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リアクション
■ティアマトの剥製との戦闘1
一方、たいむちゃんタワー内。
たいむちゃんタワーの内部は理由は分からないが広大な空間が広がっていた。
「忘れられたぬいぐるみに流れ星が落ちて誕生した命。それがゆる族よ」
立川 るる(たちかわ・るる)が、夜空の綺麗な星を見上げながら、つぶやく。
「何言ってんだ、お前」
五芒星侯爵 デカラビア(ごぼうせいこうしゃく・でからびあ)が、藪から棒なパートナーの発言に突っ込む。
デカラビアの目的は、ティアマトの剥製をパクって、
パラミタパビリオンを盛り上げることだったのだが。
「あなたもゆる族になれるわ! 流れ星としてティアマトの中に入るのよ!」
「だから何言って……ぎゃああああああああああああああああああ!?」
るるは、エコバックを振りかぶると、デカラビアに思いっきり叩きつけた。
高く打ち上げられたデカラビアが、流れ星のように、
闇に潜む巨大な影に激突する。
巨大な影……ティアマトの剥製に、デカラビアはめり込んだ。
「うーん、今日もお星さまを堪能!……あれ?」
しかし、当然のことながら、ティアマトの剥製がゆる族になったりはせず、
地響きを立てながら、るるに近づいてくる。
「ゆる族になったなら、るるのパートナーに
……って、きゃーーーーーーーーーーー!?」
るるは、ティアマトの剥製に追いかけられ始めた。
■□■
それを補足したイコンがいた、
端守 秋穂(はなもり・あいお)とユメミ・ブラッドストーン(ゆめみ・ぶらっどすとーん)が搭乗する、
セレナイトである。
「これが、ティアマトの剥製……?
大きい……剥製とはいえ、強そうです……!」
何しろ全長263メートルである。
イコンとは比べ物にならない大きさだ。
「誰か追いかけられてるよー」
ユメミが、レーダーを見て、るるを発見する。
「ええっ!? 早く助けなくちゃ!」
秋穂が慌ててセレナイトは急接近する。
同時にユメミは付近のイコンに救援を要請する。
それに応じて、
シフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)・ミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)が搭乗するアルヴィトル、
柊 真司(ひいらぎ・しんじ)・ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)搭乗のバイヴ・カハ、
狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)・尾瀬 皆無(おせ・かいむ)が乗るバイラヴァも、急いで駆け付ける。
「でかいな。
でも、的が大きければその分、当たりやすいはずだ!」
真司が新式アサルトライフルで、ティアマトの剥製を撃つ。
グオオオオオオンッ!
攻撃を受け、ティアマトの剥製は咆哮を上げる!
「実はイコンの実戦は初めてだけど、
今こそ俺様の秘儀『神出鬼行』が役立つ時!」
皆無の技により、
バイラヴァがティアマトの剥製の後ろを取った。
「ランちゃーん、ほめてほめてー」
「だから調子に乗るなって」
乱世が、グレネードを放り投げる。
(やめろおおおおおおおおおおお!!!)
実はデカラビアが攻撃を受けるたびに悲鳴を上げているが、
イコンの稼働音や、攻撃の轟音で聞こえないのだった。
「アレだけの大きさ……核になっているモノがあるならば、
ソレを破壊するのが早そうですが……。
首や手、爪などの攻撃手段を奪っていくしかないでしょうか」
シフが、冷静につぶやく。
「あるいは、内部から攻めるか」
レイヴンTYPE―Eである、
アルヴィトルの機動力であれば、
内部への突入もできるかもしれない。
そう、シフは考えたのだった。
「脱皮した皮の剥製ならば、内部は空洞のはず!」
「いけええええええええ!
あははははーっ!」
ミネシアが出力を全開にして、テンション高く叫ぶ。
巨大な剥製に、破岩突を叩き込み、無理やり機体をねじ込む。
しかし、巨大な戦艦の壁に穴をあけて、1機で乗り込むようなものである。
「な……広いですね!」
シフは、ティアマトの剥製内部の空間の広大さに驚愕した。
■□■
ティアマトが発見されるとさらに増援のイコンが駆けつけて、戦闘に参加した。
御凪 真人(みなぎ・まこと)とセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)搭乗の、
パラスアテナはヴリトラ砲を構える。
「こんなのにこっちの攻撃は豆鉄砲かもしれませんね。
ですが、いくら大きくても2足歩行ですからね。
背後から膝裏に攻撃を集中させれば、転倒させることもできるかもしれません」
真人が、作戦を実行すべく、
同じく背後を取っていた乱世たちと連携する。
「……幻の展示品ですけど、傷つけても良いんでしょうかね」
「ティアマトにまた脱皮してもらえばいいんじゃないの?」
ふとつぶやく真人に、セルファが言う。
相沢 洋(あいざわ・ひろし)と乃木坂 みと(のぎさか・みと)の駆る、
{ICN0003067#シュトルム・ブラウ・リヒター}も、ためらわずに攻撃する。
「剥製を破壊しても止めるぞ。
あの大きさで計算すれば戦略兵器並みの使い方ができる」
「さすがに剥製とはいえ巨大すぎますね。これは厄介です。
個人的な感情で言わせてもらえば昼間はデートしたかったですが。任務が大事ですから」
みとは、洋の任務への情熱にあきれながらも、支援を行う。
「いくぞ、みと。火器管制システム調整しろ。狙撃するぞ」
「火器管制機構、調整よし。ダメージコントロール異常なし。
後は洋さまの腕次第です」
スナイパーライフルで、パラスアテナたちが攻撃し続けた、
膝裏をさらに狙う。
爆音とともに、壁のような鱗がはじけて舞う。
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)とダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)搭乗の
レイも、リミッター解除したヴリトラ砲でティアマトの剥製を狙い撃つ。
「私が見つけた特別展示品、絶対返して貰わなきゃ」
「もはや、破壊するしかないようだがな」
「そんなあ。バラバラにしてから、
つなぎ合わせて再展示するの?
せっかくきれいだったのにー!」
ルカルカは、ダリルの冷静な指摘に、いやいやをする。
「こうなったら、なるべくきれいな状態で無力化しなくちゃ!」
ルカルカは、決意を新たに、
いつものような冷徹な戦士の目で、トリガーを引いた。
冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)と冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)は
アーカディアからティアマトの様子を観察していた。
「全長263メートルって……
たいむちゃんタワーって……そんなに、大きかったっけ……?
入りきれないって……レベルじゃ、ない気が……」
日奈々が、冷静な指摘をする。
「まぁ……ティアマトは、
適当に……撃っても当たると、思いますけど……
他に、何かいるかもしれないから……
そういうのにも、注意しておきますねぇ」
「近づきすぎたら、転倒に巻き込まれるかもしれないからね。
注意しないとね!」
日奈々と千百合が声をかけあう。
「どんどん、ミサイル撃ちますよぉ〜」
(うわあああああああ〜!!)
デカラビアの叫びは爆音でかき消え、やはり誰にも聞こえていないのだった。