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起木保の究極の選択~更生or協力大作戦~

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起木保の究極の選択~更生or協力大作戦~

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 一方、溜池キャンパスの図書室。
 男子生徒服姿の加岳里 志成(かがくり・しせい)と、和服姿の左文字 小夜(さもんじ・さよ)が並んで座っている。
 二人が見ているのは溜池キャンパスで最近起こった出来事をまとめた資料だ。
 ページをめくりながら、左文字小夜が加岳里志成に語りかける。
「最初は、この溜池キャンパスを水没させかけたようですわね」
「そうですね。これで被害を受けた人は多そうですけど……」
「次はモンスター大量発生……あら、これはでも先生のせいではないようですわ」
「新人の教師で、先生の妹の羽田 美保(はだ・みほ)という先生のせいだったんですね」
 ペラ、とページをめくる。
「次は……洞窟の魔物駆除ね。これには大きな被害はないみたいだわ」
「巻き込まれた生徒の恨みは買いそうですけどね」
「この洞窟で白雪さんとパートナーになったようですわ。そして最近だと、彼女と伐採ロボットが暴走した事件」
「これも色々な人に迷惑かけてるようですね」
 二人は同時にため息をつく。
 被害者が多すぎて、手をつける取りかかりが見つからない。
「仕方ないですね。とりあえず、手近なところから聞き込みに行きますか」
「ええ。先生方に話を聞いてみましょう」
 二人は立ち上がり、職員室へ向けて歩き出した。

 二人の向かう先、職員室。御凪 真人(みなぎ・まこと)は、ドアを開けた。
 起木保の同僚である教師であり、以前、起木保と協力していたこともある緒喫 円(おきつ・えん)のもとへ。
「白雪さんの誘拐に、なにか心当たりはありませんか?」
 眼鏡のブリッジを上げ、問いかける。
「そうさなぁ……とくにはないなぁ」
「昨晩、どこかで見かけませんでしたか?」
「いやぁ、見てないなぁ……」
 腕を組み、ポケットから煙草を取り出しかけた。
「緒喫先生、校内は禁煙ですよ」
「日付先生! これは失敬」
 日付 那由(ひつけ・なゆ)の指摘に慌てて煙草をしまう。
 教師二人を見てふと気付き、御凪真人が顔を上げた。
「そういえば、あのモンスター大量発生のときの犯人だった教師は、いまどうしてますか?」
「あぁ、羽田美保先生かぁ。あぁ、もう先生じゃないんだがな」
「解雇されてから……どうしたかは知りませんね」
「……なるほど。わかりました」
 そう言って一礼し、職員室を後にする。
「白雪さんの足取りは未だ不明ですが……気になることも出てきましたね」
 そう言って天を仰ぐ。南中に差し掛かった太陽は眩しく大地を照らしている。

 太陽の光が降り注ぐ、溜池キャンパスの溜池近く。
 部活動にいそしむ生徒達の中に、清泉 北都(いずみ・ほくと)はいた。
「さて、調べてみようか。モーちゃんは女生徒を中心にお願い」
「わかった」
 清泉北都の言葉に頷き、モーベット・ヴァイナス(もーべっと・う゛ぁいなす)が青いショートウェーブの髪を翻した。
 硬式テニス部のコートへ向かう。
「起木保について、どう思う?」
 女生徒達は背後からいきなり語りかけられ、びくっと肩を震わせる。
「いきなり誰よ――?」
 振り返る彼女達の目に、端正な顔立ちで眼鏡をかけたモーベット・ヴァイナスの姿が映る。
「な、何か御用ですか!?」
「何でも話すわよ!」
 彼女達の頬に朱が走る。態度の変化に顔をしかめそうになるのを堪え、モーベット・ヴァイナスは眼鏡を押し上げた。
「起木保について聞きたい」
「きき……って、あの保健室のセンセね」
「ルックスは悪くないけど、あのトラブルメイカー気質が……」
 ぺらぺら喋り始めた彼女達に割り込むように、問いかける。
「彼を嫌っていたり、怨んでいたりする者はいるか?」
「そこまでは……あ、でも」
 何か思い当ったのか、赤いスコート姿の女生徒はパチンと手を叩いた。
「この溜池キャンパスが水没しかけた時に、喚いてた男がいた気がする」
「! 詳しく教えてくれ」
 眼鏡を再び上げ、メモ帳を取り出し女生徒の話に聞き入る。
「モーちゃんもちゃんとやってるようだし、僕も頑張らないとねぇ」
 そう言いつつ、清泉北都が【超感覚】を発動。
 辺りの様子に目をやりつつ、バスケットボール部のコートへ。
「誰か、起木保先生について、教えてくれないかなぁ」
 見慣れぬ執事服を着た少年に語りかけられた部員達は、面喰ったかのように一瞬黙ったが、すぐにどやどやと集まって来た。
「起木保って、あの保健室の?」
「うん。どんな先生か、聞きたいと思って」
 他校生であることを利用し、何も知らないことを装う。
「あれは、あれだよ疫病神」
「疫病神?」
「さすがに言い過ぎだろう、それ」
「だって先輩がそう言ってたから」
「先輩? 詳しく教えてくれない?」
「それは――」
 言いかけたところで、休憩時間終了を知らせる笛が鳴る。
「ごめん、行かないと!」
 そう言って、部員達はコートに戻っていく。
 しかし清泉北都は諦めず、耳をすました。
『誰だよ、疫病神って言った先輩』
唖久 灯(あく・とう)先輩。あの学校が水没しかけた時、深みにはまって腕を骨折して、試合に出れなかったんだって』
 思わぬ情報に、口元を緩ませる。
「これは結構な情報だねぇ。さて、もっと調べてみようかな」
 身を翻し、バスケットコートを後にした。