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リアクション
第8章 Une cr‘eature sale t’assassine.-汚いものは抹殺-
「今日もいっぱい衣装を見るのです♪早く来ないと、置いていっちゃうのですよ〜!」
コスプレ衣装を見せてもらおうと、リフィリス・エタニティア(りふぃりす・えたにてぃあ)はうきうきしながら走り、皆を急がせる。
「えぇ〜、待ってよリフィちゃ〜んっ」
一緒に服を見ようとリナト・フォミン(りなと・ふぉみん)は、慌ててパタパタと駆け寄る。
「相変わらず元気ですよね、2人とも」
「元気すぎて問題を起こさなきゃいいですけどね」
のんびりと2人の後をついていく緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)に、遠野 歌菜(とおの・かな)は可笑しそうに笑う。
「(見張ってないと、服を他のやつに着させるかもしれないからな・・・)」
月崎 羽純(つきざき・はすみ)の方はというと、リナトが暴走しないように見張っている。
「アレアレ?何だか同じ顔がいっぱい〜?」
門をよじ登り、木々の陰からひょこっと顔を覗かせたリナトの視線の先に、同じ顔の兵士たちが屋敷に攻め込もうとしている。
「くそぅ〜っ、次から次へと邪魔者がかり来やがって。皆、原型に戻って侵入口を探すんだ!」
1人の兵士がそう言うと、その仲間たちは黒光りする妖怪の姿に戻った。
「虫になっちゃった!この人たち、妖怪なの?何か可愛いね♪」
「あれが可愛いだと・・・っ?」
妖怪を戯れようとするリナトの姿に、羽純はぎょっとした顔をする。
「退治しちゃうなんてかわいそうだよ・・・。きっと話せば分かるよ〜?かわいいもん☆」
「リナト、そいつらはな・・・。人の住んでいるところに侵入して、家を荒らす生き物なんだ」
「住むところを探してるなら、僕たちのお家に来てもらおうよ?大人しくしててね、って言えばきっと大丈夫もん。そうすれば、ぜ〜んぶ解決☆」
「なっ!?リナト、この妖怪さんたちを家に招き入れるなんて、絶対ダメ!ってゆーか無理!」
歌菜は頭を左右にぶんぶんと振り、全力で拒否する。
「1匹見つけたら30匹くらいは絶対にいるようなやつらよ!?たとえ世界が壊れてもありえないわっ」
やつらが爆発的に増えた家の中を想像しただけで、全身にゾゾゾッと悪寒が走る。
「それだけは絶対に許さないからな」
羽純もリナトをめっと叱る。
「え〜、こんなに可愛いのに?ねぇリフィさんはどう思う?」
リナトは妖怪を1匹だけ捕まえてリフィリスに見せる。
胴体を掴まれた虫が、6本足をばたつかせて暴れる。
「きゃわぁあああ!?そんな汚いもの、早く捨てるのです!!」
ズザササァアアッ。
見た目だけでも有害な生き物を持つ少年から、もの凄い勢いで離れる。
「リナト君、この世には存在してはならない絶対的な悪が存在するのですよー。汚い糞蛆虫どもは滅びるべきなのですー。いわばゴミなのですよぉ。ゴミは掃除しないといけないのですー」
「このガキ、言いたい放題言いやがって!生意気なこいつ片付けてやろう!」
「我々を侮辱するとどうなるか、思い知らせてやるっ」
リフィリスの言葉に怒った兵たちが少女の方へかっ飛ぶ。
「ハルカちゃん、変身してゴミを駆逐するのですぅー」
「ふぅ。遊びに来たはずが、こんな騒動になってしまうとは・・・」
漆黒の杖をくるくると振り、少女のようなスタイルになる。
「ハルカちゃん、ゴミは汚いんですから触っちゃ駄目なのですよぉ。近づくのも厳禁なのですぅ」
小柄なハルカに装着したリフィリスは、“接近攻撃絶対禁止”と騒ぐ。
「分かっているのですよ〜、リフィ。魔法少女に〜、へ〜んし〜ん♪」
ちゃららら〜♪
バイオレットカラーのリボンがくるりんっと、右足に可愛らしく巻きつき、足首のとこできゅっとリボン結びになる。
左足首にも、しゅるんっとリボン結が結びつき、腰の後ろの方には大きなリボンが装着される。
ゴシックドレスから魔法少女スタイルに変身!
「魔法少女ハルカ、参上なのです〜♪」
ドクロのマークがついた帽子を被り、両サイドのリボンにちょんと手をやり、可愛らしくウィンクする。
「ジュエリンさんに代わって、汚らわしいゴミどもを掃除してあげるのですよ〜」
「ほら、リナト君も協力するですぅ。で・・・、そんなものは早く捨てるのです!」
まだ妖怪を手に持っているリナトにリフィリスが言う。
「はぁ〜い、分かったよ・・・。こんなに可愛いのになぁ〜」
少女の言う通り少年はしぶしぶポィッと手放し、歌菜の背にマントとして装着する。
「貴様らも屋敷を奪う邪魔や、王子の恋の妨害をするのか!」
「恋って・・・?」
兵の言葉に歌菜が顔を顰める。
「この屋敷に住んでいる娘を王子の嫁にするのだ!それを邪魔するなら、貴様らを排除してやるぞっ」
「ジュエリンさんには婚約者がいるじゃないですか!?人の恋路を邪魔するなんて許せないっ」
「奪って当然と思っているところが・・・、まさにそれものだな」
人のものを平気で奪う黒い生物を睨んだ羽純が嘆息する。
「―・・・人の恋路を邪魔する人たちには、天誅ですっ!」
“強奪魔・完膚抹殺・天誅”・・・歴戦の魔術で、何十匹もの黒い群れを一瞬にして砕く。
「やっつけたかな・・・?」
もくもくと立ち上る煙の中に、死に損ないがいないか目を凝らす。
ブビィイイインッ。
「まだいるの!?」
「倒したやつ以外にも、まだまだいるってことだな。くっ、きりがないな・・・」
羽純も歴戦の魔術で応戦するが倒しきれない。
「はわわっ。皆がピンチなのです、ハルカちゃん!あの黒いゴミ虫どもを、跡形も残さないように消してやるのですぅ〜っ!」
「了解なのです〜」
地獄の天使の翼で空を舞い、杖を虫どもに向ける。
「これで視界の害も、すっきりキレイにバイバ〜イのお掃除の星♪シューティングスターッ!!」
きらぁん☆きゅんきゅきゅーんっ。
空から星のようなものが妖怪に降り注ぎ、頭部を貫通する。
ブシャッ。
汚らしく虫の頭部が飛び散る。
「あのガキを撃墜しろぉおおっ。とーつげきぃい!」
兵たちは黒光りする身体をテカらせ、ハルカに襲いかかる。
「いいいいいいいいいいいーやーなーのーでーすぅぅぅぅぅぅぅぅ。ハルカちゃん、やつらからもっと離れるのですぅぅぅ」
「あわわ〜。囲まれそうなのですよ、リフィ」
「もっと木がいっぱいある方に一旦逃げるのです。うわぁんっ、来ないでほしいのですぅぅ。嫌!汚!不潔!」
黒い虫どもに纏わりつかれそうになり、リフィリスはキャーキャーと騒ぐ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあああ。逃げるのです、ハルカちゃんっ」
「えぇ!?はっ、はいです〜」
びゅぃい〜んっ。
汚いものから一刻も逃げたいと、2人は屋敷から離れていってしまった。
「えぇっ!?私だけでどうすればいいの!ハルカさん、カムバークッ!!」
取り残された歌菜が大声で呼び止めようとするが、空に虚しく響いただけで戻って来ない。
「うぅ、まだこんなにいっぱいいるのに・・・」
「この辺だけでも、3人で何とかしなきゃな」
めそっと涙目になる彼女の頭をよしよしと羽純が撫でる。
「こうなったら家に・・・」
『それだけは絶対ダメッ!』
「むぅ〜、残念〜・・・」
2人の声が重なり、リナトはしょんぼりとする。
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