リアクション
「なんだ、ゆうこ、きがえてきたのかー」 ○ ○ ○ ハロウィン会場には、子供達に連れられてペットの動物も沢山訪れていた。 「キャン、キャンキャン!」 茶色の毛の子犬――薬で子犬と化した千返 かつみ(ちがえ・かつみ)が、しきりに吠え声をあげている。 「キャン、キャン、キャン!(ナオ! またちょこちょこと走り回って、転ぶぞ)」 一緒に訪れた3歳くらいの男の子――千返 ナオ(ちがえ・なお)に注意を促しているのだが、ナオは周りに気をとられていて、人にぶつかっては転び、自分のマントを踏んでは転びを繰り返していた。 「おかし、たくさん。いろんなひとたくさん、すごいすごい。きゅーけつきさん、ミイラさん〜」 ナオはきょろきょろと不思議そうに辺りを見回している。 「わーい、おかしもらった! じょうおーさまとはんぶんこする〜♪」 「あっ」 走ってきた5歳児のエリオ・アルファイ(えりお・あるふぁい)とぶつかり、ナオは勢いよく転びそうになる。 「キャン!(ナオ!)」 かつみは急いで尚に飛びついて、クッションになってあげた。 「キャン(うぐっ)。キャンキャン…(だから、気を付けろと……)」 「あー、わんちゃん。きょうもきてたんだね。かわいー」 自分の下に茶色の子犬がいることに気付き、ナオはぎゅーっと抱きしめる。 「キ、キャン〜(だ、だからぎゅっとするな、苦しいって……)」 「んー」 むぎゅーっと抱きしめながら、ナオは周りをまた見回した。 自分は吸血鬼の姿で、一緒に遊んでいるエドゥアルト・ヒルデブラント(えどぅあると・ひるでぶらんと)は、フランケンシュタインの姿。 人間体の大人の姿のままのノーン・ノート(のーん・のーと)は、魔法使いの格好をしている。 「うん、わんちゃんもかそーしてあげるね。ほうたいぐるぐるの」 にこおっと目を輝かせると、ナオは近くのゴザの上に置いてあったマスキングテープを手に取った。 「キャン?(え?) キャ、キャンキャン!(まて、それは包帯じゃない、マスキングテープだ!!)」 暴れるかつみをナオはマスキングテープでぐるぐる巻きにしていく。 「かわいいミイラさんです」 「キャンキャンキャン!(だから待てって!!) ……キャン、キャキャン!?(……エドゥはどこ行った!?)」 かつみは必死に逃れようとしながら、エドゥアルトの姿を探す。 「ナオ! わんちゃん!」 お菓子を貰いにいっていたエドゥアルトが、気づいて近づいてきた。 「あ! わんちゃんがぐるぐる巻きだ!」 「えへへ、ミイラさんかわいいでしょ?」 「ダメだよ、べたべたがわんちゃんのけにくっついちゃう」 エドゥアルトはナオの手から、かつみを助け出した。 「キャーン……(あぁ、なんとか助かった……)」 安堵するかつみから、マスキングテープを剥がしていくが。 「ふつうのテープほどくっついてなかったからよかったけど、でも頭のあたりテープと毛がからまってる…………切っちゃおうか」 「キャン……?(え……?)」 シャキーンと、エドゥアルトは工作用のハサミを取り出した。 「キャ、キャン、キャンキャンキャンキャン! ギャーーーーン!!(待て待て待て!! 助けてくれノーン!!)」 「だめだよー、じっとして」 「じっとしてて! あぶないよ」 エドゥアルトとナオ、2人にかつみは押さえつけられる。 そして、テープと一緒に頭の髪もジョキジョキと切られていく……! 「ギャンギャンギャーーーーーーン!!」 ちなみにエドゥアルトは不器用である。子供の頃は器用、なんてことはなく、当然もっと不器用だ。 「ちょちょちょと待て!」 大きな鳴き声に気付いて、ノーンが慌てて駆けてきた。 「エドゥ、ナオ、二人して何やってる!?」 「テープ、けにくっついちゃったから、きってるの」 「わんちゃんけがしないように、おさえてるんだ」 得意げに言う2人から、ノーンはハサミを取り上げる。 「わかった、あとは私に任せろ」 「キューン」 開放されたかつみは、地べたにぐったりとへばりつく。 「あーあ、毛切られたな……に、人間に戻ったら他の部分で隠れる」 「……クゥン?(……ホントか?)」 「た、多分」 「キュゥー……ン……」 かつみの頭部の毛はざくざく切られてしまっている……。 「しょうがない、飾りの魔法使いの帽子でもかぶってろ」 ため息をつきつつ、ノーンは飾りの小さな魔法使いの帽子を外すと、かつみの頭にぽふっと被せた。 「わんちゃんどうしたの」 「げんきないみたい」 ナオとエドゥアルトが心配そうにかつみを見て、身体を撫でた。 「キュン、キューン……(大丈夫だ、毛は大丈夫じゃないみたいだけど……)」 かつみは弱い鳴き声を上げる。 「ナオ、エドゥ、子犬は走り回って疲れたからちょっと寝かしてあげような」 ノーンはそう言って、かつみをゴザへと運んであげる。 「うん」 「わかった」 2人は素直に頷いて、一緒にゴザに向かって。 子犬を撫でながらお菓子を食べたり、仮装した人々の姿を見て楽しく過ごすのだった。 ……ただ、ふとノーンが目を離すと、どちらかが消えてたりしていて、その後も大変だったけど! |
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