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【蒼空に架ける橋】最終話 蒼空に架ける橋

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【蒼空に架ける橋】最終話 蒼空に架ける橋

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「……まさか本当にばれないとか」
 呆れた様にオミ・ナが呟く。
「それだけ中は混乱してるってことだ」
 ナオシが言う。今彼らは肆ノ島太守の館を歩いていた。

 言葉通り、ナオシ達は堂々と正面から入った。普段ならば無礼な侵入者、と咎められるところであろうが、現在はオオワタツミの出現によりそれどころではない状況である。
 自分の事で手いっぱいの館の者達は、侵入したナオシ達が目に入らなかった。いや、入っていたのであるが目の前の大事が大事過ぎる為認識できなかったのである。

「……しかし、流石太守の館というべきか。広くて何が何だかわかりゃしないな」
 モリ・ヤが辺りを見回す。
「奴の部屋でもわかりゃいいんだがな」
 ナオシがそう言って角を曲がった、時であった。
 ばったりと、何者かと鉢合わせる。

「――誰だ!?」
「ちぃッ! 見つかったか!」

 鉢合わせたのは3人。先頭に居た者が咄嗟に所持している槍を構える。それに合わせ、ナオシ達も身構える。

「……ん?」

 だが、戦闘の槍を構えた――セルマ・アリス(せるま・ありす)はナオシ達をまじまじと見ると、見知った顔がある為槍を下ろした。
「私達以外にも動いているのがいるみたいね」
「どうやら、そのようですね」
 中国古典 『老子道徳経』(ちゅうごくこてん・ろうしどうとくきょう)リンゼイ・アリス(りんぜい・ありす)も警戒を解く。
「……アンタ達も地上人か。クク・ノ・チを探しているのか?」
 容姿を見て警戒を解いたナオシが問う。
 一瞬『この人、誰だろう?』と返事が遅れるが、コントラクター達と一緒にいる事から仲間であると判断したセルマが首を横に振ってから口を開く。
「いや、俺達はツ・バキさん……ああ、仮面をつけた女の人を探してる」
「ツ・バキの姐さんを? 一体どういうことだい?」
 オミ・ナが割って入ろうとした時、何者かの喋り声が近づいてきた。恐らく館の人間だろう。
「っと、ここじゃまずい。何処か手近な部屋で話そう」
 流石に緊急事態とはいえ、大人数で固まっている所を見られると拙いと判断し、オミ・ナは手近な扉を開け、中に入り込む。

「……わかった。キーの件はこちらで何とかしよう」
 部屋の中では何者かが、誰かと会話しているようであった。
 そして、その近くにいた2人の少女が扉が開かれるのに気付き、振り返る。

「だ、誰ですか!?」
「て、鉄心! 誰か来ましたわ!」

 入ってきたナオシ達を見て、ティー・ティー(てぃー・てぃー)イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が慌てて源 鉄心(みなもと・てっしん)に駆け寄る。
「……落ちつけ、仲間だ」
 視線を向けた鉄心が宥める様に言うと、ティーとイコナは恐る恐るナオシ達を見て、共にコントラクターが居る事がわかると安堵の息を漏らす。
「観光目的、ってわけじゃなさそうだな。お互い情報交換といかないか?」
 鉄心の言葉に、ナオシ達は頷いた。

 まずは各々の状況から語られた。
 ナオシ達が自身の事を語ると、次はセルマは他の仲間と共にツ・バキと交戦したことを語りだす。
 ハヤ・ヒから彼女の事を聞いていたセルマ達は、何とか無事に連れ戻したいと無力化まで追い込むことに成功する。
 しかし直後、何者かにツ・バキは連れ去らわれてしまう。
 ツ・バキが既に死体で操られている可能性もあるが、そうでない可能性を捨てきれないセルマは何とかしたいと探しているのであった。
「それにしても、よく倒せたもんだよ」
 感心したようにオミ・ナが言うが、セルマは苦笑する。
「俺がやったわけじゃないけどね」
 よく見ると、セルマの身には細かい刀傷が所々ついている。
「今回もやりあう事になると思うけど、可能性があるならそれに賭けたいんだ」
「……やりあった事ある人に言う言葉じゃないけど、簡単にゃいかないよ?」
「無論、承知しています」
 オミ・ナの言葉に代わりに答えたのはリンゼイであった。
「全力を尽くさせて頂きます。捕らえるにしても手を抜いてどうにかなる相手ではありません」
 自身の得物である刀を手に語るその言葉に、オミ・ナは「そうかい」とだけ答えた。

 最後に語ったのは鉄心であった。
 鉄心は高月 玄秀(たかつき・げんしゅう)と共にクク・ノ・チと交戦。撃ち破った――と思われたがその実態は影武者の式神。
 逆にまんまと罠に嵌められ、死霊蠢く結界の中に閉じ込められてしまう。
 何とか結界から抜け出すことに成功し、玄秀はクク・ノ・チを更に追い、鉄心は一先ず退き各所と連絡を取り情報を集めていたのであった。
 その際にナ・ムチから起動キーの事も聞き出したのである。
「事態は想像以上に大事だ。最悪の事態を避けるためにも、制御権を奪われるわけにはいかない。俺もこれからクク・ノ・チを探そうと思う」
「そうか……ところで聞きたいんだが、アンタらはクク・ノ・チの部屋に入ったんだよな? そこで変な物は無かったか?」
 モリ・ヤの問いに「変な物、ですか?」とティーとイコナが首を傾げる。
「……いや、特に覚えは無いな」
「私の方も、おかしなものは無かったかと……」
 少し考えてから、鉄心とティーが首を横に振る。
「わたくしもあのお部屋を探しましたわ。けれどクローゼットのついた扉のような棚はありませんでしたわ。あった棚も普通で、髑髏が飾ってあったり――なんてことは一切ありませんでしたわよ?」
 イコナの言葉に「そうか……」とモリ・ヤが呟く。
「となると、やはり依代は他の部屋になるのか?」
 モリ・ヤがそう言うと、即座に「いや」とナオシが否定する。
「あの野郎の性格から考えて手近に置いておきたいはずだ。恐らく隠し部屋か何かがある。悪いがそっちを当たってみてくれ」
「そうですね……他に当てもありませんし、まずは徹底的に探しましょう」
 ウヅ・キの言葉にモリ・ヤが頷く。

――語り終えると、各々の方針を決め、どのように動くかを再確認する。
 それを終えると鉄心は【テレパシー】で連絡を取る。恐らく相手は玄秀だろう。
 二言三言話すと、鉄心が表情を強張らせる。
「――わかった。すぐに向かう」
 そう言うと、鉄心は小さく溜息を吐いた。
「どうした?」
 ナオシに問われ、鉄心は一瞬だけ間を置いてから口を開いた。
「……どうやら、クク・ノ・チを発見したようだ」