空京

校長室

戦乱の絆 第3回

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戦乱の絆 第3回
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リアクション


宮殿内・玉座の間3

「今だ! アイシャ!」
 タイミングを見計らい、クレア・シュミットが叫ぶ。
「ええ! クレア。
 あなたは下がって!」
「だが、一瞬なのでは? 拘束できる時間は?」
「数秒という意味ではないわ、長くはありませんが……」
 アイシャは精神統一をはじめた。
「国家神」の力の総てを、アイリスに傾ける。
 アイリスの体は聖なる光に包まれ、そして捕らわれた。
「な、何?」
「アイリス……これが、私の、神としての力」
 はあ、と大きく肩で呼吸をしつつ、アイシャは振り返りざまに。
「さあ、皆さん、早く!
 今のうちに、ネフェルティティ様を!!」

「そうはいかない」
 アイシャ達の前に、ロイが立ちはだかった。
 背後に、北斗。脅える赤毛のヴァルキリー――ネフェルティティを抱えている。
「人質が見えないのか?
 全員下がるんだ! 早くっ!!」
 
 だが彼の見えないところで、既に少女の救出作戦は始っていたのだった。
 
 ■
 
「下がるのは、お前だぜ!
 ロイ・グラード!」
 北斗は突然、光条兵器「光条両手剣」でネフェルティティの縄をほどく。
 そのままベルフェンティータに手を引かせて、西側へ逃れさせた。
「っ!? 裏切るのか? 北斗!!」
「おあいにく様!
 こっちはこれが目的でね!!!」
 アイリスは動けない。
 ロイ達は慌ててネフェルティティの後を追いかける。
「おっと!
 アイリスの動きさえ止まっちまえば、こっちのもんだぜ!」
 【バーストダッシュ】で駆けつけた【西シャンバラ・ロイヤルガード】葛葉 翔(くずのは・しょう)は、【白兵武器】のグレートソードを使い、大剣の平らな部分で【なぎ払い】を仕掛ける。
 とっさの攻撃に、ロイ達はすっ転ぶ。
「アリア! 救出組は任せたぞ!」
「ええ、分かったわ! 翔クン」
 アリア・フォンブラウン(ありあ・ふぉんぶらうん)がロイ達の攻撃を、盾を使い【オートガード】行使しつつ、救出部隊の援護をする。
「さあ、ワタシの後について!
 ネフェルティティさんの下に!!」
 
「では、我が【龍雷連隊】はネフェルティティ様の救出に当たるぞ!」
 レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)が三郎に呼ばれる。
「皆、我に力を貸してくれっ!」
「まかせてくださいねぇ、隊長代行」
「賀四郎とジルはサポートに」
「分かってるでござるよ」
 甲 賀四郎(かぶと・かしろう)は眩しそうに三郎を眺めた。
「隊長代行の晴れ舞台、きれいに飾ってみせるでござる」
 鉤爪を掲げる。隠形の術で姿を隠す。
 
 ネフェルティティはベルフェンティータに手をひかれ、西軍に向かって走る。
 その距離は、ロイ達とのちょうど中間だ。
「悪いが、足止めさせて頂きますな!」
 ジル・ド・レイ(じる・どれい)は火術で彼等の足元を狙う。
 たたらを踏むロイ達。
 その前から不意に鉤爪が現れて、行く手を阻んだ。
「隠形の術かっ!」
 ロイ等は歯ぎしりして、だが追いかけ続ける。
 ファイアストームの壁。
 ロイ達とネフェルティティとの間に築かれる。
 レティシアがネフェルティティに肩を貸しつつ、ベルフェンティータを気遣う。
「今のうちに、あちき達へ。早く!」
「お、お願い!!」
 必死で逃げてきたベルフェンティータは、レティシアにネフェルティティ救助の2番タスキを渡して、力尽きた。
 だが、ここで彼女に倒れられても、それはそれで犠牲が増えるだけだ。
「あなたも! これで、味方の方へ!!」
 ミスティはもう一度ファイアストームを放って、目眩ましする。
 その隙に、サッと現れたのは【西シャンバラ・ロイヤルガード】如月 正悟(きさらぎ・しょうご)だった。
「ネフェルティティは俺が、アイシャに。
 君達は、ベルフェンティータさんを!」
「お願いしますねぇ」
「アイシャさんは、祭壇に!」
 レティシアは正悟にネフェルティティを託しつつ、祭壇を指さす。
 エミリア・パージカル(えみりあ・ぱーじかる)は周囲を警戒しつつ、パワーブレスで正悟の攻撃力を高める。
 念のために。
 アイリスはいつ動き出すのか分からない。
 そのアイリスに向かって。
「アイリスさん……」
 正悟は一度だけ振り向いた。
「誰の意思で戦っている?」
「…………」
 アイリスは無表情で答える。
 答えたくても口が動かないようだ。
「けれど、自分の意思ではなさそうだね?」
 彼女は操り人形。
 正悟は溜め息をつくと、ネフェルティティを連れ去る。
 祭壇近くに、バーストダッシュで駆けつけてくる4番手の美羽と理子の姿が見えた。
 手前に2本の【忘却の槍】を手にしたコハクの姿。
「さあ、来やがれ!
 今度はへまはしないぜ!!」
 ぐるぐると振り回す――。
 
 ■
 
 美羽と理子に肩を貸され、祭壇下に到着したネフェルティティは、明らかに憔悴しきっていた。
 だが「回復」を促す意見に向かっては。
「時間がありません!
 儀式を優先しましょう!」
「戴冠式」を決行する旨を伝えた。

 ローブを着たアイシャと、美しき赤毛のヴァルキリー。
 2人の少女は、聖なる祭壇に向かう。