうに段ボールの隙間から眺めていた吹雪が問いかける。吹雪とコルセアも、屯所へと垂と一緒に来ていたのであった。
「キッチンでやる事って言ったら料理以外ないだろ」
 器具を揃え、食材を採り出しながら垂が答える。
「料理? こんな状況で?」
 呆れた様なコルセアの言葉に垂は頷く。
「俺の料理であの傭兵共を味方につけられないかと思ってな。元々俺達は誤認逮捕だ。胃袋握っちまえば話を聞いてくれるかもしれないだろ?」
 そう答える垂に、コルセアは一言「はあ」とだけ返す。
 ちなみに垂の料理は見た目はともかく味が最悪である。もし傭兵に食べさせることが出来たら握るのは胃袋ではなく命になるかもしれない。
「申し訳ない、火を貸してほしいであります」
 割り込むように吹雪が段ボールを剥いで言った。
「ん、適当にそこいらのもん使えよ」
「感謝するであります。いくでありますよコルセア」
 何やら漁ったかと思うと、吹雪はコルセアを伴って何処かへと行った。
「さーってと、そんじゃ……ん?」
 垂が食材を並べ、いざ調理を始めようとした時であった。鼻腔で感じた物は焦げる臭い。まだ火を使ってもいないのに。
 異常を感じ、臭いを頼りに垂は足を進める。そこで目にした。
「んなッ!?」
屯所の一部が、燃えている光景を。
「ど、どうした!? 焼き討ちか!?」
 少し離れて炎を見ていたコルセアに垂が聞くが、彼女は「あーその、なんというか……」とちらりと視線を横に向ける。
「もっと燃えるがいいであります」
 視線の先には、炎に燃料をぶっかけ更に煽る吹雪が居た。
「なぁにやってんだお前は!?」
 首根っこを捕まえ、垂が問い質すと「破壊工作であります」と吹雪が答える。
「こうして破壊工作を行っておけばあの傭兵共は脱出の阻止に集中できないであります。だから燃やしているであります」
 吹雪の言う通り、施設に火を放てばまずそちらの鎮火を先決する。尤もな意見である。
「場所を考えろ場所を!」
 そして垂の方も尤もな意見である。人(仲間)がいる場で放火をしてはいけません。
 そんな事をしていると、辺りが何やら騒がしくなってきた。
 そっと垂が外を眺めると、

「お、おい! 屯所が燃えてるぞ!」
「早く鎮火おおおおおお!?」
「な、なんでこんなところに落とし穴があああああ!?」
「気を付けて! なんか罠が仕掛けてあるわよ!?」


「あれもお前らか」
「コルセアと二人でやったであります」
 ドヤ顔でサムズアップする吹雪。
「ワタシは吹雪を手伝っただけ」
 コルセアは知らぬ顔で眼を逸らしていた。
 そんな事をしている間に燃料を注がれた炎の手は凄まじい勢いで広がっていった。放っておけばすぐにでも今いるこの場は炎に包まれることだろう。
「って呑気にンな事言ってる場合じゃねぇぞ! とっとと出るぞ!」
 窓をぶち破り、垂と吹雪、コルセアが外へ飛び出す。
 そして外には、

「ねえ今誰か出てきたわよ!」
「アイツら誰だ!?」
「脱走者よ! 捕まえて!」

吹雪たちが仕掛けた罠を抜けた傭兵達が、囲っていた。

     * * *

 そして現在へと至る。状況的に逆らう事は自殺行為と判断し、垂とコルセアは降伏したのである。
 吹雪はどうしたのかというと、
「お前の相棒凄いな」
「ワタシも正直ついて行けない時の方が多いわ」
 垂とコルセアがちらりと横に視線を向ける。そこにはミンチより酷い有様の吹雪が段ボールで簀巻きにされた状態になっていた。
 一体何をしたのかと言うと、思いっきり反抗したのである。具体的には垂達を取り囲んでいる間に段ボールでカモフラージュしながら後ろから忍び寄ってバールのような物で一撃かまし、気絶した傭兵を盾にしたりと。
「ナオシさんが『ミツ・ハなんか怖くねえ、思い知らせてやれ』って言ってったであります!」
 仲間を盾にされ、攻撃に躊躇している傭兵達をこんな風に煽ると同時にナオシの心証を悪くするという見事な合わせ技まで見せていた、のであるが、
「ふふ、どうだ怖いでありますかあああああああああ!?」
後ずさった際、見事に自分で仕掛けた罠に引っかかっていた。どうやらブービートラップにしっかりと吹雪という間抜けが引っかかったようである。
 で、散々煽った上仲間を盾にされ激おこな傭兵達に吹雪はフルボッコにされたのである。
 虫の息になりつつ、吹雪が呟いた。
「……どれもこれも全部ナオシさんのせいであります」
「「いやお前が悪い」」

 全く以てその通りである。