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創世の絆第二部 最終回

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創世の絆第二部 最終回
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インテグラル・ルークへの道
 黒い砂嵐の吹き荒れる無彩色の荒涼とした北ニルヴァーナの大地。砂に磨かれた奇岩の立ち並ぶ中に巨大なゾディアック・ゼロの姿があった。そのゾディアック・ゼロの手前には、クイーンを飲み込んだルークが立ちふさがる。そしてゾディアック・ゼロとともに現れたインテグラル・ポーンとイレイザーたちが、巣を守るスズメバチの群れのごとく集いている。アラムは黙ってストークのスクリーンに映し出されたゾディアック・ゼロの姿を見つめていた。その周辺に彼に協力を申し出た契約者たちが集う。クイーン救出メンバーたちもアラムたちから少し離れた場所で様子を伺っていた。
「ここはひとつ、あたいが一肌脱ぐとするか」
 マハカーラのコクピットからアラムやクイーン救出部隊の様子を見ていた狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)が呟く。私怨のためなら世界を滅ぼしてもという、ニビルの身勝手さに彼女は怒っていた。個人的にヤツに鉄拳制裁を加えたいという思いは強くあったが、それよりもまず目の前に立ちはだかる邪魔者――インテグラル・ポーンとイレイザー――の対応が先だと判断したのだ。
「クイーンやウゲンを助けようとしている奴らが『望み』を叶えるためには、まずは邪魔する雑魚共を止めねえといけねえよなあ。
お節介の更にお節介役、果たさせてもらうぜ。陽動と、できるだけ多くのザコども一掃を兼ねるぞ」
パートナーのグレアム・ギャラガー(ぐれあむ・ぎゃらがー)は乱世とは対照的にクールな表情を崩さなかった。
(僕は世界を構成する1パーツにすぎない。だがそれ故に、いや、だからこそ理不尽な滅びを甘受することは出来ない。
 愛や希望や世界救済なんて大それた目的じゃない。……乱世のような義憤や義侠心でもない。
 僕は、世界の維持と、自身の存在意義の為に戦うのだ)
グレアムは怒りに燃える乱世の横顔を見やり、口に出してはこういった。
「準備完了。いつでも」
セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)のイコン、女帝キシオムバーグから通信が入る。
「どうやら、露払いを引き受けることにしたようだな? 俺も協力させてもらう」
「おう、あの邪魔くさいイレイザーだのポーンだのを蹴散らしてやろうぜ」
乱世が返す。2機のイコンを中心として、対イレイザー、ポーン部隊が攻撃を開始した。
 ストーク、マハカーラがハンドガン、グレネードでイレイザーの群れを蹴散らしながら駆ける。グレアムが偵察を使い敵に最大のダメージを、味方機には有利になるルートを算出し、僚機に情報を刻々と伝えていく。乱世は機晶ブレードでポーンに向かう。鬼神を思わせる姿のポーンの眉間に剣戟がヒットし、ポーンは痙攣しながらその場に転がった。傍らにはキシオムバーグが控え、マハカーラを抜け目なく援護していた。最も敵の多いエリアに突っ込んだ2機の周辺に、ポーンとイレイザーが文字通り群がってきた。
「このくらいでいいかな」
グレアムが周囲をモニターして乱世に言う。
「いい感じに集まってくれたじゃねえか。……これからあたいらは覚醒を使ってこいつらをぶっちぎる。
 味方までふっ飛ばしたくないから、気をつけてくれよ」
乱世が僚機に警告を発した。
「覚醒攻撃の後、ここから抜けるんだよな? そしたら俺らも最終兵器を使う。速攻離脱してくれよ」
「了解」
セリスの言葉にグレアムが応じる。それまで黙っていたマネキ・ング(まねき・んぐ)がにやりと笑う。
「と、いうことは……アレを使うのだな?」
「まさか本当にアレを使う事になるとはな……まぁいいさ! やるなら思いっきり派手にやろう」
マハカーラが覚醒の輝きに包まれる。そこにグレアムのリミッター解除のパワーも加わって、周囲のイレイザーやポーンを次々と屠る。押さえ込みもうと機体の近くに来ていたポーンたちが次々とその攻撃の餌食となった。リミットタイムが近づき、突撃を使って乱世たちは戦線を離脱した。
「フフフ……どうやら犬コロより我の技術の方が圧倒的に優秀だと証明する時が来たようだな。
 真の支配者とは……座して敵を圧倒するッ!」
マネキ・ングが哄笑と共に、『墜天』を発動させる。
 ……説明しよう。『墜天』とは高性能追尾の大型ホーミングミサイルを360度、全方位に一斉発射して大規模破壊を行う必殺装備である。ただし重すぎてイコンがまともに動けず、一発が異常に高価で商人しかミサイルの購入が出来ないという、お財布にも恐ろしい最終兵器の一種である。その攻撃の様が天が墜ちてくるように見えた為、この通称が付いたという。
 発射の瞬間はまるで女帝キシオムバーグが爆発したかのように見えた。周囲のイレイザーもポーンも巻き込んで、ミサイルがそこここで炸裂した。
「……露払い、ほぼ完了だな。いや冗談抜きに凄まじい効果だな……」
「……お支払いも凄まじいぞ」
セリスの言葉にマネキ・ングが返した。