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リアクション
■□ 第2フェーズ □■
【現在捕縛された人数:西六名・東0名。新たに捕縛されたのは神条 和麻、近衛シェリンフォード ヴィクトリカ、アーサー・ペンドラゴン、杜守 柚、杜守 三月。只今より第2フェーズを開始します】
一斉配信されたメールを見た神代 明日香(かみしろ・あすか)は、ひとまずホッと胸を撫で下ろした。
「そろそろ作戦実行の時ですぅ」
よし、と拳を握りしめて気合いを入れると、明日香は何もないその場で、派手にどしゃー、と転んだ。
「あぅ……思ったより、痛いです……」
わざとなので覚悟はしていたが、偶々倒れ込んだ先に石が露出していたらしく、膝から血が滲んでいる。しかし、これも演出に一役買ってくれるだろう。
準備が出来たところで、明日香はわざととぼとぼとした足取りで、中央エリアを目指して歩き出した。
「ろうや」と看板の出ているテントの下には、既に捕まった六人がわいわいがやがや、本部に送られてくる映像や情報に一喜一憂していた。明日香はその隣に、ぽつん、と立つ。
「あれ、捕まった人?」
本部に詰めていたノリコが明日香を見付けて声を掛ける。
「もー、オニがちゃんと連れてくるようにって言っておいたのになー。どこで捕まったの?」
問われて明日香は、くすん、と涙目ですりむいた膝を見せる。するとノリコも深い疑問は抱かなかったのか、そのまま明日香を「ろうや」に置いて本部テントへと戻っていった。
明日香はそのまま何食わぬ顔で、捕まったフリを続けるのだった。
「っ……うあぉおおっ!」
至近距離でバッタリオニと出くわした夏野 日景(なつの・ひかげ)は、悲鳴を上げて踵を返した。
慌てて光学迷彩を展開して、一瞬オニの目から逃れて距離を取る。オニは何もない虚空に向かって腕を振るが、日景を捕らえることは出来ない。
「っふー、危ない危ない……、おー恐かった……」
ある程度の距離を取ったところで光学迷彩を解除する。最初から最後まで展開し続ければ捕まらないかもしれないが、それではゲームが面白くない。
しかし、一人で逃げるのはなかなか難しい。やはりパートナーの協力が欲しいところだ。
日景は懐から携帯電話を取り出すと、パートナーの深沢 ごまりん(ふかざわ・ごまりん)の番号をコールする。
ぶぅ、ぶぅ、と携帯電話のバイブレーションが着信を告げるが、ごまりんは動こうとしない。
ごまりんは、本部テントのすぐ横に居た。光学迷彩を展開し、気配を殺せば、誰もそこに誰かが居るとは気付かない。ここまでは順調だったのだ。最後まで隠れきって見せる……そのためには、携帯電話で通話をするなどという愚行に出るわけには行かない。
それがパートナーからの着信であることはうすうす感づいていたが、ごまりんは保身を取った。
その結果。
「ごまりんの裏切りものぉーーー!」
携帯電話に気を取られている隙にオニに捕縛された日景が、「ろうや」へ連行されて来ると同時に虚空に向かって声を掛け、その所為でごまりんも見つかり、二人揃って「ろうや」に収納されるのだった。
さて、そのころ参加者には本部からの一斉メールが配信されていた。
【オニが五人追加になりました。頑張って逃げて下さい】
「聞いてないですー!」
「最初に説明あったよ」
丁度追加のオニが解放された場面に居合わせてしまった本宇治 華音(もとうじ・かおん)は、パートナーのウィーラン・カフガイツ(うぃーらん・かふがいつ)と共に猛ダッシュで逃げて居た。
「試練が成功したらオニは増えないんじゃないですか?」
「試練以外でもオニは増える、って司会のねーちゃん言ってたよ」
「そんなぁー」
「ほら華音、乗りなよ」
言うと、ウィーランはくるりと中空で一度跳ねると、獣化して鹿の姿になる。
「乗り物は問題ないだろ?」
「ありがとう!」
蹄の音を鳴らすウィーランの背に華音がひらりと飛び乗ると、ウィーランは足取り軽く駆け出す。
それを追うのは、オニ役の毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)だ。
指定に忠実に、サングラスを掛けて喋ることなく、淡々とした動作で二人を追いかける。ついでにミラージュを展開、隠れ身を併用して自分を複数人に見せている。
お陰で追われる華音とウィーランは余計な警戒を強いられている状態だ。
ある程度の距離を追った所で、大佐はばっ、と手を振る。すると、粘体のフラワシが華音とウィーランの行く手に回り込む。が、コンジュラーでない二人にはそれを見ることが出来ない。
べちょ、と何か柔らかいもの……大佐のフラワシ……が華音の顔に直撃した。
え、なに、と思う間もなく華音はウィーランの背から落っこちる。見事に顔から着地するが、フラワシが間に入ったことで幸い顔面が潰れる事態にはならなかった。
「華音!」
急に背から重みが消え、ウィーランは慌てて足を止めて引き返す。大丈夫、オニはまだ遠い――
ように見えたのは実はミラージュで投影された影の方。大佐本人は気配を断って、既に距離を詰めていた。
慌ててウィーランの背に上ろうとする華音もろとも、大佐に捕獲されるのだった。
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