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リアクション
第二章:ゴスホーク+ガネット
天御柱学院女子寮、遠藤寿子の部屋では『作戦会議』が開かれていた。
「”うさぎさん”が来てくれて本当に助かった」
黒崎天音がキラーラビット”百合原うさぎ”に礼を言って続ける。
「やはり『擬人化イコン』には『擬人化イコン』に対応してもらうのがいいんじゃないかと思うんだよ」
「これが”うさぎさん”の原稿なのね」
ネージュ・フロゥは机の上に置かれた原稿を読んでいた。天音が部屋に集まった人々に言う。
「”イーグリット”・”アサルト”・”ブルースロート”を元の原稿に戻すことを至上命題とし、彼らとの絆・関係設定を盛り込み
――最後にはこの原稿に戻ってきてハッピーエンドになるのが”百合原うさぎ”さんのストーリーだよ」
アレーティア・クレイス(あれーてぃあ・くれいす)が続ける。
「寿子の同人誌世界の枠内で『今回の原稿』のサイドストーリーになる『擬人化イコン』のショートストーリーをつくればよいのじゃな?」
シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)が皆に言う。
「『魔法少女』の力を発揮した状態でこの『魔法のインク』でペン入れして具現化させる。
オレはガネットマイスターだ。”ガネット”の擬人化なら任せろ!」
アレーティアが寿子にこう言う。
「そういえばこの前、”ゴスホーク”の資料が欲しいとか言われて写真をいくつか寿子に渡してやったが、
何処かに”ゴスホーク”の擬人化もおったかの〜?」
寿子はラフ描きの擬人化ゴスホーク設定をアレーティアに渡した。
「ふむふむ。性格設定も人物相関設定もできておるではないか。『魔法少女』の力でペン入れする部分は『擬人化イコン』だけに絞って」
ブルーズ・アッシュワースがアレーティアの言葉を受けて続ける。
「背景やモブならば我も手伝えるな」
「ブルーズの腕前なら安心して任せられる。保証するよ。じゃあ、作業開始としよう!」
天音の号令でアレーティアとシリウスが下描きを始める。
アレーティアの原稿には柊真司が。シリウスの原稿にはサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)がついて主線の入った原稿に消しゴムをかけていく。
アレーティアとシリウスが擬人化イコンにペンを入れている間、ブルーズが描画のフラワシを使い、背景を仕上げていく。寿子の部屋は漫画工房と化していた。
寿子は擬人化イコンが具現化してしまった原稿を仕上げてからずっと休んでいない。皆の配慮で「せめて食事を」とアイリ・ファンブロウがキッチンに立っていた。
ちょっとくたびれた様子の寿子を理知が心配そうに見つめる。天音がキッチンから紅茶を淹れて二人の元にやってきた。
「チョコルト×アサルトのストーリーはありだと思うのです〜」
寿子が天音にそう言った。
「聞いてたんだね?! そっかぁ、あははは」
「”チョコルト”ですからチョコ。スイーツ系な女の子と考えていたこともあるんですが、”双子の兄さん”はありです☆」
「”チョコルト”は浅黒い肌のヘラっとした遊び人で、関西弁キャラポジションだと思います」
天音が真顔で寿子に答える。
「そんでもって特技はポッキーゲーム」
「完璧です☆合コンでモテモテなタイプで☆」
「面白いね。ところでちょっとこの写真を見てくれるかな? この二機をどう思う?」
天音が寿子に見せたのは薔薇の学舎のイコンである”シパーヒー”と最新型の”ファーリス”だった。
「”ファーリス”は耽美系美青年、”シパーヒー”は筋肉質な男らしい体格。しかもその二人が薔薇学にいるとなるとそれはもう」
暖かい紅茶を飲んで温まったのもあるのだろうが、寿子はふわふわとした目で数秒間うっとりしたかと思うと、どこから出したのかわからないが紙と鉛筆を手にして、”シパーヒー”と”ファーリス”の2体の擬人化キャラをものすごい速さで描いた。
理知と天音が思わず「はやっ!」と叫んだ瞬間、寿子をみると手には先端にインクの付いたGペンが握られている。
あわてて理知と天音がその手を掴む。
「だめだよ、寿子ちゃん。『擬人化イコン』が具現化しちゃうよ! 多すぎるよ!」
「そうそう、これはまた次の機会にペン入れしようね? 寿子さん。
『今回のアクションで具現化させる擬人化イコン』は『掲示板に書き込みのあった先着3体様』になってるからね?」
「――徹夜明けの『腐女子』ハイテンション……恐るべし」
「寿子が描いたイコンが3体。シリウスとアレーティアが描いたイコンと”百合原うさぎ”で3体。
つまり一組ずつ組み合わせていけばカップルが三組で余りなし。こ れ だ ね」
仕上がった原稿を見つめながら汗をふいてサビク・オルタナティヴが言った。
「え……なに? 男女比率がおかしい? あぁ地球だとそうなんだっけ。大丈夫大丈夫、シャンバラは同性婚も認めているから」
――サビクは超笑顔で言うんですが……”寿子ワールド”はBLですから。それに百合もありですから。
「さぁ、そうと決まったら組み合わせだよ!」
――現在の状況。”イーグリット”男性(男。今回は女も)、”アサルト”男性(男・女)、”ブルースロート”女性(おそらく対象は男性)ですよね?
――”百合原うさぎ”女性(対象不明)、”ゴスホーク”女性(対象不明)、”ガネット”女性(対象不明)……えっと?
「ふーう、疲れたのう」
「『魔法少女』の力を発揮したままってのにはさすがのオレもくたくただせ……」
シリウスとアレーティアがほっと一息をついたとき、閃光が寿子の部屋に広がった。
「具現化したんだ……オレの”ガネット”!」
スク水娘姿で擬人化された”ガネット”がシリウスとサビクにこう言った。
「どうせ私なんて……どうせ格納庫がお似合いなイコンなんですよ」
「”ガネット”?」
「――最近動かしてなかったからかな、シリウス」
「百合園まで連れてって倉庫で眠らせてたのがまずかったんだろうか……」
「どうせ。こうやって憐れみを乞うような発言を……ご迷惑なのがわかっているのにしてしまうんですよ」
「”ガネット”!ガネットマイスターのオレが言うんだから間違いない。『ガネットはオレたちにとって必要』なの」
「――また、こうやって気をひいて。気を使ってもらって。だめなのは私なんですよ」
「”ゴスホーク”じゃな?」
黒いゴスロリ服に前髪ぱっつんロングの黒髪。青い瞳が印象的な美少女がアレーティアと真司の前でお辞儀をして言う。
「”ブルースロートお姉様”を元の原稿に戻してさしあげる……このお役目、必ず果たしてご覧に入れます。
誰にでも優しいお姉様のことですもの――きっと今日もたくさんの男たちにナンパされているに違いありません。
変な奴にナンパされて連れていかれたら」
「”ゴスホーク”?」
「すぐに参ります、お姉様」
「”ゴスホーク”!……飛び出して行きおった。ありゃ音速を超えておるのではないかの?
ちょっとくらい、わらわと話しをしてからでもよかろうに」
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