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【十二の星の華】エメネアと五獣の女王器

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【十二の星の華】エメネアと五獣の女王器

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 最も奥の右側の部屋に下り階段があった。
 地下へ下りると、階上とは造りが違うようだ。通路を少し進むと、左右へと分かれている。迷路のように入り組んだ造りになっているのだろうか。
「エメネア、君は護衛の皆と一緒にここで待っていて。僕が安全なルートを見つけてくるよ」
 言って、歩き出すのはリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)だ。
 先ほどまでエメネアとは別行動を取っていた学生たちも早々に、広がる迷路へと足を踏み出していく。
(シャンバラ女王陛下の遺産、今の世には一体どのような価値があるのか)
 閃崎 静麻(せんざき・しずま)の後を灯りを持って着いていく閃崎 魅音(せんざき・みおん)の更に後ろをクリュティ・ハードロック(くりゅてぃ・はーどろっく)はそんなことを思いながら着いていく。
 迷路のような通路の左右には、階上同様、ところどころに扉があり、静麻はその位置を確認しながら、白地図へと書き込んでいく。扉を開けて中を確認するということは地図を記す段階では行わず、只管、遺跡の形状を確認していった。
「遺跡って薄暗くて寒いんだなぁ〜」
 新入生故に、遺跡に潜るのは初めてである御伽 来夢(おとぎ・らいむ)は、松明を手に、通路を歩き回っていた。松明で照らし出される通路の先に何かないかと、張り切っている。
「女王器ってやっぱりすげーのかな。早くみてみてぇ」
 まだ見ぬ宝に思いを馳せて、来夢は通路を進んでいく。
「危ないよ!」
 自分たち学生以外の者が踏み込んだ形跡がないか、足元を調べていた如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は、来夢が踏み出した先の床が怪しいことに気付いて、声をかけた。
「え?」
 声に気付いても間に合わず、来夢の足はその床を踏む。すると、床が崩れた。
「「わあっ!?」」
 驚く来夢の手を正悟が引く。2人してバランスを崩して後方へと倒れた。
「あ……危なかったね」
「ああ。ありがとーな」
 ほっと一息ついて、崩れた床を覗き込む。流石に階下に続いているということはなく、大きな穴が口を開けているだけだ。しかも、底にはご丁寧に上向きの剣が並べられて。
「最深部への階段がこの先にあるとしたら、気をつけないといけないね」
 正悟は覗き込んでいた顔を上げ、呟く。
「階段がなくとも女王器がこの先にある可能性もあるんじゃねーのかな」
 来夢が呟けば、そのとおりだ、と正悟も頷いた。
「ここは安全なルートではないんだね」
 2人の後ろからリアトリスが声をかけた。
「他のルートを探さないと……」
 エメネアが安全に最深部へと下れるよう、そのルートを探している彼は通路を引き返していった。
「この辺りでいいかしら」
 迷路のような通路の途中で見つけた部屋に雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)とパートナーのベファーナ・ディ・カルボーネ(べふぁーな・でぃかるぼーね)は入る。
 エメネアたち一行は、安全なルートが見つかるまで、このフロアの入り口辺りの部屋に待機中だということは確認してきている。
「どんな敵が現れるかな? 筋肉質の男の子だったら良いのに……」
 ベファーナがまだ見ぬ敵のことを考えて、表情を緩ませた。
「まずは情報を惑わすのよ。敵の通信網とかないかしら」
 リナリエッタは無線にて、怪しい回線がないかと探る。有線として回線があるだろうかとベファーナも部屋の中を探してみたけれど、部屋の隅などには埃が溜まっているだけで、回線のようなものはない。
 暫く探って怪しい回線がないことを確認したリナリエッタは適当な無線の回線にエメネアがこの部屋に居るという情報を流してみることにした。
 情報を流してから暫く。その間に扉に罠を仕掛けておいた。
 外が騒がしい気がする。
「来たわね」
 開かれた扉の上からはその部屋の中にあった花瓶が落ちていく。
 その花瓶の犠牲になったのは、2体のゴブリンだ。
「筋肉質の男の子じゃない……」
 ベファーナは肩を落としながらも小人の小鞄を開いた。中から現れた小人が、ゴブリンを捕まえにかかる。
「彼らがエメネアをおびき寄せたというの?」
「このタイミングでやって来るならそうとしか考えられないけれどね」
 リナリエッタとベファーナは不思議に思いつつも2体のゴブリンそれぞれへ噛み付いた。血を吸い、リナリエッタは話せば分かる人なのだと惑わせ、交渉を持ちかけようとする。
 初めは暴れていたゴブリンが大人しくなったため、交渉に応じるのかと思い、2人は噛み付いていた口を離した。
 けれど、ただ、血を吸われた反動で、気を失ってしまっただけのようだ。
「他をあたった方が良いかしら?」
「そうだね」
 ゴブリンにもう一度噛み付いて、息を引き取るほどのダメージになるよう、血を吸う。
 死骸はそのままにリナリエッタとベファーナは部屋を出た。