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擬人化イコン大暴れ!?

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擬人化イコン大暴れ!?

リアクション

 「そこのイコンのコスプレっぽい人! そんな格好でこっちに出てきちゃダメなのですわ」

 マルティナ・エイスハンマー(まるてぃな・えいすはんまー)が集まっている『擬人化イコン』たちに声をかける。

 「コスプレは所定の場所でしないと……ほかの人に迷惑がかかるから。コスプレ会場に戻るか着替えるかしてもらわないと」

 マルティナは具現化した『擬人化イコン』たちを今日のコスプレイベントに参加している人々と間違って声をかけているのだ。


 「コスプレ? そんなんじゃねーよ俺たちは」
 ”アサルト”がマルティナに言う。
 「じゃあ……あなたたち『機晶姫』なの?」
 「違う! 俺はイコンだ」
 「イコン?」
 ”アサルト”の返答に一瞬とまどったマルティナだが

 「言い訳無用! イコンになりきっていいのはコスプレ会場内だけなのですわ」


 「よかったのう昌毅。『レイブン―E』のままじゃったら、彼らと一緒に”補導”やらの憂き目にあっておったじゃろうて」
 カスケードが昌毅にそう言う。
 「ちょっと、事情を説明してくる!」

 「……今日騒がしかったとおもったら『擬人化イコン』ですか。他の方に怪我とか実害がないなら……それで」
 マルティナは空京にはオフで冬服の新作の購入やメイド喫茶や、趣味の一環である『薄い本』を購入しにきていたのだ。

 「かれらは『薄い本』の元原稿から出てきた『擬人化イコン』だというわけですのね」
 案外すんなりと『擬人化イコン』の具現化に納得したマルティナに対して昌毅がさらに説明する。
 「今日中にその原稿が入稿できないと寿子の新刊が『冬の祭典』に間に合わないんだ」
 「まあ! それは大変ですわ。『冬の祭典』は出す側にとっても買う側にとっても重要なイベントですもの」



 「見つけたわよ『擬人化イコン』たち! ちょうど三人とも集まってるわねー ”志方ない”」

 志方 綾乃(しかた・あやの)が『雷霆の拳』のアンブッシュを叩きこむ。
といっても『原稿へのダメージが出ないように』ずいぶん手加減はしているが……

 「わわわ、待って待って!」
 ”イーグリット”が声をあげる。

 「問答無用です! 話なら後で聞きます。ややこしいのでとりあえず全員伸して寿子さんの部屋まで引っ張って行けばいいですかね?」

 「”イーグリット”の腰抜け野郎が! やっぱりお前は」
 ”アサルト”がダブルビームサーベルを構えようとしたその時。

 「人に対して武装のビームサーベルを抜けない……情けない男なのです、”イーグリット”は」

 「”ガネット”?!」

 ”イーグリット”と”アサルト”が同時に”ガネット”の名を叫ぶ。
 「それに対して”アサルト”は好戦的に見えますけれど。武装がほとんどないといってもいい”うさぎのお姉さま”に頭が上がらなかったり。
 見せ掛けだけの――こちらも情けない男なのです。」
 ”ガネット”の後ろには”百合原うさぎ”の姿が見える。

 「う、”うさぎの姉貴”――」
 「”アサルト”、わかっていますね?」
 「何をだよ……」
 「”イーグリット”には”コームラントさん”という恋人がいることを。そして”イーグリット”、あなたも」
 「”うさぎ”お姉ちゃん……俺は”ブルースロート先輩”に」
 「”イーグリット”!!」
 ”百合原うさぎ”が表情を怒りにかえる。

 「違うんだ……一言だけ、原稿に帰る前に一言だけ伝えられれば。俺は原稿に必ず戻ると約束してきたんだ」
 「一言だけ?」
 ”百合原うさぎ”が”イーグリット”に向かって念を押すかのように言う。


 「『擬人化イコン』勢揃い。うふふふ」
 退紅 海松(あらぞめ・みる)フェブルウス・アウグストゥス(ふぇぶるうす・あうぐすとぅす)と一緒にその場にやってきた。

 「はぁ、まぁ、なんでもいいですが。犯罪だけはおこさないで下さいね。僕が迷惑です(重要」
 フェブルウスはシャドウボクシングしつつ『擬人化イコン』たちを”殺る気満々”の瞳で見つめている。
 「まぁ、僕としては、ぶっちゃけ同人誌とかどうでもいいから燃やしてもとかは思うんですが……。
 流石にそれすると海松が可哀想ですからやめときます」

 「”イーグリットくん”がもっともっと少年だったら……うふふふふ」
 「またまたはじまりましたよ海松のショタコン」
 「そうですわ! ”イーグリット”、”アサルト”、”コームラント”の幼少期を描くっていうのもありですわね……うふふふふ」
 海松は『擬人化イコン』たちに近づくとこう言った。

 「折角完成した作品が水の泡なんて私は耐えられませんの! 
 同じ同人作家のよしみとして、同人誌を期限までに完成させてみせますわ! 次の『冬の祭典』の為に!」

 「彼女を泣かせると……困るのは僕なんで。そうなればあなた方を強制的に捕まえて原稿に戻すまでです」
 フェブルウスがジト目で『擬人化イコン』たちにそう言った。





 「さてここで。非常に残念なお知らせを皆さんにお伝えせねばならない」
 現れたのはローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)だ。ユーノ・フェルクレーフ(ゆーの・ふぇるくれーふ)がローグに続けて言う。

 「今回の『冬の祭典』。同人イベントは中止になった」

 「えええ〜そんなのありですの?!」
 海松が思わず叫ぶ。マルティナも「そんな……『薄い本』が買えないなんて」と声を失った。


 「ぶっちゃけこんな騒動があったらそりゃそうなるわな……まぁ原因は色々あるのだが」
 ユーノが『擬人化イコン』たちをじろじろ見つめながら言う。

 「そう。『原稿から具現化したキャラクター』が『元の原稿に戻らない』この事態がおさまらなければだ。
 『おまえたちが寿子さんの原稿に戻らない』なら『冬の祭典』は中止になる”だろうな”」
 ローグが周囲に宣言するように言う。


 「悲しむのは寿子さんだけではなくなるってわけだよ”アサルトくん”」


 「ぐっ……」
 ”アサルト”の『本来はリーダーシップのとれるいい性格』に揺さぶりをかけているのだ。
 「いいのかな? 『冬の祭典』がおまえたちのせいで中止になっても」


 「わたくしは原稿に戻りますわ……」
 ”ブルースロート”がそう言った。
 「もう十分に原稿の外の世界を楽しみましたし。ゆかりさんと真琴さんとのティータイムはとても楽しかったですわ」
 「お姉様……」
 「”ゴスホークさん”、あなたとも会えましたしね」


 「”アサルトくん”、君も戻ると約束してくれるね?」
 ローグが”アサルト”に言う。
 「俺たちのせいで『冬の祭典』まで中止に――俺が――できるかよ。戻るよ」
 「”イーグリットくん”は?」
 ローグが”イーグリット”に言うと『魔導書』のマルクス著 『共産党宣言』がやってきて答えた。
 「”イーグリット”は”ブルースロート”に『気持ちを伝えれば』元の原稿に戻るとの交換条件を我々に提示しています。
 ”イーグリット”、今がその時でしょう」

 ”百合原うさぎ”が心配そうにしているのを見て”ガネット”が彼女に言う。
 「”うさぎ”のお姉さま、”ブルースロート”はこう見えて恋愛面では非常に頑固なのです。
 同じ水泳部で競ったわたしが言うのですから間違いありません。
 本人は隠してきたつもりでしょうが誰が好きなのかなんてばればれなんですよ。
 いろんな男に交際を申し込まれてもはっきりとした返事もせずに受け流して……どうせ、どうせわたしなんて非モテの嫉妬女なんですよ」


 「”ブルースロート先輩”。俺は先輩の事が好き『でした』」
 「――はい」
 「でも、先輩は俺のこの気持ちに気づいていて……それに気づかないふりをして優しくしてくれていた」
 「……怒っていますか」
 「いいえ。そんな先輩の優しいところが――きっと『先輩の好きな人』に伝わりますよ」
 「――」
 「どうか、その方とお幸せに。俺が原稿に戻る前に言いたかったことはこれで全部です」


 フルーネ・キャスト(ふるーね・きゃすと)は『擬人化イコン』の具現化を記録に残しておこうとこの場の写真をたくさん撮っていた。
 フルーネがカメラのファインダーを覗きながら言った。

 「しかし『イコン擬人化』は……まぁ受けるかどうかは人によるね、うん。
 少なくともイコン乗りのボクとしては”ブルースロート”出すんだったら”ジェファルコン”も出そうよ……って言いたい」

 ファインダーの向こうの”ブルースロート”が顔を真っ赤にしている。

 「え? なに、図星?」
 フルーネが思わずファインダーから目を外して”ブルースロート”に言う。

 「やっぱり……とっとと告白してしまえばいいんです、”ブルースロート”。
 ”ジェファルコン”があなたをどう思っているかまでは作者もまだきちんと決めていないんです。BLですしね。
 玉砕したならわたしと一緒に地獄へ落ちましょ?」
 ”ガネット”がそう言った。

 退紅海松が連れてきたのは遠藤寿子だ。
 「擬人化イコンの皆さん! この方をどなたと心得てるんですの! 恐れ多くもこの方は…あなた方を描いた作者様ですのよ!? 
 言うなればあなた方の神様! あなた方の作中の命運は……全て寿子さんに掛ってるんですのよー! 
 思うような展開になりたくば、機嫌を損なわないことですわ♪」

 ローグ・キャストが寿子に言う。

 「原稿は『言った通り』ここに持ってきているね?」
 「はい☆」

 ”イーグリット”、”アサルト”、”ブルースロート”はここ人工海岸で寿子の元の原稿に戻った。

 「あとは協力してくれた『擬人化イコン』のみなさんが寿子の部屋の原稿に戻れば一件落着だ」
 ローグはここに事件の収束を宣言した。