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リアクション
第四章:VS イーグリット
「……そりゃさ、確かに遠藤さんとはロボ好きの同士だよ。でもな……こんな事態に呼ばれるたぁな」
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は寿子からもらったメールの”イーグリット”設定を読み返しながら独り言ちた。
「だって……寿子さんの同人誌ってBL。んで、この”イーグリットくん”ってのは”コームラントくん”っていう『同性の恋人』が本当はいるんだよな」
あくまでノーマルなエヴァルトは見つけた”イーグリット”にちょっと近寄れないでいた。
「……まぁ、友人の必死の頼みじゃ断るわけにゃいかんけど。仕方ない……『説得』してくらぁね」
意を決したエヴァルトは、右手には大きな石を握って”イーグリット”に歩み寄ってこう言った。
「おまえが”イーグリット”だな。男の恋人居るんだってな。で、今は女性になびきかけてると」
”イーグリット”の目の前で大きな石を『ドラゴンアーツのパワー』で粉々に握り砕いて見せた。”イーグリット”は目を大きく見開いている。
「別にそれをどうこう言う気は無いが……同性愛したいなら手伝ってやるぞ! 大事なモンを握り潰してな!
それが嫌ならさっさと原稿に戻れ。まがりなりにも我が友の力作、台無しにさせるわけにゃいかん」
魔法少女に変身した藤林 エリス(ふじばやし・えりす)が『説得』に参加した。
「愛と正義と平等の名の下に! 革命的魔法少女レッドスター☆えりりん!
恋人がいるのに他の女に心を奪われるような女の敵にはお仕置きよ!」
アスカ・ランチェスター(あすか・らんちぇすたー)も『説得』に参加する。
「”イーグリットくん”? 作品にとって執筆者は神にも等しい存在なんだよ?
魔法少女ポラリスに変身してる時は寿子ちゃん性格変わるからね?
ご機嫌損ねたら”イーグリットくん”、次回作でどんな扱い受けるか分かんないよー?
酷い目に合わされないように、早いところ帰った方がいいと思うけどなー?」
「戦ったらイコンだけに遺恨を残す? この際新刊落ちてもやむを得ないわ。こんな騒ぎ起こした罰よ! 甘んじて受けなさい”イーグリット”!」
かつてイコンも倒したという魔法少女の必殺格闘術「古代シャンバラ式杖術」でエリスは”イーグリット”に向かって行った。
「わわわ」
と”イーグリット”が『説得』と言う名の『戦い』を挑んでくる三人から逃れようとする。
「武装のビームサーベルを人に対して抜けない……情けない男なのです、”イーグリット”は」
「”ガネット”?」
――現れたのはシリウス・バイナリスタの原稿から具現化した『擬人化イコン』、”ガネット”だった。
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【キャラクターDATA:ガネット】
スク水娘。
コームラントの妹……なのだが、あまり似ていないせいか、イーグリットの家の子という噂もあったり。
フクザツな家庭事情と(元機の出番の少なさから)やさぐれ気味。
『どうせ私なんて……』『私と一緒に地獄に落ちましょ?』が口癖。
同じように不遇だったり不幸な人をやたら自分の姉妹にしようとするヤンデレさん。
水泳部のエースだったが、最近”ブルースロート”にその座も奪われ(※1)
更にやさぐれ度に磨きがかかってきた。
武装:元機同様、魚雷(水中専用)とスピア(やっぱり水中専用)
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※1:ブルースロートに限らず、水中適性持ってるイコンは敵視です。おのれ第二世代機!
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「それに今回は”うさぎ”のお姉さままであなたを心配してやってくる始末。”イーグリット”、私と一緒に地獄に落ちましょ?」
「――見せてもらおうか、擬人化イコンの実力を! なんて思ってたんだけど……私たちと戦う気はないわけ? ”イーグリット”」
”ガネット”の登場にだいぶ拍子抜けしたエリスが”イーグリット”に問いかける。
そこに現れたのはマルクス著 『共産党宣言』(まるくすちょ・きょうさんとうせんげん)だ。
「同志エリスは戦う気満々だったようですが、私としては同志イーグリットを説得したいと思っていたところです」
”イーグリット”にやさしく近づいて続ける。
「『魔道書』として、同じく書物が具現化した者として申し上げますと、あなた方擬人化イコンの立場は大変危ういものです。
ただでさえ同志寿子の同人誌は有害図書ですし、『非実在青少年』が実在化したとなれば条例とかで発禁処分になりかねません。
実際に禁書として長く発禁になっていた私には分かりますが、あれは大変辛いものですよ?
それを避けるためにも、至急書籍の世界へ戻られるべきかと思います」
「寿子さんの友人の俺からもお願いするよ。”イーグリット”、寿子さんの原稿に戻ってくれないか?」
エヴァルトが”イーグリット”に言う。エリスが続けて言う。
「作品の主人公のあんたが本に戻れば他の連中も戻ると思うわ”イーグリット”。それが嫌だと言うんなら力ずくでも」
魔道書の『共産党宣言』がエリスを遮って”イーグリット”に言う。
「あなたが原稿に戻ってもらうには……何か条件を希望しますか、”イーグリット”」
「条件?」
「言い換えれば『こうなったら原稿に戻る』と約束できることを私共が提供できないでしょうか、ということです」
「原稿に戻る前に……したいことがある」
「教えてください。ご協力できるかもしれません」
「……”ブルースロート先輩”に俺の気持ちを伝えたい」
「”コームラント”とラブラブなのに今回は”ブルースロート”の美しさに負けてしまっている”イーグリット”なのです。
たくさんのイコンに『愛の告白』をされて追いかけまわされたりしているのに、
今回は自分になかなかなびかない”ブルースロート”を自分が追いかけたいと。
とっとと告白して自爆すればいいんです。”ブルースロート”なら人工海岸にいます。早く撃沈して私と一緒に地獄に落ちましょ?」
「そうなっても構わない。俺は”ブルースロート先輩”に想いを伝えたい」
「女性に告白ってんなら協力してやっていいぞ。それが果せたら……結果はどうあれ寿子さんの原稿に戻ると約束してくれるね”イーグリット”」
エヴァルトが”イーグリット”に言う。
「はい」
「男の約束だぞ、たがえるなよ」
「はい。俺は必ず元の原稿に戻ります」
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