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古代魔法書逃亡劇

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古代魔法書逃亡劇

リアクション

 一方、地上。
 空京の荒野の中に、空を見上げ走る集団があった。先頭を行くのはヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)クリスティ・エンマリッジ(くりすてぃ・えんまりっじ)の乗るバイクだ。
「急ぐのよ、クリスティちゃん♪」
「は、はいっ!」
 クリスティ・エンマリッジは進行方向だけ見てバイクを走らせる。
「もっと右よ」
「はい!」
 指示をしながらヴェルチェ・クライウォルフは紙ドラゴンの行き先を見極める。
「そろそろいいかしらね。クリスティちゃん、立つのよ♪」
「え?」
「いいから立って♪」
「ヴェルチェ様がそうおっしゃるのなら……わかりました、やってみますわ」
 アクセルを踏み込んだままゆっくり立つクリスティ・エンマリッジ。ヴェルチェ・クライウォルフはその肩を押し跳躍。リターニングダガーを続けざまに放つと紙ドラゴンの無防備な腹に刺さる。それを確認してバイクの上に着地。
「ぶつかりますわー!」
 バイクは人を掠めて過ぎ去った。
「危ねぇな! 気をつけろよ?」
轢かれそうになったラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)が過ぎてゆくバイクに向けて叫んだ。と、共に歩いていたオウガ・クローディス(おうが・くろーでぃす)が一点を指差す。
「主、あの影は……」
「お、あいつがそうかな? うっし! 一丁やってみっかな!!」
 紙ドラゴンを発見したと見るや、ラルク・クローディスは即座に銃を抜き戦闘の構え。紙ドラゴンが一回転した後の隙を狙い立て続けに腹を撃つ。
「は! 空に浮いていようが俺の弾からは逃れられないぜ!」
 立て続けに打ち続ける。彼の傍らではオウガ・クローディスが【ディフェンスシフト】を使用。防御を固め主の戦闘を見守る。二発銃撃をくらったドラゴンは一声鳴き炎球を口から吐き出しこちらに向ける。
「主!」
 未だに発砲を続ける主を突き飛ばし炎球を振り払う。
「主が作戦の肝ですからな。きちんと守らせていただきますよ」
「おう、守りは任せるぜ!」
 応えつつ再び銃の引き金を引いた。
 銃声と共に軍用バイクが二台、飛びだした。
「攻撃しやすい場所にじっくり料理してあげる」
 真紅のライダースーツを着込んだルカルカ・ルー(るかるか・るー)が軍用バイクを操縦し拳を繰り出す。【ドラゴンアーツ】により強化された拳の衝撃は上空を飛ぶ紙ドラゴンへ到達。上空での誘導の手助けをしているのだ。
「……ルカ、そろそろ」
 周囲に木々もなく、見通しのいい場所に出たところで夏侯 淵(かこう・えん)が彼女の背後から囁く。少し先で、橘ニーチェがぶんぶん手を振っているのが見える。
「そうね。じゃあ停めるよっ!」
 即座に急ブレーキ。夏候淵はバイクが完全に止まる前に飛び降り弓を構えた。
「受けよ、夏候淵が弓の一撃を」
 そのまま【ヒロイックアサルト】「疾風」を乗せた矢を放つ。神速の矢は即座にドラゴンの目へ。衝撃波を伴う強い攻撃に紙ドラゴンが雄叫びを上げる。
「これが弓神の力だ」
 にっと笑い、矢を絞る。
「おー、やってるみたいだぜダリル」
「そのようだ。俺達も参戦しなければな」
 もう一台の軍用バイクが傍らに止まった。ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)とサイドカーに乗ったカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)だ。
「カルキノス、俺は向かって左の翼を狙う。合わせてくれ」
「わかったぜ」
 頷いたダリル・ガイザックは呪文を紡ぎ【雷術】を一点に集め放つ。同時にカルキノス・シュトロエンデも凝縮させた【雷術】を放つ。狙い通り左の翼の付け根に雷が届くと爆発に似た音を立てページの結束を弱めた。紙ドラゴンは退避のため翼に空気を溜め始めた。離脱する気だ。
「鼻先だ」
「おう!」
 ダリル・ガイザックの指示で二つの【雷術】がドラゴンの鼻先を掠めた。翼の動きが止まる。その場で暴れる紙ドラゴンが起こす風が地上まで届いた。
「すげぇな、ここまで届くのか」
「感心している場合ではない。次だ」
「少しは休ませてくれよな」
 苦笑しつつも【雷術】を構えるカルキノス・シュトロエンデ。一点集中攻撃がドラゴンに炸裂する。
「……困りました」
 その傍らを歩く影。上空での戦闘、地上からの攻撃を見遣ってルイス・マーティン(るいす・まーてぃん)がため息をついた。空も飛べず遠距離攻撃もできない彼になす術はない。
「どうにか届けば……!」
 とりあえずばたばたとジャンプしてみたりランスを突き出してみたりするが効果はない。
「……サクラ、任せました」
 がっくりと肩を落とし、サクラ・フォースター(さくら・ふぉーすたー)の肩をポンと叩いた。
「そんなに落ち込まないでください。お土産持ってきますからね」
 ふわりと飛びあがり、紙ドラゴンの頭上へ。
「はぁっ!」
 振り下ろすように攻撃。今までの攻撃で剥がれかけていたページが地上に降り注ぐ。地上のルイス・マーティンがページに気づき即座に回収する。
「危ないですよ、下がってください!」
 緋桜遙遠の声に緊急回避。ドラゴンの翼が揺らめき【雷術】と【アシッドミスト】と剣による攻撃が紙ドラゴンに降り注ぐ。それを見届けて一旦地上へ。
「僕もこうしてはいられません。行きますよサクラ!」
「え、どこへ?」
「一瞬ぐらいなら、空だって飛ぶさ」
 紙ドラゴンを睨み【バーストダッシュ】発動。サクラ・フォスターは先回り。紙ドラゴンへと二人で十字攻撃を繰り出した。
「ギャアァアオォアアオア!」
 紙ドラゴンが攻撃を受けて怒り、反撃するその斜め下で橘ニーチェが爆弾を並べていた。
「ディーのお手伝いするです、頑張るですよーぅ」
 円状に並んだ爆弾を見て、ふぅ、と息をつく橘ニーチェ。傍らで橘ヘーゲルが首を傾げた。
「うーん、まだズレてる気がするな」
「そうですか? じゃあじゃあ紙竜、ズレるです!」
 えいっと銃で射撃して紙ドラゴンを爆弾の真上に移動させる。橘ヘーゲルが頷いた。
「いいんじゃないか」
「にしてもカッコいいですね紙竜! あぁー早く降りてほしいですっ!」
「だから落ち着け」
 橘ヘーゲルからのデコピンを再びくらった橘ニーチェは顔をぶんぶん振ると上空に顔を向けた。
「ディー、ルナちゃ、準備おーけぃです!」
 上空からの了承を得て橘ヘーゲルが【火術】で爆弾の導火線に引火させる。
「纏めてどっかーんなのですよ!」
 叫ぶ橘ニーチェの脇を猛スピードで駆け抜ける自転車が一台。
「よっし見えたっ!」
 上空の紙ドラゴンを確認した七枷 陣(ななかせ・じん)が力強く頷いた。前かごに設置されたチャイルドシートに乗るリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)も頷く。
「行くぞリーズ! 気合入れて飛ぶぞ!」
「オッケーだよ陣くん!」
 そのまま目にも留まらぬ速さでペダルを漕ぎ近くの坂を駆け上りそのまま下った勢いで飛びあがる。自転車ごと二人で【バーストダッシュ】を使用した。
「アーイキャーン、フラーイ☆」
 楽しげなリーズ・ディライドの声と共に空高く飛び上がった。