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追章1 Recollection


 冒険を終え、一連の出来事を伝える為に、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は、国軍預かりとなっている巨人、アルゴスを訪ねた。
「お前達も物好きだな」
 飽きることなく訪ねて来るリカイン達に、アルゴスは半ば呆れている。
「そう?
 でもアルゴス君だって、自分が出した情報の結果が気にならない?」
 アルゴスの言っていた遺跡から得た秘宝は『歌』だったこと、またそれを鍵として『門の遺跡』から『空の遺跡』に至り、かつて巨人達がそこを訪ねて、ウラノスドラゴンの為に歌っていたことを、リカインは語った。
「歌が思いを伝える……か。
 歌姫としては興味深い話だったわね」
 けれど、巨人達が世界からいなくなって、ウラノスが巨人達の為にあけてあったのだろうあの場所もまた、『遺跡』のひとつとなってしまった。
「巨人族の歌、興味深かったわ。
 他の土地にも、あんなの残されていないかしらね。機会があれば、調べてみたいと思うのだけど……」
 そしてどうせなら、アルゴスも共に、とも思うが、いつ解放されるのか解らない現状を考えれば、無理な話ではあるだろう。
「それよりも」
 と、リカインは小さく呟いて溜息を吐いた。
 アルゴスはヒョイと身体を傾ける。
 ドカン、とシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)の攻撃が地を割った。
「どうして避けられるのよっ!」
 八つ当たり気味の突撃にしっかり反応されて、シルフィスティは怒鳴る。
「サイズ的にイコンとやりあえるのは分かるけど、渾身のアクセルギア全開にゴッドスピードをかけたのにっ!」
「どちらかといえば、俺は小さい相手との方が慣れている」
 自分と同等のサイズの者と出会うことは稀だと、アルゴスはしれっと言った。
「多数が相手なら適当に受けておくが、単発の攻撃なら、気配で躱せる。
 ましてお前は、どこを狙ってくるのか瞭然だ」
「ううー」
 シルフィスティは地団駄を踏む。
「……ところで」
 リカインが、ふと思い出したように呟いた。
「そういえば最近、あの毛玉を見かけない気がするんだけど」
「……そういえば」
 言われてみれば、とシルフィスティも呟く。
 毛玉とは、リカインのパートナーのケセラン・パサラン(けせらん・ぱさらん)のことだ。
 確か『空の遺跡』から戻る時には一緒にいた……はず、だが……?
 あら? と二人は顔を見合わせた。


◇ ◇ ◇


『聖剣の剣は大変だったけど、ありがとう。こちらも助かったわ。

“地へと根付いたものは奪るな”

 古き良き空賊の格言だそうよ。別に奪いには行かないからご安心を。
 こちらは、『巨人の魔剣』『竜の聖剣』の方で目星がついたから、出掛けてきます。
 それでは』

 リネン・エルフト(りねん・えるふと)からその後届いた手紙を読んで、若いっていいねえ、と都築は呟いた。
『世界樹の聖剣』は、所詮、探していた多くの宝のひとつに過ぎなかった。
 そして最早、それらは過去の出来事に過ぎない。
 リネンの目は、既に未来を見据え、新たな可能性へと向かっていた。



 報告書の作成が終わり、一息つく為にお茶でも飲もうと水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)が自販機に向かうと、先客がいた。
 階級章を見て敬礼してきたので、ゆかりも答礼する。
 その顔を、何処かで見たような気がする、と内心で首を捻った。
 向こうも似たような顔をしている。
 程なくして思い出し、硬直したゆかりに、経堂 倫太郎(きょうどう・りんたろう)はにやりと笑った。
「や、いつぞやのお姉さん……いや、大尉殿でしたか、お久しぶり☆」
「……え、何、どうしたの、カーリー。この人誰?」
 パートナーのマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)が不思議そうな顔をする。
 ゆかりは大声で叫びそうになるのを何とか堪えて、倫太郎を人気の無い場所に引っ張り出した。

「あ、あなた……!」
 彼は、春にゆかりがバーで声をかけられ、そのままホテルに直行した相手だった。
 翌朝目が覚めたらいなくなっていて、抱かれ損、という屈辱的な扱いをされたのだ。
「何故こんなところにいるの!?」
「久しぶりに会ったのにつれないね。オレ情報科なんだけど」
「えっ……」
 まさかこれから同じ科に勤務する相手とは。
 絶句するゆかりを内心面白がりながら、倫太郎は大袈裟に溜息を吐く。
「何だか冷たいなあ、あの夜はあんなに情熱的に愛し合ったのに」
「あなた、逃げておいて何を……!」
「え、あの時の相手? カーリー……」
 酒が入っていたとはいえ、こんなチャラい男に引っかかるなんて……。
 マリエッタは呆れ半分、殺意充分で倫太郎を睨む。
「そんな熱い視線で見つめられても、オレは年下には興味ないし」
「こっちの台詞よ!」
 倫太郎に笑われ、マリエッタは飛びかかりかねない勢いだったが、ゆかりが何とか取り押さえた。
「大尉ってことは、オレも部下になるわけだね。よろしく」
 そんな二人に対し、倫太郎は軽薄に笑い、
「あんたと同僚とか冗談じゃないわよー!」
 とマリエッタの叫びが木霊した。



 連日猛暑が続いているというのに、こんな時に限ってクーラーが故障した。
 大規模プール施設に遊びに行きたいが、休みは一日しかなく、のんびりゆっくりできそうもない。
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、最初こそ仕方なく部屋で大人しく過ごそうかと思ったが、すぐにそんな気も失せた。

「セレン、何やってるのよ?」
 部屋にデッキチェアを持ち込み、リゾート水着に着替えて寝そべり、ヘッドフォンで音楽を聴いているセレンフィリティに、パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が呆れる。
「気分よ、気分。
 どうせ暑いなら、少しでもリゾートで過ごしてる気分になりたいじゃない」
「だからって」
という言葉をこれ以上聞く気もないらしく、両手でヘッドフォンを押さえている。
 まあ、気持ちは解らないでもない。
 冷たい飲み物を持ってきてあげようと腰を上げたセレアナは、腕を取られてそのまま引っ張り込まれた。
「ちょ、ちょっと……!」
 唇を塞がれる。
 そのままデッキチェアに縫い付けられ――

 ――気が付けば、互いに一糸纏わぬ情事後の状態だった。
「何考えてるのよ……」
「何も考えてない……こうやって何も考えずイチャイチャしちゃ悪い?」
「イチャイチャどころじゃないでしょ、バカ……」
 言うと、セレンフィリティは笑って、もう一度、と身体を寄せてくる。
「熱くなりましょうよ、もっと……」
「あ……」
 セレンフィリティの情熱的な手を抵抗無く受け入れて、セレアナの身体が熱く震えた。