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リアクション
「生きる活力」を鼓舞せよ3
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は、
ワイバーンのりゅ〜ちゃんに跨り、
“龍頭”へと対峙した。
「あたしはいつもどおり、ただできることを全力でやるだけだよっ!」
ミルディアの強い決意に、
パートナーの和泉 真奈(いずみ・まな)が、
ため息をつく。
「ふぅ……仕方ありませんわね……」
「ミルディの手綱持ち」を自認する真奈だったが、
今回の状況は自分に荷が勝ちすぎているかもしれないと感じていた。
(ですが、わたくしにできることをさせていただきますわ。
せめてものお仕事として、
突撃ルートの算定くらいはさせていただきますね)
ミルディアの性格から、“龍頭”に突っ込んでいくのは止められない。
それに、真奈も、パートナーのことを信じている。
「じゃあ、行くね」
「気をつけて、ミルディ」
「行くよ、りゅ〜ちゃん!」
ワイバーンのりゅ〜ちゃんが、返事の咆哮をあげる。
そして、飛翔したミルディア達は、
龍の咆哮で、生への想いを叫ぶ。
「あたしは、あたし達はッ!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
雄叫びとともに、“龍頭”の中へ、
ミルディアとりゅ〜ちゃんは、突っ込んでいった。
「あたしの通う百合園女学院は友達がいっぱいいるし、
おしゃべりは楽しいし、
ヴァイシャリーの街の散歩や買い物やスイーツ食べ歩きはとっても楽しい!
つまり生きるってものすごく楽しいことなんだよ!」
言葉にしきれない想いを叫びに変えて、ミルディアは龍の咆哮を轟かせた。
「うわあああああああああああああああああっっっっっっ!!」
パートナーの咆哮を聞き、
真奈が、目を細め、つぶやく。
「人の未来は無限なのですわ。
無限に希望を馳せるのは素晴らしいことではなくて?」
「キシャー!!」
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)も、咆哮をあげ、
桜井 静香(さくらい・しずか)をかばう。
ロザリンドとテレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)の搭乗する
SHIZUKAが、
“龍頭”の攻撃から、本物の静香のイコンを守った。
「ありがとう、ロザリンドさん」
「これがハイパーランサーの役目ですから!
私は静香校長の盾となり、
皆さんの攻撃のサポートをします!」
「ロザリンドさん、ほんとに心強いよ、ありがとう」
静香の言葉で、ロザリンドの気合いがチャージされていく。
「ん、ロザリー、私、まだよくわかってへんのやけど。
わかりやすく教えて」
テレサの問いに、答えるように、ロザリンドが叫ぶ。
「まだまだ勉強とかお仕事とかやらないといけないことあります。
そしてまだ見たことのない世界を見たり、聞いたり。
たまに失敗したりしながらでも、最後まで皆に自慢できる、幸せを噛み締めながらの人生。
それを愛する人や友人達と歩みたいのです。
ですから。
必ず生きて、世界を滅びから救います!!」
テレサは、ぽん、と手を叩いた。
「なるほど、よっしゃー、やっと理解できたで!
つ・ま・り。
イケメンゲットするまで死ねるかという意地を
あの“龍頭”とかいう奴にぶつけたらいいってことやね」
「イケメンゲットって……」
静香が苦笑する。
「ハイパーランサー、闇を蹴散らしに突撃してきます!」
ロザリンドが宣言し、静香の機体の前を前進する。
「気をつけて、ロザリンドさん!」
静香が、恋人に応援の言葉を送る。
「超静香様スペシャルの雄姿をとくとご覧ください!
キシャー!
キシャー!
キシャー!」
「イケメンイケメンイケメンイケメンイケメンイケメン、
あ美味いもんも食べたいしドラマの続きも気になるしあの店のアクセまだ見終わってないし
……絶対に死ねるかー!!」
ミサイルや20ミリレーザーバルカンを撃ちこみながら、
弾数が尽きたら次々とパージして、
ロザリンドとテレサのSHIZUKAが突撃していく。
「ハイパーランサー!!」
ロザリンドが打った弾を追いかけるように、
SHIZUKAの槍を構え、突っ込む。
グオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
ダメージを受け、“龍頭”が咆哮をあげる。
「よし、今のうちに私達も突入だ!」
透玻・クリステーゼ(とうは・くりすてーぜ)が、
パートナーの璃央・スカイフェザー(りおう・すかいふぇざー)とともに、
“龍頭”へと突入していく。
透玻は、アトラスの力を活性化し、何重もの相乗効果を生み出そうとしていた。
パラミタで書かれた、
あるいは、パラミタについて書かれた書物。
今まで、透玻が読んできた、それらの書物に書かれた、
印象深い言葉、パラミタでの思い出、これから叶えたいという希望を、
思い切り、透玻がぶつける。
「“未知なる大地パラミタで、色んな場所を、色んなものを見たい”
……私自身もそう思うし、数多の者が思う願いだ!」
多くの書物に共通していたのは、
新たなる世界での、
希望に満ちた、未来への期待であった。
わくわくする冒険への気持ちを、
透玻は、「生きる活力」として感じ、
また、新しいことを知るということも、
「生きる活力」だと考えていた。
「私は、これからも、新しいことをどんどん知っていきたい!
多くの書物を読み、
それらの知識をもっともっと深めたい!」
透玻が、書物への愛を叫ぶ。
璃央は、そんなパートナーを見て微笑み、
今の世界での幸せを想う。
(私は……かつてパラミタで死に、
地球で透玻様と出会って復活、幸せを得ました)
ヴァルキリーの璃央は、五千年前の戦いで戦死している。
その後、魂となって彷徨い、透玻の元へとたどりついたのだ。
(パラミタで彼女が幸せを得られるのは
私にとっても幸せであり
彼女と共に過ごせる時間は、私にとって大事な思い出なのです)
だからこそ、この世界にまた滅びてほしくない。
一度、自分の死を経験した璃央は、そう願う。
「私の中の幸福と思い出も……
アトラスの力に恩恵を重ねる力となってほしいものです」
透玻と璃央の想いが、「生きる活力」となって、
この地で戦う者達の力となる。
スウェル・アルト(すうぇる・あると)と
パートナーのアンドロマリウス・グラスハープ(あんどろまりうす・ぐらすはーぷ)も、
“龍頭”の内部に突入していた。
(私、あまり大きな声を、思い切り出した事は、ない。
……でも)
周囲の様子を見て、スウェルは思う。
「皆、とても、気持ちよさそう。
気持ちいいことは、きっと、『生きる活力』になる。
……アンちゃん」
スウェルがパートナーを見つめる。
「生きる喜びですか!
ならばアンちゃんにもお任せです!
アンちゃん生きる喜びに満ち溢れていますよ!」
アンドロマリウスが、にっこり笑ってうなずく。
「アンちゃん、とってもわくわくしてるんです。
ザナドゥからパラミタへやって来てで
パラミタからニルヴァーナにも行って」
「うん。
いろんな世界で、私もたくさん出会った。
アンちゃん、ライオリン、クジラ。
皆、皆、たくさんの喜びを与えてくれた」
「ええ、そうですとも」
スウェルに、アンドロマリウスがうなずいた。
「世界は美しく、とても愛しい。
醜いものもあるでしょう、でもそれすらも愛しい」
スウェルも、大きくうなずく。
深呼吸して、2人は声を合わせて叫ぶ。
「愛してるよ、パラミタ」
「愛してますよ、パラミタ!!」
スウェルとアンドロマリウスのパラミタへの愛が、
「生きる活力」として、“龍頭”の内部に響き渡る。
出虎斗羅の特攻天女で駆けつけた
泉 椿(いずみ・つばき)と
パートナーの緋月・西園(ひづき・にしぞの)も、
“龍頭”の内部に突入していた。
「パラミタに来ていろんなことがあった。
仲間たちとの冒険、ミナの美味い飯、
大好きな御上先生……とても楽しかった、嬉しかった。
あたしは、みんなを守りたい!
そして校長、死なせねえからな!」
パラ実生である椿は、石原校長の身も案じている。
アヒル園長を抱きしめて、
椿は決意を新たにする。
「よーし、勇気百倍だ!」
アトラスの力を感じながら、椿は前を見据える。
「あたし達の想い、あたし達の喜び、とくと見せてやるぜ!」
軽身功で、“龍頭”の内部を縦横無尽に走り、
鳳凰の拳を叩き込む。
また、椿は、パートナーの緋月が襲われないよう、
特技の要人警護で気を配っていた。
「椿のために……パラミタは壊させない。守って見せるわ」
緋月も、また、パートナーのことを考え、援護していた。
(美味しいものではミナに叶わないけど、
椿と一緒にいたい渇望なら負けない。
私にもできることがある。
椿に守られるだけじゃなくて、私も椿を守るのよ)
ギャザリングへクスで高めた魔力で、
緋月は“龍頭”を攻撃する。
また、次々に湧いて出てくる黒い獣から、
パートナーを守るために範囲魔法を使っていた。
「サンキュ、緋月!
あたし達は負けない。絶対負けないぜ!」
「ええ」
椿の言葉に、緋月は力強くうなずいた。
椿と緋月、そして皆の、ありったけの想いが、
“龍頭”の力と対決する。
「生きる活力」は、他の仲間達の力になり、
その相乗効果で、契約者達の力をどんどん高めていったのだった。
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