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図書館“を”静かに

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図書館“を”静かに

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「っ!お、重いな、これは……!」
雅羅と豊和が潰される直前、杜守 三月とセシル・フォークナーが円柱状の本棚を受け止めていた。大型本棚はかなりの重量があり、三月はおろか力自慢のセシルでも冷や汗が出てくる。
「け、結構キツイかしら……!?」
「……っ!豊和、出られるか!?」
「僕は大丈夫、でも……!」
 三月の問いに答えるが、問題は豊和自身ではなく、もう一人―――雅羅の左足首だ。本棚の奥、何かに押し付けられているように動かない。
「豊和!雅羅様!」
二人が耐えている所に、レミリア・スウェッソン(れみりあ・すうぇっそん)も手を貸していく。すると少し本棚が上がり、雅羅の左足首が露出した。
「雅羅さんと豊和、こっち!」
雅羅と豊和を誘導するのは想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)の一言。足首を引きずりながらも本棚の落下地点から脱出できた。
「足大丈夫!?ケガとか、してない!?」
「うん、本が引っかかってただけみたい……大丈夫、心配し過ぎよ」
「でも雅羅さんに何かあったら、オレ……」
こんな状況でも何かに焦ってるような、色々相変わらずの夢悠。肩を竦めながら、雅羅は潰そうとしてきた本棚を見やる。支えていた三人に白星 切札(しらほし・きりふだ)が力を貸し、何とか倒れこんでこない位置まで押し戻したようだ。肩で息をする切札に、セシルが声をかける。
「……無茶をしましたね。力仕事にはあまり向いていないように見えますが」
「女性二人が率先して危険な仕事をしているのを、ただ見てるにはいきませんから」
額の汗を拭いながら答える切札だが、しかしと続ける。
「急に倒れてきましたね」
「ピクシーのイタズラ……でしょうか?」
レミリアの考えに、何処からともなくフォークナー禁書が割って入ってきた。
「片手で吹き飛ぶひ弱モンスターだから……何匹いて、どんな原理を使ったって無理でしょう。おそらく」
その言葉の意味を汲んだ雅羅の顔は青ざめ、辛そうになっていく。
「また、私の……」
「そう決めるのも早計ですね」
フォローに入ったのは同じく潰されかけた豊和だ。服を叩きながら、彼は続ける。
「巨大な棚といっても、この円柱状の棚は他の角棚に比べて重量に対して設置面積が少ない。それでいてかなり大きいものです」
「そんなに簡単に倒れるの?」
「中身の入ったジュースの缶をふっとした事で倒し、こぼしてしまった経験は無いですか?円柱って案外簡単に倒れてしまうんですよ。特に今回は中の本も殆ど空だったしね、普通より倒れやすいと思う」
ですから、と豊和は棚を調べている夢悠を見やった。
「……あった、これだね。簡単に棚のバランスを崩せそうだ」
言いながら夢悠が棚の下から小さな何かを拾う。簡単な、それでいて精巧なジャッキのような仕掛けだ。
「機構は単純そうだけど、ピクシーが使ったものではなさそうだよ」
夢悠が仕掛けを色々動かして考察する。
「ということは……」
その一言と共に、皆が周囲を警戒する。……殺気は感じない、これ以上の追撃はなさそうだ。
「本棚は本の家、帰るべき場所だ。それを倒すというのは……」
今まで眠そうに、気だるそうにしていたフォークナー禁書が明確に怒りを露わにした。
「本を大事にしない奴は嫌いよ」


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