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【ロリオとジュエリン】愛とは奪い合うもの

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【ロリオとジュエリン】愛とは奪い合うもの
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第6章 L’existence en soi・・・pas l’autoriser!l’histoire trois-その存在自体・・・許さん!story3-

「この守りでは、侵入者が増えてしまうじゃ・・・」
 織田 信長(おだ・のぶなが)は屋敷を見回し、侵入口にされそうなところを確認する。
「入り口や窓とかに、バリケードも作っておかなきゃね」
「念には念をというものか?」
 藤林 エリス(ふじばやし・えりす)の提案に“ほぅ・・・”と頷く。
「侵入されたのは、中で他の生徒が片付けているみたいよ。一応、様子を見ておくわね」
「ふむ、頼んだのじゃ」
「死骸を窓の外に出すと思うから、頭上に気をつけて!」
「アレが・・・降ってくるの?」
 想像しただけで東峰院 香奈(とうほういん・かな)は気を失いそうになる。
「落とす時はちゃんと声をかけるように伝えておくから安心してね」
「そっ、そうだよね。よかった・・・」
「じゃあ頑張ってねっ」
 扉のノブに手をかけたアスカ・ランチェスター(あすか・らんちぇすたー)は、フリフリと片手を振る。
「あぁ、そっちもな」
 屋敷内に入っていく2人を桜葉 忍(さくらば・しのぶ)が見送る。
「あの妖怪をこの場で仕留めぬと大変なことになるからな、忍よ1匹も逃すなよ!全て根絶やしにせよ!わかったな」
 わらわらと群れて突撃しようとする妖怪を睨んだ信長は抹殺するように言う。
「ああ、分かっている。あれはこの世に存在してはいけないモノだからな」
 軽く頷くと忍は排水溝の金網にアロマオイルや塩を、ポチョンポチョンッと数滴垂らす。
「窓も危険そうだな」
「しーちゃん、2階はどうするの?」
「―・・・あ〜、そうか。ヘリファルテは1人乗りだしな・・・」
 心配そうに言う香奈に、う〜んと唸って考え込む。
「かといって2階の守りを怠ると、信長に何を言われるか・・・。いや、何されるか・・・だな」
 もしも侵入されてしまったら、恐ろしい仕置きが待っているに違いないと、ぶるっと身を震わせる。
「ちょっとだけ、信長の傍で待っていてくれるか?」
「うん・・・。でも、すぐ戻ってきてね。あっ、早く動けるようにしておくね。信長に言われてから」
 妖怪に対抗するために、彗星のアンクレットで忍たちの素早さを加速させる。
「ありがとう、香奈。さてと、上に行かなきゃな・・・。おーい、信長!」
「何じゃ!?」
「ちょっと2階の侵入口を防いでくるから、香奈と一緒にいてくれないか?」
「む・・・それなら私が行ってこよう。忍は香奈といるのじゃ」
「そうか?すまないな」
「まぁ、2人が一緒にいたほうがいいからな。香奈、ヘリファルテを借りるぞ」
 そう言うと信長は香奈から借りた飛空艇に乗り、2階から侵入されないようにオイルと塩で防ぐ。
 屋敷内の台所では・・・。
 リリとウルフィオナが侵入してきた害虫の妖怪を抹殺し終えていた。
「これをゴミ袋に詰めて、とりあえず外に放りだしましょう」
 死骸を袋に詰めたリリは窓の外へ落とそうと2階へ向かう。
「―・・・あっ、ねぇ!落とす前に、外にいる生徒に声かけてくれる?ぶつかったら悲鳴ものだからね」
「え?はい、分かりました」
 エリスに頷くとリリは窓を開け、忍たちに声をかける。
「ちょっとそこから離れてください!」
「あぁ、分かった!」
 2人が屋敷の壁際から離れた瞬間、ドササッといくつものゴミ袋が落ちてきた。
「ふぅ。ひとまず全部、屋敷の中にいる害虫は駆除出来ましたね」
 満足そうに微笑むと彼女はパタンッと窓を閉める。
「この中に相当な数がいるんだろうな・・・」
 不透明な黒い袋を見下ろした忍が、頬から一筋の汗を流す。
「おっとのんびり見ている暇はないな。信長が戻ってくる前に、エサをセットする場所を決めておこう」
「しーちゃん、屋敷の裏なんてどう?」
「裏か・・・今のところ他の生徒の目につきにくそうなところだし、そこにするか」
 安心しきったやつらが来るかもな、とそこに決めた。
「2人とも、侵入されそうな箇所を塞いできたぞ!」
 ヘリファルテから降りた信長が忍たちに駆け寄る。
「こっちも準備おっけーだ」
 シートの上にビールと玉ねぎ並べ、走ってくる信長に片手を大きく振る。
「よし、Gマインをセットして離れるのじゃ」
 信長がシートの下に機晶爆弾を埋めると3人は、さっと木の陰に隠れて様子をみる。
「香奈よ、怖がることはない。奴等が現れたら忍の後ろに下がっておるのじゃ」
 ぷるぷると震える香奈に優しく声をかけてやる。
「うん・・・」
 小さく頷いた彼女は忍の後ろに隠れる。
 カサ・・・ッ。
「おい、何か上手そうなものがあるぞ!」
 1匹が匂いを嗅ぎつけると・・・。
「マジで!?それじゃあ休憩がてら、食いにいくかっ」
 カサカサカサカサカサカサッ。
「流石にあれだけ集まると気持ち悪いな」
 300匹以上はいそうな集団に、忍は不快そうに渋面を浮かべる。
「香奈、大丈夫か?」
 恐ろしい大群を目の前に、気を失いそうになる香奈に忍が小さな声音で言う。
「だ・・・大丈夫だよ」
 そう言いながらもやっぱり怖いのか、彼の背に顔を伏せる。
 チュドォオオーーンッ。
 馬鹿正直に一直線にやってきたアホどもが地雷を踏み吹っ飛ぶ。
「ちくしょうっ、やつらの仕業かぁあ!?」
 頭だけになりながらも、ぎゃあぎゃあと喚き立てる。
「あのしぶとさだと、爆炎波は危険じゃな。炎系でも一瞬で仕留められる技でなければ、燃えながら突撃してきそうじゃ」
「確かにな・・・」
 信長の呟きに忍が静かに頷く。
「やつらに熱湯をかけて留めを刺さねばな。―・・・私が行ってくるとしよう。香奈、ヘリファルテをまた借りるぞ」
 忍の背に顔を伏せたままの彼女を見て、“私が行くしかないな”と心の中でそう思い、ヘリファルテに乗る。
「何だあいつ、どこからやかんを取り出したんだ!?」
 飛空挺で飛ぶ信長を見上げた妖怪たちが声を上げる。
「えぇえいっ、細かいことは気にするでない!これでおまえたちを、完膚無きまでに叩き潰す!!」
 ドボボボボボッ。
 信長はやかんの取っ手を握り、50度以上の熱湯を浴びせた。
「ぎゃぁあ、あちぃいい!!」
「フフッ、どうだ?人様のものに手を出そうとすると、こういう目に遭うのじゃぞ!」
 這いながら逃げ惑う者どもを冷酷な目で見下ろす。
「誰かここに隠れているぞっ」
「仲間を散々酷い目に遭わせやがって。仕置きしてやる!!」
 木の陰に隠れている香奈たちを見つけた兵が、ナイフの柄を握り襲いかかる。
「きゃぁあ、来ないで!!」
 人型でも実態がアレだから怖いのか、香奈がサンダーブラストを撃ちまくる。
「危険そうだが、なかなか可愛いじゃないか。オレの嫁にしてやる!」
「いや、オレのだ!」
「よし、早いもの勝ちだぜっ」
「おい・・・今何て言った?香奈を嫁にするだと?消え失せろ・・・ゴミ野郎どもーーー!!」
 ズシャシャシャシャッ。
 怒りを爆発させた忍は、疾風突きで瞬殺する。
「うわぁ〜ん、しーちゃん。怖かったよーっ」
 香奈はめそめそと泣き、彼の腕に抱きつく。
「もう大丈夫だから、泣くな」
 彼女の頭を撫でて落ち着かせてやる。
「お姫様を悪者から助けた剣士みたいね♪」
 パシャッ。
 その光景をカメラマン美羽は見逃さなかった。



 一方、イルミンスーツの森では不穏な動きが・・・。
 森へキブ王子を連れてきたジュゲム・レフタルトシュタイン(じゅげむ・れふたるとしゅたいん)が、何やら怪しげな耳打ちをする。
「もはや王子の一族だけでは、あの屋敷は攻め落とせない。森の巨大昆虫たちに応援を要請するんだ!」
「得に仲がいいわけじゃないし。ボクらに協力してくれないと思うけど?」
「そこでだ。“ロリオがイルミンスールを森を切り開き、マンション建設を推し進めている”と、噂を流すんだ。ロリオを葬れば、傷心のジュリエンを心を癒せるのは、キブ王子しかいない!」
「―・・・そのデマを信じるのかな」
 ジュゲムの提案に不安そうな顔をする。
「心配するな、オレも協力する!」
 “勝機はオレたちにある”というふうに、王子の肩にぽんっと手を置く。
「分かった、言ってみるよ・・・。―・・・森の皆!ロリオという少年が、この森を切り開きマンションの建設をするらしいぞ!これを阻止すべく、ボクらと一緒にそいつを倒そう!!」
 王子の声に昆虫たちは何事かと、わらわらと現れた。
「お〜、よく現れてくれた!さっそく作戦会議を始めようっ」
 虫たちを歓迎するかのようにジュゲムが両腕を広げる。
 手っ取り早く話し合うこと数分・・・。
 王子たちと共に昆虫がロリオ抹殺の襲撃へ向かう。
「あの黄緑色の頭のやつが、ロリオだよ!」
 キブの指差す方を昆虫たちがいっせいに振り向く。
「何か虫がこっちにくるんですけど!?」
「えぇ!?何で妖怪だけじゃなくって、他の昆虫まで!?」
 ロリオとミルディアが驚きのあまり目を丸くする。
「ミルディアさん、ジュエリンを屋敷の中へ連れていってあげてください。あいつらの狙いはオレみたいですから、ここで止めます」
「うん・・・気をつけてねっ。―・・・ん〜、よいしょっ!」
 ジュエリンを背負ったミルディアが屋敷の中へ駆け込んでいく。
「―・・・さて、何の目的できたのか知りませんが。敵意を向けるなら・・・、仕方ありませんねっ」
 2人が屋敷に入ったのを見ると、ロリオは日傘を開き昆虫たちに向ける。
「オレは今・・・もの凄く機嫌が悪いんですよ。さっさっと・・・失せろぉおおっ!!」
 ゴォオオオウゥウッ。
 虫たちは隠れる間もなく炎の餌食となってしまう。
「ふぅ、虫っていうのはよく燃えますね。その大きさでは隠れる場所なんて、ほとんどないでしょうけど。何の目的できたか知りませんが、もう一発魔法を叩き込んでやりましょうか?」
「―・・・・・・っ!?」
 日傘の“死”の文字を見せつけられた虫たちは降参し、地面に文字を書き理由を教える。
「ほう、オレが森を切り開いてマンション建設?まったくのデマですね・・・。本来は首謀者だけを叩きのめしたいところですけど。調べるのも面倒なんで、まとめて片付けます」
「―・・・・・・・・・っ」
 “やるきと書いて、こいつ、殺気満々だ!”と、虫はキブの方へザッと振り返る。
「(提案したのはジュゲムじゃないか!)」
 そして王子はジュゲムの方をじっと見る。
「(実行したのはキブ王子だろ!)」
 ジュゲムは・・・王子を見つめ返す。
「とりあえず、そこの2匹の仕業ってことですね?分かりました、ここで完膚抹殺してやりましょう。―・・・お前ら、覚悟は出来てるんだろうな?」
「ちょ、ちょっと待て!話せば分かる、これはふか〜い事情がだな・・・」
「問答無料だーーっ!!」
 ドゴォオオオオンッ。
「ちくしょう〜、これで終わりだと思うなよぉおおーーっ」
 王子は原型に戻って逃げ、ジュゲムだけ魔法で吹っ飛ばされてしまった。