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【十二の星の華】エメネアと五獣の女王器

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【十二の星の華】エメネアと五獣の女王器

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第2章 探せ、女王器

 遺跡に入るのはエメネアと、彼女を護衛することが目的の学生たちだけではない。
 女王器探しをメインの目的とする学生たちも多く、踏み込んでいる。
 未踏の遺跡ということから、女王器の序に手のつけられていない宝もあれば、と願う者もいるのだ。
 遺跡の中を進むと、通路の両側はそこらじゅう扉が並んでいた。それぞれが小さな部屋になっているようだ。
「今、記してしまうから、警戒よろしくね、ブランカ」
 迷い、行き倒れにならないために、五月葉 終夏(さつきば・おりが)はマッピングを欠かさない。
 地図を記すことで生まれる隙は、パートナーであるブランカ・エレミール(ぶらんか・えれみーる)に警戒してもらうことで、埋めている。
 いつも眠そうにしている終夏が珍しくやる気を出しているものだから、着いて来たというブランカは、初めての遺跡探索に緊張しつつも彼女のことを護れるよう辺りを警戒していた。
「扉開けるならオレに任せろ」
 先にマッピングを済ませた瓜生 コウ(うりゅう・こう)が、厚手の手袋を嵌めながら言った。
「お願いするぜ。終夏は下がってて」
 ブランカはその背に終夏を庇うように立つ。コウが手袋を嵌めた手で、扉へと手をかけた。ノブを捻れば鍵などかかっておらず、罠もなく、簡単に開く。
「早速、中を探すぜ!」
 遺跡の天井に当たるほどの長い棒を手に、コウが部屋の中へと入っていく。
「調べまくっちゃうぞ〜、でも罠は危ないから注意して調べよっと!」
「波音ちゃん、気をつけてくださいね」
「ララも波音おねぇちゃんのお手伝いするんだぁ! 頑張るよぉ」
 クラーク 波音(くらーく・はのん)とパートナーのアンナ・アシュボード(あんな・あしゅぼーど)ララ・シュピリ(らら・しゅぴり)も部屋へと入っていった。
 終夏はブランカと共に中に入ると、部屋の大きさを調べて、地図に記していく。
 長い棒を手にしたコウは、その棒で壁や床を突付く。少しでも音の違うところがあれば、隠し通路がある証だ。そういったところを見逃さないために、突付いて回った。
 波音は棚の引き戸をそっと開ける。中には特に何もなく、隅の方に埃がたまっているだけだ。傍らでは、アンナが床や壁を叩いている。コウ同様、怪しい場所がないかを探っているのだ。部屋の隅々まで叩いてみるも、隠されたものは何もない。
「この部屋はこんなものかな?」
 終夏の言葉に、皆部屋を出る。
「他の探索する人が同じ部屋を探索しないように貼るんだよぉ」
 言いつつ、ララが『探索済』と書いたメモを部屋の扉へと貼り付けた。
 大人数が分かれて探索している以上、報告が行き届かないところも出てしまうかもしれない。そのときに、このメモがあれば、他の人が同じところを再度見てしまうというロスも防げるだろう。
 他の部屋でも探索が終わっている様子を見て、ララはメモを貼っていく。
「さて……罠には気をつけねぇと……」
 最下層を目指してラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)は気合を入れる。
 扉に罠がないことを確認してから、ゆっくりと開けると、中から1体のゴブリンが飛び出してきた。相手も部屋の中で息を潜めていたようだ。
 相手からの一撃を交わして、ラルクは通路へと下がり、間合いを取る。
 ゴブリンが再度襲ってこようとするところへ構えたアーミーショットガンから一撃放った。その一撃が当たり、一瞬、怯むものの手にした棍棒を構え直すと襲い掛かってきた。
「おっと!」
 ラルクはギリギリのところで交わす。
「うっし! てめぇを翻弄してやるぜ?」
 ラルクはそう告げると、壁を走り始めた。辺りを走り回るラルクの姿にゴブリンは、目で追うのに必死だ。そこらじゅう駆け回り、ゴブリンが目を回し始めたところで、ラルクは再度、アーミーショットガンでゴブリンを撃ち抜いた。
 その一撃で、ゴブリンは倒れる。
 部屋の中から他のゴブリンが出てくる様子はない。
 ラルクは改めて、その部屋へと入ると、中の探索を始めた。
 特殊なフィルターを貼った布を被り、扉の影などに身を隠しながら国頭 武尊(くにがみ・たける)とパートナーの猫井 又吉(ねこい・またきち)は、更に近付いてくる気配にも気をつけながら通路を進む。
(女王器が1つぐらいパラ実に有っても良いだろ)
 武尊が感じ取った宝の気配は一番奥から二番目の右側の部屋からだ。
 他の学生たちが1つ1つの部屋を調べている間に、真っ直ぐその部屋を目指す。又吉は武尊の後を追いながら、他の学生の気を逸らすため、小銭をばら撒きながら歩いた。
 問題の部屋の前へと辿り着くと、扉には鍵がかかっているようだ。その鍵をピッキングのスキルで開け、ゆっくりと扉を開くと中は武器庫のようであった。
「この中のどれかが女王器だというのか?」
 扉を閉めて、多くの武器の中から1つ手にしてみる。手にしたものは普通の武器と変わりないように思えるが、それらしきものを探して1つ1つ手にしてみることにした。