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【蒼空に架ける橋】最終話 蒼空に架ける橋

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【蒼空に架ける橋】最終話 蒼空に架ける橋

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■第42章


「――貴様もしつこい奴だ。そのしぶとさ、賞賛に値する」
 呆れた様な、感心したような溜息を吐き、クク・ノ・チは玄秀を見る。
 対し、玄秀は敵意、殺意を剥き出しにクク・ノ・チを睨み付ける。
「勇ましいな。だがどうする? この状況をどう打破する?」
 挑発する様にクク・ノ・チが言い放つ。
 玄秀の目の前には、幾多ものヤタガラスにミサキガラス、そして随神といった式神が並んでいた。

――罠から抜け出し、玄秀はクク・ノ・チを探し回っていた。
 屋敷を探し回り、漸く見つけ、玄秀は襲い掛かる。
「私も暇ではない。これから民を救わねばならないのだからな。さっさと終わらせてやる」
 それに対し、クク・ノ・チは大量の随神に加え、ヤタガラスやミサキガラスを召喚する。その後ろでクク・ノ・チは高みの見物とばかりに玄秀を見ていた。
「……舐めるなぁッ!」
 その態度に激昂し、玄秀が挑むがあっという間に追い詰められてしまう。
 相次ぐ連戦により消耗しきっている事が隠しきれなくなっている。立っている事、いや、意識がある事さえ不思議な程、玄秀は消耗していたのだ。
 その為攻撃手段も限定されてしまい、ヤタガラス達に阻まれてしまう。【悪霊退散】で突破し、近づいても次の一手が出せない内に新たに現れたヤタガラス達により距離を取らざるを得なくなる。
(ティアも限界か……)
 消耗しているのはティアン・メイ(てぃあん・めい)も一緒である。大きく口をあけ呼吸が荒くなっている。また動きも鈍くなり、本来なら問題ない相手にも手間取っている。玄秀が【影に潜むもの】で守らせていなければ危うい場面は何度もあった。
(広目天王の方も動きが無い……しくじったか)
 玄秀は式神 広目天王(しきがみ・こうもくてんおう)に館の破壊工作を命じていた。館の呪術結界を破る為のものだが、そのついでに依代の話を聞きそちらの破壊も命じた。
 だがその結果、やる事が増えたせいで広目天王は作業に手間取り、最中配下に見つかり撤退せざるを得なくなってしまったのである。
「さっさと立ち去れ」
 そう言ってクク・ノ・チが立ち去ろうとする。

「そこまでだ!」
 呼び止める声に、うんざりしたようにクク・ノ・チが振り返る。
 映ったのは鉄心がナオシ達を先導し、駆けつけてくる姿であった。
「やれやれ、また邪魔か」
 クク・ノ・チが大きく溜息を吐いた。
「アンタが、アンタがクク・ノ・チ……」
 クク・ノ・チを目にし、ブツブツと綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)が呟いたかと思うと、突然高らかに笑い出す。彼女の脳内では、何やらまた色々と駆け廻っているようである。
「アンタさえ……アンタさえ倒せば私の運気は戻ってくるのよ! あんたをブッ倒して、私の運気を回復させるんだからっ!!」
 そしてそう叫ぶなり、クク・ノ・チへと一直線に駆け出す。
「さゆみ! 危険ですわよ!」
 慌ててアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)が後を追う。
 クク・ノ・チの周囲のヤタガラスが、さゆみとアデリーヌの行く手を阻む。だがおかまいなしとばかりにさゆみは足を止める気は無い。
「仕方ありませんわね……」
 避ける気もないさゆみに、アデリーヌがヤタガラスを排除する為【光術】を放つ。だが、
「それしきの光で、我がヤタガラスを排除できるとでも思っているのか?」
【光術】程度の光では、ヤタガラスを一瞬怯ませる程度しか効果は無い。あっという間にさゆみとアデリーヌは捕まり、暗黒に浸食され崩れ落ち、そのまま気を失った。
「ヤタガラスやらミサキガラスやら、うじゃうじゃいやがるな……」
 メルキアデス・ベルティ(めるきあです・べるてぃ)が呟く。
「これじゃクク・ノ・チとか言う奴と戦う以前の問題だ……だが!」
 メルキアデスが一歩前に出る。
「俺様は強い!」
 そしてメルキアデスが叫んだ。
「俺様強い強い強い強いつよぉぉぉぉぉい! そう……俺様は……シャンバラ教導団がイケてるダンディズム! メルキアデス・ベルティ様だぜぇ!」
 叫びながらメルキアデスが駆けだした。自身が強いと思い込むことにより強化する【ヒロイックアサルト】により、脚力が強化されたのか素早い動きになっている。
 そのままメルキアデスはヤタガラスの中に突っ込む、
「俺を倒したかったらついてこいやぁぁぁぁ!」
わけではなく、横をスルーして走り抜けた。その後を釣られたように、ヤタガラス達が追いかける。
「ってなわけでフレイアちゃんとマルティナちゃん! それに他の皆! 後は任せたぁぁぁぁぁ!」
 サムズアップしながら叫び、メルキアデスはヤタガラスを連れて走りさってしまった。
「……あの馬鹿、何考えてるのかしら」
 痛む頭を押さえる様にフレイア・ヴァナディーズ(ふれいあ・ぶぁなでぃーず)がこめかみに手を当てる。
「ま、まぁ……隊長のことですから、ああやって戦力を削ったのかも……」
 フォローする様にマルティナ・エイスハンマー(まるてぃな・えいすはんまー)が言うが、
「そんなこと考えてると思う?」
「いえ、思えません」
フレイアの言葉に即答していた。フォローになってねぇ。
「……よし今だ。我々も動くぞ」
 仲達が指示を出すと頷いたアルツールが【不滅兵団】を呼び出す。
「さぁ行きますよお二方! 準備はよろしいですか!?」
「大丈夫だ、問題ない!」
 シグルズが先頭に立ち、【不滅兵団】がヤタガラス達の群れへと飛び込んでいく。
「こうしてはいられないであります! 我々も動くでありますよ!」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が駆けだす。背中にダンボールを背負って。
「いやなんなのよ、さっきから気になってたけどそのダンボールは」
 コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が冷静に突っ込む。屋敷突入以前から背中に括りつけていたらしい。
「ただのダンボールではないであります。これぞ【歴戦のダンボール】でありますよ! ふっふっふ、力が滾るであります!」
 ドヤ顔を決める吹雪に対し、「あーはいはい」とコルセアはバズーカなどの武器を担ぎ、ついて行った。
「……ところで、何故我の身体にはこんな物が括りつけられているのだ?」
 イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)が自身に括りつけられた爆薬に首を傾げつつついて行く。
「面倒だ、すぐ終わらせろ」
 クク・ノ・チの言葉と同時に、戦いが始まった。