空京

校長室

創世の絆第二部 最終回

リアクション公開中!

創世の絆第二部 最終回
創世の絆第二部 最終回 創世の絆第二部 最終回 創世の絆第二部 最終回 創世の絆第二部 最終回

リアクション


イアペトスの心臓

一方、イアペトスの心臓に向けて、
“龍頭”の内部へと突撃する者達がいた。

朝霧 垂(あさぎり・しづり)
ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)の搭乗する、
武者ケンタウロスの黒麒麟に、
紫月 唯斗(しづき・ゆいと)
エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)の搭乗する、
流星の魂剛がまたがる。

その姿は、嵐が猛攻するかのようであった。
「「三位一刃、三位一馬、一騎六魂!」」
垂と唯斗が叫ぶ。
ヴィサルガ・プラナヴァハが同時に発動する。

「いくぜ!」
「我等は絶望を断つ者なり!」
垂と唯斗の声が重なる。
「真なる騎神剣帝、推して参る!」
【真・騎神剣帝】には、大きな目的があった。
黒麒麟が駆け抜け、
魂剛が、
神武刀・布都御霊を振るう。
「一騎となった我らに……絶てぬモノ無し!!」
イアペトスの心臓への道をふさぐ、闇の力を一気に切り裂く。
「“龍頭”を通し滅びを望むものへ我らの力を叩き込んでやれ!」
エクスが唯斗を鼓舞する。

「行け、垂!」
「おう!」
そして、唯斗の言葉に、垂がうなずく。

「なあ、イアペトス。
たとえおまえが絶命していて、
その身体のみを利用されている状態だとしても……。
いや、なら余計にその闇から解放して、安らかに眠らせてやりたい!!」

「それぞれが親子の力を使ってお互いを滅ぼさせようとするなんて、
絶対におかしいよ!」
垂の叫びに、ライゼもうなずく。

イコン用光条サーベルに、
アトラスの力を込めて、命の光を注ぎ込む。

「パラミタを守る為……愛する者を守る為……そして親子の絆を守る為、
俺は『闇』を絶つ!!」
「生きる力を受け取って!」
垂とライゼが、イアペトスの心臓を解放しようと、突撃する。

心臓につきたてられたイコン用光条サーベル……黒麒麟の角は、
闇の力を切り裂いていく。
だが。
「くっ、答えてくれ、イアペトス!」
イアペトスの心臓は、それだけでは闇の力から解放することはできない。

「どうしても、助けることはできないのか!?」
悲しみに、垂は叫ぶ。
「もはや、イアペトスの解放のためには、
闇の力をすべて破壊するしかないということか……」
唯斗が歯噛みする。
「だが、他に手立てがないのならば……。
俺達にできることをすべてやろう」
「ああ。我等の想い、無駄にはせぬ。
それが、唯一の道ならば」
唯斗に、エクスがうなずく。

「……そうだな。
イアペトスを救う道がそれだけだというなら」
垂が、闇を見据える。
「俺達にできることをやるだけだ!」



「私、この戦いが終わったら教員試験受けるんだ」
「祥子さん、それって死亡フラグというものじゃありませんか?」
宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)の言葉に、
パートナーのイオテス・サイフォード(いおてす・さいふぉーど)がツッコミを入れる。
「目標を口にするのも、『生きる活力』の活性化よ」
祥子は、百合園女学院で教育実習を受けている。
「まあ、フラグは立てたら折るものだとききますし、頑張りましょう」
イオテスがうなずく。

パールヴァティーを{ICN0004410#北斗星君}にモードチェンジして、
祥子達はイアペトスの心臓へと突撃する。
大形ビームキャノンを連射し、ダイアモンドクラッシュを叩き込む。
「まだちゃんとした先生になってないし、
セイニィやパッフェルの結婚式にだってでたい。
パートナーたちともっと色んな所に行きたいし
平和な世の中にしてティセラを安心させたい。
だから……邪魔をするなぁぁぁっ!!!」
「まだエリュシオンにもコンロンにもいっていませんし、
地球ももっと見て回りたいですわ」
祥子とイオテスの「生きる活力」、
未来への希望が、想いの奔流となって、イアペトスの心臓へと注ぎ込まれる。

ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)
強盗 ヘル(ごうとう・へる)も、
アルマイン・ハーミットに搭乗し、
イアペトスの心臓に迫る。

(アーデルさん……力を貸して下さい)
ザカコが、想い人への気持ちを「生きる活力」へと変える。
「全く、カレーの匂いに包まれた状態じゃ死ぬ気にもなれないぜ」
ヘルが、コックピットに持って来た、
【スーパー鳥人型ギフト】の槍を見つめ、つぶやく。
「なんで持ってきちゃったんですか」
「俺も一応、ゆる族だからぶち込んでやろうと思ってな」
ザカコのツッコミにヘルが答える。
コックピットはカレーの匂いで充満していた。

ザカコは、気を取り直し、
イアペトスの心臓に集中した。
「この世界を支えてくれている皆の意思、
そして自分達の生きる意思を全てぶつけます!」
「ガキ共が安心して眠れる世界の為に……地獄の底に帰りやがれ!」
ヴィサルガ・プラナヴァハで一気に近づくと、
アルマイン・ハーミットのコックピットから
ヘルが【スーパー鳥人型ギフト】をイアペトスの心臓に向けて放り投げる。
「愛する人……アーデルさんがいるこの世界は絶対に滅ぼさせません!
自分達は生きて未来を掴んでみせます!」
ザカコが叫ぶ。
【スーパー鳥人型ギフト】は光輝き、アトラスの力を受け取り、威力を増して、
イアペトスの心臓に突き刺さった。

永井 託(ながい・たく)
パートナーの那由他 行人(なゆた・ゆきと)は、
生身のまま、イアペトスの心臓に迫っていた。

「こんなものに、僕らの世界を奪わせはしないよ」
仲間達、そして、大切な、愛する人のために。
託は、すべての想いをかけて、
一点突破でイアペトスの心臓へと迫った。
守りは行人に任せて、ただ、一心に攻撃だけに集中する。
もし、自分の攻撃だけで足りなくても、
皆の力を合わせれば、きっと、闇の力に打ち勝てると信じて。
「目の前の人達……。
それくらいは守ってみせるよ。
それが、きっと、僕の持つ力の意味だからねぇ」
託はアトラスの力を受けた攻撃を、イアペトスの心臓へと叩き込んだ。

「まだ俺はヒーローになれてないんだ!
それに、あいつとまだまだ一緒にいたいから、負けてたまるか!」
行人も、想いを「生きる活力」へと変えて叫ぶ。
「託にぃは俺が全力で守る!
だから、その隙に、心臓を討って!
俺の力は、きっと、護るためにあるんだから!」
行人の正義感、ヒーローへの憧れの気持ち。
それらも、みんな、「生きる活力」へと変わる。
その力を受け取って、託は全力で攻撃する。

(生存への希望か……。
俺は自身の死など特に気にはしなかったが……今は違う。
俺には生きなければならない義務がある……)
レギオン・ヴァルザード(れぎおん・う゛ぁるざーど)は、
傭兵として生きてきた過去を持つ。
しかし、今は、大切な存在がいる。
(……俺にとっては、それだけで戦う理由になる!)
レギオンの表情にはっきりとした感情は浮かばない。
しかし、その秘めたる想いは、「生きる活力」となる。

パートナーのカノン・エルフィリア(かのん・えるふぃりあ)も、
レギオンの背中を見ながら決意する。
「こんな所で終わらせないわ!」
カノンは思う。
(まだまだやりたいこととか見たいものとかいっぱいあるのよ。
レギオンや皆とも楽しい時間をたくさん過ごしたい)
「絶対に負けないんだから!」
鬼払いの弓を引き絞ってカノンは叫ぶ。

「……!」
それに合わせるように。レギオンが白狗の刀を振るう。

一方、
アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は。
石原肥満との約束を思い出していた。


「さあ、若人よ。一つ、パラミタを救ってきてはくれんかな」
すぅぅ〜っと大きく息を吸い込んだアキラは、
雄叫びのような返事をあげた。
「ぃいよっしゃあああああああ任しとけええええええ!!
3つでも4つでも5つでも何度でも救ってやるぁああああ!!」
そして、石原校長の手をがっしと握りしめる。
「だから爺さん!
お前も俺たちと一緒に戦え!
一緒に戦って、俺たちがパラミタを救うのを見届けて、
新たな未来の始まりを見届けて、そしてから死ね!!」
「おお、おお、心強いのう。
君のような若者になら、安心してパラミタを託せるというものじゃ」
「だから、気が早いんだよ、爺さん!
新たな未来を見せてやるから、それまで待ってろ!」

「ピイッ!」
ジャイアントピヨが、同意するように鳴き声をあげた。
セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)も、深くうなずいている。

「ピヨ! お前、もう一度飛べるか!?」
大きなダメージを受け、傷ついたジャイアントピヨだが、
力強く、アキラの言葉に答えた。
「ピイイッ!!」
短い翼を広げて、アキラを背に乗せる。
「よし、なら、俺を連れていってくれ。あの蒼空の彼方まで!」


「ピイ、ピイイッ!!」
「ああ、わかってる。俺は必ず戻ってくる!」
アキラは、ジャイアントピヨに、
“龍頭”突入まで送ってもらい、
イアペトスの心臓へと迫っていたのだ。
右手にフロンティアソード、左手に蒼空の絆を握り締め、
【葦原明倫館総奉行】ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)達とともに、
アキラは突撃をかける。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、
これからもずっと一緒に冒険するんだああああああああああああああああああ!!」
光条兵器のハリセン『ドウケシノタマシイ』を振りかぶり、
イアペトスの心臓に想いをぶち込む。

「見るでありんす、イアペトスの心臓が!」
突入組を指揮していたハイナが、
イアペトスの心臓を指し示して叫ぶ。
全員の力が結集して、
「生きる活力」によって、闇の力が打ち払われていく。

闇が浄化されるのと同時に、
イアペトスの心臓も、浄化されて、ゆっくりと消えていく。

「開放、されたのか、イアペトス……?」
垂がおずおずと口にした言葉は、やがて、確信に変わった。

イアペトスは、闇の力の呪縛から解き放たれ、
苦しみから解放されたのだ。