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図書館“を”静かに

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図書館“を”静かに

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「なあ君、悪いようにはしないのだ。焼け死にたくなければ大人しくここに入ってくれ給えよ」
リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)と召喚された二匹の《サラマンダー》の脅しに屈して、ピクシーが差し出された《魔女のフラスコ》に入っていく。
「よし、順調」
「なんだ、やっと一匹目?あたしの圧倒的勝利よね!」
そう威張るユノ・フェティダ(ゆの・ふぇてぃだ)は、空鍋に入って眠る数匹のピクシーを示した。
「ぬ、まだまだこれからなのだ。ここから……」
「活字を!大切にして下さい!」
ピクシーを追い詰める時にサラマンダー達が少し焦がした蔵書、これにコープス・カリグラフィー(こーぷす・かりぐらふぃー)は怒り心頭だった。リリは陳謝し、サラマンダー達を引っ込める。
「ピクシーを捕えているのか?」
そんな小問答を見ていた竜鱗の大男―――カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)がリリ達の行動に興味を示してきた。大柄で豪快な彼だが、知的好奇心が強いという一面がある。
「彼らが何を探しているのか、彼らが何なのか、それが今一番回答できそうな問題なのだよ。捕えて色々と調べるのが一番なのだ」
空鍋から一匹ピクシーをひっつめ、リリが嬉々とした表情で続ける。
「例えば……元は一体のピクシーが分裂して増えたかもしれないし」
「成程、興味深ぇな。出来るなら『発生源』もふまえて調査したい……が」
 顎に手を当てながら、カルキノスは横で作業をしているパートナーに聞いてみる。
「どうだ、ルカルカ」
「んー……」
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は《サイコメトリ》を用いて、ピクシーの発生した場所―――黒い魔本が開いた所を探していた。周囲に散らばった本を確認しながら、彼女は言う。
「ここで間違いは無いっぽい、けど……」
示した場所は、崩れた本達しかない。しかも古ぼけた本や埃を被った本で埋まっている……本が開いた時、新刊の搬入作業をしていたハズなのだが。
「見当たりませんね、ルーさん」
周囲の本を整理ながら、ルーの捜索を手伝っていた白雪 椿(しらゆき・つばき)。ここでは無いのか?と移動しようとしたその時、汚れた本に紛れて一冊だけ新品らしい本がある。
「これは……」
 椿はそれを丁寧に拾いあげ、巻末の発行年月日を確認。第一版、最近出たばかりの新刊に間違いはなかった。
「一緒に本棚へ仕舞おうとしてた奴っぽいな」
かわいそうに、折角のおめかしが――と加え、コープスが本を勞るようにしながら嘆いている。
「さて、コレがあるってことはココが目的地に間違いなさそうだけど……」
 ルカルカが言ってみるものの、この本以外は変わらず古びた本だらけ。しかし―――。
「それがあるならば」
そう言いながら本棚の裏から出てきたのはゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)。怪しい笑みが顔を埋めている
「もう一度《サイコメトリ》してやればよいだろう?」
 新刊を椿の手からひょいと掴み取り、集中する。目を閉じながら少し歩いて行くと、手に持った本と同じ新品の本が、不自然に固まってる場所が見つかった。
「ふふん、本が見つかったぞ。コレのことだ――」
そう言いながら新刊の山を漁り、ゲドーはフハハハと勝利の高笑いをする……のだが、いくら探しても肝心の黒い魔本はそこには無い。何か厚めの本らしきものが、そこから既に抜き取られた痕を残して。


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