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【蒼空に架ける橋】最終話 蒼空に架ける橋

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【蒼空に架ける橋】最終話 蒼空に架ける橋

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「大丈夫か?」
 戦闘が始まり、ティアンに無理矢理後退させられた玄秀に鉄心が駆け寄る。
 ティーやイコナが、ボロボロの玄秀とティアンに「無理をしない方が……」と言うが「問題ない」と玄秀は無理矢理立ち上がろうとする。
「――奴はその……本物なのか?」
 鉄心が問う。先ほど戦った際、クク・ノ・チは影武者であった。
 それに対し玄秀は頷いて肯定する。
「本物だと思う。こんな物持ってたしな」
 そう言って玄秀は鉄心に何かを手渡す。それは細長い金属の棒であった。
「それは?」
「恐らく、さっき聞いた起動キーとやらだと思う。それをナ・ムチへ持って行ってやってくれ。僕はまだ勝負がついていない」
 そう言う玄秀に鉄心は何か言おうとするが、少し間を開けて「解った」とだけ頷いた。
「ああ、後ナ・ムチへ伝言も頼む……大切なものは自分の力で守れ。僕の様には……なるなよ……」
「……シュウ?」
 ティアンの中に疑念が生じる。先程から見ている玄秀の戦い方に加えて伝言と普段の彼とは何か違うように感じる。
 だがそれが何か解らず、それ以上言葉が出て来ない。
――爆発が起こる。誰かが爆弾でも使ったのだろうか。
「今がチャンスだ。行ってくれ」
「――わかった。行こう、2人とも」
 何か言いたげなティーとイコナであったが、鉄心に促され走り出した。

(――あの男)
 乱戦の最中、クク・ノ・チの目に走り去る鉄心達の背中が見えた。
(逃げた? いや、そう簡単に退くような奴ではない。となると、何か理由があるはず)
 クク・ノ・チは考える。鉄心が退いた理由を。
(……他にも何やら動いている奴らが居るみたいだ。となると、カガミ、か? しかし私が動くわけにもいかぬ)
 少し考える素振りを見せ、クク・ノ・チは近くにいる随神の方を向く。
 主の命を受けた随神数体は、そのまま戦闘を離脱し去っていく。
「クク・ノ・チぃッ!」
 ヤタガラスの隙間を縫い、玄秀が飛び出してくる。他に気を取られていたクク・ノ・チの反応は遅れる。
 逃がすまい、と玄秀は【十二天護法剣】を突き立てる。が、
「無駄だ、貴様の攻撃は私に届かぬよ」
結界が不可視の壁となり、剣はクク・ノ・チの身体の手前で止まる。
「成程結界か……ならこちらも使わせてもらおう」
 玄秀はニヤリと笑みを浮かべ、印を結びながら刀身の術式をなぞる。すると光球が発生し、クク・ノ・チの周囲を玄秀ごと囲う。

――その光景を、ティアンは離れた所から見ていた。そして、何をしようとしているのかを理解してしまった。
「まさか……シュウ! だめ! そんな事をしては!」
 慌てて駆け寄ろうとするが、消耗した身体は言う事を聞かず、思うように進まない。

 玄秀は【無名神の呪符】を取出し、クク・ノ・チに見せつける。
「これが最後の1枚だ……」
 玄秀が呪符を発動させる。呪符は弾け、封じていた魔力が玄秀に流れ込む。
「嫌とは言わせない……このまま付き合ってもらおうか、地獄ヘな!」
 そして、【爆炎掌】を発動させる。
 直後、爆炎が玄秀とクク・ノ・チを包んだ。思わずその場に居る者達が振り返ってしまう程の爆発。
 立ち上る煙が晴れ、そこに居たのは――
「……ふん」
傷一つついていない、クク・ノ・チの姿であった。玄秀の姿はそこには無い。爆発の際に何処かへ吹き飛ばされてしまったのだろうか。
「シュ……ウ……」
 だがその光景はティアンの精神に大きなダメージを与えた。放心したように、その場にティアンはへたり込む。
 そしてそのまま身体も限界を迎えたのか、その場に倒れ気を失ってしまった。
「全く、犬死だな」
 つまらなそうにクク・ノ・チが呟く。

 しかし彼は気づいていなかった。
 自身の身を守る結界に、亀裂が入っている事に。