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創世の絆第二部 最終回

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創世の絆第二部 最終回
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“龍頭”への総攻撃

“龍頭”への攻撃を、契約者達は、さらに強めていった。

薔薇の学舎の上社 唯識(かみやしろ・ゆしき)は、
パートナーの戒 緋布斗(かい・ひふと)とともに、
ストークの稀緋斗に搭乗し、
あせる心を押さえて、操縦桿を握った。

「落ち着いて、周囲の動きを見よう……」
唯識は、薔薇の学舎校長のルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)による指揮を受け、
機晶ブレード搭載型ライフルを狙いすます。
「敵は巨体なんだ。よく狙いをつければ……!」

グオオオオオオオオオッ!!

ダメージを受けた“龍頭”が咆哮をあげる。
「よし、畳み掛けるぞ!」
ルドルフが叫び、薔薇の学舎のイコン達が一斉に射撃を行う。

緋布斗は、パートナーの様子を見て、
「へええ」
と、感嘆の息をもらした。
(緊張しているように見えますが、
なかなかやりますね)
そして、自分も、この戦場に意識を集中させねばと思う。
「訓練は多少していますが、特殊な空間ですので、
ストークの性能をきちんと引き出せるようにしなければ」
そうつぶやいて、緋布斗は冷静に“龍頭”の弱点を探す。

(この感覚……どこか懐かしいような)
緋布斗は、黒い獣に照準を合わせながら、不思議な想いに捕らわれていた。
いつか、どこかで、こういった乱戦に、自分も身を置いていたような。
まだ、はっきりとは思いだせないが。
「唯識、行きますよ!」
「うん!」
緋布斗は敵の進攻をパートナーに告げ、唯識は黒い獣に引き金を引いた。

「アイシャ様も今必死で祈っている……祈りだけで終わらせないよう、かたちにしたい。
一人一人が立ち向かわないといけないんだ」
唯識はルドルフを守るように後方を支援し、
自分ができることを全力で尽くそうとしていた。

一方、董 蓮華(ただす・れんげ)
スティンガー・ホーク(すてぃんがー・ほーく)の搭乗する、
フィーニクスの鮮紅は、
【シャンバラ国軍総司令】である、
金 鋭峰(じん・るいふぉん)の護衛を行っていた。

「団長に届く攻撃は、ただの一撃も許さない!」
ツインレーザーライフルを撃ち、黒い獣を蹴散らす。
闇の牙や爪で、団長のイコンを少しでも傷つけさせまいと。

(私は団長の盾。
団長がいれば、何も怖くはないわ!)
“龍頭”の巨大な姿に生物の本能のような恐れを感じつつも、
蓮華は気持ちを落ち着かせた。

一方、スティンガーは、
冷静に、黒い獣の塊が出現する場所を計算していた。
「10時の方向、仰角20度、距離100」
突入に最適と考えられる場所を一気に攻撃すること。
それを意図して、
多弾頭ミサイルランチャーの目標をモニターに表示する。
「回避願います!」
蓮華がミサイルランチャーを発射する。
紅のイコンからミサイルが降り注ぐ。
「着弾まで5秒、2、1、着弾確認」
爆音とともに、黒い獣の群れが、黒煙をあげながら消滅する。

「よくやった。このまま全軍進軍!」
団長は蓮華にねぎらいを伝え、
“龍頭”への突入路を切り開く。

「とんでもありません、団長!」
団長の言葉がうれしくて、蓮華が舞い上がる。
「戦場だぞ、ここは」
スティンガーがパートナーにツッコミを入れる。
「わ、わかってるわよ」
蓮華は答えて、さらに、団長を必ず守りきると、決意を新たにした。

一方、シボラの世界樹アウタナは、
4本の足で地を蹴って、
“龍頭”へと迫る。

【猟犬隊】と名付けられた、シャンバラ教導団のイコン部隊、
エールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)
アルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)
搭乗するプラヴァー(デフォルト)
ラック・カーディアル(らっく・かーでぃある)
イータ・エヴィ(いーた・えびぃ)
搭乗するアルカナ
そして、クローラ・テレスコピウム(くろーら・てれすこぴうむ)
セリオス・ヒューレー(せりおす・ひゅーれー)
搭乗するフォトンが、アウタナを支援する。
クローラは、
ドッグズ・オブ・ウォーの傭兵団のイコン2機も指揮し、
全部で5機のイコンが、
アウタナを護衛していた。

「アウタナに届く攻撃は盾で防ぐか撃ち落せ。
最悪でも直撃させてはならない」
クローラは、戦闘に立ち、味方に指示を飛ばす。
アウタナの戦力を重要視しているからこそ、
そして、味方を信頼しているからこそ、できる作戦だ。

【シャンバラ教導団少尉】でもあるクローラは、
部下の兵士10人も指揮している。
彼らには、教導団の飛空艇に乗り、黒い獣の撃ち漏らしを処理してもらっている。

アウタナを支援するため、
アルフが普段通りの軽口をたたいて見せる。
「いやいや。ここで世界が滅ぶとだな。
俺の華麗なる【美女1000人とのデート計画】が台無しになるだろ。
まだまだデートし足りねぇし。
出会って居ないバンビちゃん(女の子)達が星の数ほどいるんだぜ。
皆が俺との出会いを心待ちにしてくれているっていうのに」
これもまた、「生きる活力」を活性化して、皆に力を与えるのは事実だったが。
「何故そんなに自信満々なんだ……」
エールヴァントはそうつぶやく。
もっとも、パートナーの性格はこの状況で役立ちそうなので、
本気で突っ込むことはやめておく。

「こんな所で世界を滅ぼす訳にはいかねぇ。
バレンタインデートが俺を待つ!
その次はホワイトデーで、
そのまた次はエイプリルフールだ!」
「エイプリルフールにデートってなんだよ」
「ちょっとドッキリするようなハプニングがあるようなデートだよ。
もっとも、俺の愛は真実だけどな」
「……」
アルフの発言に、エールヴァントは頭痛をこらえた。

他方、
ラックも、アウタナの護衛として、周囲への警戒を十分に行っていた。
「猟犬が3匹でさしずめケルベロスってところか……食べこぼしは見逃さないよ」
マジックブレードで、接近していた黒い獣を薙ぎ払う。
「食べこぼし?
そんなもったいないことワタシが許さないよ!」
食いしん坊なイータも、アトラスの力を活性化させるため、
食べ物への想いを「生きる活力」に変える。
「おにぎり、ウィンナー、卵焼き、ラーメン、唐揚げ、パスタ、焼肉、サラダ、
お味噌汁、パン、焼き芋、ポテチ、丼もの、カレー、お煎餅、ミルク、煮魚、肉まん
……穀物、お肉、お魚、野菜、
そして美味しい食べ物の皆……ワタシに力をわけてちょうだい!」
「生きる活力」が、味方を鼓舞し、勇気や力に変える。

その傍ら、
ラックは、タロット・カードの1枚を見てつぶやいた。
「世界のカード……まだこの世界は終わる時じゃない、
滅びるのは俺達の中にある絶望の気持ちだけで十分だよ」
世界のカードが意味するのは、完成。
完成した後は、また、新たな始まりがある。
「俺達はまずはこの作戦を完成させる……。
だから、アウタナを必ず守ってみせるよ」

「よし、アウタナを“龍頭”に接敵させるチャンスだ!」
クローラが、パートナーのセリオスに合図する。
セリオスが、ヴィサルガ・マートラを発動させる。
「覚醒」状態となったストークのフォトンが、
“龍頭”に猛攻をかける。
「これが『覚醒』の力か……!」
セリオスが感嘆する。
「ああ。これなら一気にいける!」
クローラもうなずく。

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

“龍頭”が一瞬の隙を見せたタイミングで、
アウタナが4本の足で大地を蹴り、“龍頭”に体当たりする。

すさまじい振動が、周囲に伝わっていく。

アウタナがそのまま、“龍頭”を4本の足で蹴りつける。
「アウタナ……有難う……」
セリオスがつぶやく。
クローラがヴィサルガ・プラナヴァハをさらに発動させたが、
フォトンにも、
クローラとセリオスにも、自由に動くだけの力は残っていなかった。
だから、アウタナや仲間達のことを信頼して、
その背を見送った。

【猟犬隊】のアウタナへの支援のおかげで、
それまで散発的だった“龍頭”内部への突撃が進んでいく。



牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)は、
生身の身体で、ワッフルを頬張っていた。
「ワッフル食べ放題の作戦とか初めて聞きました、俄然やる気が出ますね、もぐもぐ」
生クリームアーモンドチョコを食べ終わって、
指先についたクリームをなめとる。
ちなみに、これで3枚目だ。
「たまにはいいですよね」
おそらく、これからの戦いで、カロリーはあっという間に消費されるだろう。
アルコリアは、
万能武装サポートツール・Nで強化された、
ナラカの魔杖をしゃきりと構える。
パートナーのナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)に合図すると、
ナコトは、深い笑みを浮かべた。
「イエス、マイロード。
マイロードへの想いは常にMAXですわ」
ナコトが、叡智の聖霊の力で、アルコリアに魔力を注ぎ込む。

「きゃっほー! ナラカに帰れー、いえーい!」
アルコリアが、
“龍頭”に生身のままで躍り掛かる。
地獄の天使の翼がひらめく。

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

“龍頭”がうなり声をあげる。
アルコリアは、視界の端にアテムの姿を認める。
(生身で行く人が多くて何よりです)

ナラカの魔杖を、“龍頭”へと突き立てる。
闇の力が血しぶきのように、アルコリアの身体へと降り注ぐ。
「闇だけじゃないんですよ」
アルコリアは、ホワイトアウトの光と冷気の力で、闇の力を押し返そうとする。

「素適ですわ。マイロード」
喜悦に満ちた瞳で、ナコトはアルコリアを見つめ、「生きる活力」を活性化させる。
そして、アルコリアを魔法で火力支援する。

レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)
ミア・マハ(みあ・まは)は、
キラーラビットのラーン・バディに搭乗し、
“龍頭”と対峙していた。

レキは、百合園女学院を卒業した後のことを思い描く。
(百合園を卒業したら、未知の世界へ探検しに行くんだ。
まだ見ぬ『もふもふ』を求めて。
だからここでニルヴァーナが滅びてもらっちゃ困るんだよ)
「生きる活力」をこめて、
ニンジンミサイルを“龍頭”に打ちこむ。

グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

“龍頭”が、猛り狂うように咆哮する。

「レキ、ミサイルは数発しか撃てんし、外すでないぞ」
「もちろん、わかってるよ!」
ミアの支援を受け、レキがラーン・バディ
高速機動と回避上昇で、“龍頭”への距離を縮める。

「いけええええええっ!!」
レキは、ダメージ上昇を乗せたエアブラスターを次々と打ちまくる。

「邪魔をするでない!」
接近してくる黒い獣は、ミアがウサ耳ブレードで両断する。
ミアは、レキが全力で戦えるよう、
機体の無駄なエネルギーを使うのはなるべく避けて、ペース配分を行っていた。

(わらわの未来はレキと共にある。それが希望じゃ)
ミアが、アトラスの力を活性化させる。

こうして、“龍頭”への全力攻撃は続いていた。