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ねこぬこぱにっく!

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■猫を排除する勇者に鉄槌?

「ほら、怖くないぞ」
 イルミンスールの廊下の一角。
 コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が猫に手を伸ばすが、猫は咄嗟に後ろに飛び退くと走って逃げていく。
「何故、何故なのだ……」
 これで猫に逃げられた回数は三桁になる。
 流石のハーティオンもこれは堪えたのか、握り拳をわなわなと振るわせているようだ。
「そりゃ、あんた自分の体格を気にしなさいよ」
 ハーティオンの周囲を飛び回るラブ・リトル(らぶ・りとる)だが、暑いのか気だるい様子を見せている。
「にしてもあっつ〜。 ちょっと肩に乗せ……あつっ、あんたの体が熱過ぎんのよ!」
 いつもの様にハーティオンの肩に乗って楽をしようとするが、ハーティオンの鋼鉄の体にはとてつもない熱が籠っており触れると火傷しそうなほどだ。
「むっ、つまりは私が嫌われているわけではないのだな!」
 はっはっはと笑うハーティオンは元気を取り戻したのか、傍に居る猫の群れが収まっているダンボールへ向かっていく。
 最も、猫が逃げる原因である熱は変わらない為また逃げられそうではあるが。
「……逃げられないぞ!」
 ハーティオンが猫の群れにたどり着いても、猫は微動だにせずその場から動かない。
 逃げられなかったことがうれしいのか、ハーティオンはラブに振り向いてぐっと親指を立てる。
「……騒がしいであります」
「ぬおっ!?」
 突如、ダンボールに詰まる猫の山から姿を現したのは葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)だった。
 猫に囲まれる彼女はどこか幸せそうだったが、ハーティオンに邪魔されたのが気に食わなかったのか少し不機嫌な顔をしている。
「全く、癒しの空間を邪魔しないでほしいであります」
「むぅ、済まない…だが、猫を学園から排除するのが私の役目……なのだっ!?」
 手を伸ばし、猫を捕まえようとするハーティオンは、胴体に突き刺さる様に突撃してきたミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)によってその行動を阻害される。
「猫を排除なんてさせないんだから!」
「そうよ猫を排除なんて許せない!」
 同じくミリアに続いてやってきたティナ・ファインタック(てぃな・ふぁいんたっく)が傍に並び立つと、真っ黒な炎をハーティオンに向けて放つ。
 咄嗟に反応して対応しようとするハーティオンだが、彼は傍で猫と遊ぶセイレム・ホーネット(せいれむ・ほーねっと)の姿に気づく。
「ぬおおっ!?」
 彼女が要る以上、回避という選択肢など彼の中にはない。
 両腕を身を守る様にして構えると炎はハーティオンを包み込み、そのボディを熱に晒していく。
「わわっ、大丈夫!?」
「まぁ、アイツだったら大丈夫よ」
 突然目の前で起きた騒動に驚くセイレムの肩にいつの間にか乗っていたラブは呆れた顔でそう言い放った。
 ただの人間であれば、火傷では済まないダメージなのだろうが、鋼鉄のボディを持つハーティオンならば大丈夫という事はラブにはわかっていた。
 しばらく彼に触れたくはないが。
「はあ、それにしてもどうしようかしら……って、何よあなた達」
 ふよふよと滞空していたラブの目の前で尻尾を振る複数の猫達。
 その視線は小柄、というよりは小動物の様な大きさのラブに一身に向けられている。
「ちょ、ちょっとあたしはおもちゃじゃないのよ!? あ、あっち行きなさいよーっ!」
 ラブが咄嗟に逃げ出すが、猫達はそれに狩猟本能を刺激されたのか一斉に追いかける。
「あはは、大人気だね!」
「う、うるさぁーいっ!」
 セイレムからの助けは望めそうもなく、助けてくれるはずの蒼空戦士は炎に包まれているし、他の人達は猫に夢中だ。
 それでも、ラブは必死に逃げ惑った。


「はっはっは、蒼空戦士はこの程度では倒れんよ!」
「相変わらず頑丈でありますなぁ」
 体中から黒い煙を上げながらも、高笑いするハーティオンと猫に塗れて頬が緩んでいる吹雪。
「ありがとうね、勇者さん」
 セイレムに感謝の言葉を告げられるハーティオンは嬉しそうで、全く気にしていないようだ。
 ラブは猫達におもちゃ扱いされて揉みくちゃにされているが、ミリアやティナが一緒に猫と戯れている為大事に至ることはないだろう。
「やっぱり、もふもふは正義ね、うん」
「こんなに猫さんがいっぱいいるなんて幸せ〜」
 ミリアもティナも、頭に、肩に、膝に猫を載せた状態で猫を撫で、幸せそうにしている。
「お、怒らないかな?」
「大丈夫だよ、翠」
 2人の横で、猫に触れるのに抵抗があるのか積極的になれずに及川 翠(おいかわ・みどり)は様子を見ていた。
「ほら、こんなに可愛いのよ? 一緒にもふもふしましょう?」
 そう言ってティナが1匹の猫を抱えて差し出す。
「えーっ、でもー……」
 まだ抵抗があるのか、拒否しようとする翠だが、猫の視線は真っ直ぐと翠に差し向けられている。
 撫でてくれないのか? 抱っこしてよ。
 と、訴えかける様に。
「え、えいっ!」
 なる様になれ、と猫の頭に手を載せて撫でると、猫は嬉しそうに喉を鳴らしだす。
「わ、わぁ……」
「ほら、抱っこしてあげて」
 ティナが翠に猫を渡すと、猫は嫌がる様子を見せずに幸せそうな様子で翠の腕に収まった。
「可愛い……」
 猫を抱きかかえる事が出来た翠はご満悦な様子で、満点の笑みを浮かべている。
「最初はどうかる事かと思いましたが、よかったですぅ〜」
 のんびりとした口調から慌てた様子は感じられないが、スノゥ・ホワイトノート(すのぅ・ほわいとのーと)はそう言って安心したように猫と戯れるミリア達を眺めていた。
「あらぁ?」
 気が付けば、スノゥの膝の上には一匹の猫が上ってきており、気持ちよさそうに転がっていた。
 彼女がそのまま猫を撫でれば、気持ちよさそうにごろごろと喉を鳴らし始める。
「ふふっ、猫さんはどこか行きたいところはありますかぁ?」
 そう、スノゥが問いかけると、猫は軽く鳴き返す。
「あら、ここでいいの?」 
 帰ってきた意外な答えにスノゥが驚くと、辺りには学校の昼を告げるチャイム音が鳴り響いた。
 それと同時に、辺りの猫が一斉に増えたような気もするが、猫と戯れる彼女達には関係なさそうだ。