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創世の絆第二部 最終回

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創世の絆第二部 最終回
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「生きる活力」を鼓舞せよ1

“龍頭”へと対峙する契約者達は、
「生きる活力」を鼓舞することで、仲間の支援を行おうとしていた。
シボラの地は、“龍頭”により、闇の力に侵され、
特に、“龍頭”にほど近いこの地は、空気に闇の力が溶け込んでいるようであった。

「石原校長!
まだ遺品を受け取るには早ええんだ!」
弁天屋 菊(べんてんや・きく)は、拳を握りしめた。
アトラスの力を受け取ってドラゴネットに変身し、
ドラゴニュートガガ・ギギ(がが・ぎぎ)から
ギギ ガガに変身したパートナーの背に乗り、
菊は周囲へと呼びかける。

「あたしは弁当屋の菊!
みんな、このアトラスの力を込めたオニギリを受け取ってくれ!
具は出陣式の三肴だ!
『敵に打ち、勝ち、喜ぶ』!
これで験を担いで“龍頭”なんざぶっ飛ばしちまおうぜ!」

打ち鮑、搗ち栗、昆布を具にしたオニギリは、
クレープのように紙で包み、その場で食べやすいよう工夫されている。

「うおおおおおおおっ!」
ギギ ガガが、雄たけびをあげながら、
猛スピードで戦場を駆け巡る。

菊は、すばやくオニギリを契約者達に渡していった。
「お前ら、これ食って気合入れろよ!」
「ありがとう、お前もがんばれよ!」
菊からオニギリを受け取った契約者達が口々に礼を言う。
(これで、石原校長の寿命も延びるはずだ。生きてくれ!)
菊は、パラ実校長石原肥満(いしはら・こえみつ)への想いを心の中で叫んだ。

「オニギリか。オレも負けていられないぜ!」
渋井 誠治(しぶい・せいじ)は、
輸送用トラックの麺屋渋井 トラック店を繰り、
“龍頭”へと迫っていた。
「“龍頭”だかイアペトスの心臓だか知らないが、
美味しいラーメンを食べる喜びを知らないなら教えてやるぜ!」
麺屋渋井 トラック店から、
ラーメンの香りの湯気とともに、チャルメラの音が鳴り響く。

「見ろ、これがラーメンアサルトライフルッ!」
誠治は、麺屋渋井 トラック店に備え付けたアサルトライフルの弾に、
ラーメンを仕込んでいた。
「これが醤油の力!」
醤油ラーメンの弾丸が“龍頭”に向かって炸裂する。
「これが味噌の力!」
続けて味噌ラーメン。
「そして、これが塩と豚骨の力だ!」
塩ラーメンと豚骨ラーメンが発射される。

「オレが、オレたちが、ラーメンだ!」
ラーメンへの愛を叫びつつ、
誠治は次々に「替え玉」を発射していく。

その様子を、パートナーの
ヒルデガルト・シュナーベル(ひるでがると・しゅなーべる)は、
小型飛空艇で周囲の様子を警戒しながら見守る。

「誠治、むこうにお腹を空かせた仲間がいるわ!」
ヒルデガルトが、パートナーに呼びかける。
大食漢のヒルデガルトの勘で、
なんとなく味方のお腹が空いているかどうか察知したのだ。

「了解、行くぜ!
ラーメン一丁!」
誠治が、お腹を空かせた仲間の元へと急行する。
「ありがとう! 俺は醤油をたのむ!」
「ありがとう、私は塩で!」
「あいよっ!」
威勢よく答え、誠治がラーメンを茹でる。
ラーメンのおいしそうな香りが、戦場へと漂った。

「香りならカレーデース!
カレーも負けていられまセーン!」
アーサー・レイス(あーさー・れいす)が、
カレーゴーレムと名付けられたセンチネルを操り、
超巨大鍋でカレーを煮込む。
「精のつきそうなものならなんでも煮込むのデース!」

「おおっと、世界樹の苗木ちゃんが鍋に投入されたわ!」
パートナーの日堂 真宵(にちどう・まよい)が、その様子を実況中継する。
「次はイレイザー・スポーンRよ!
まさに、すべてを煮込みエネルギーを取り込んだカレー!」
「アトラスがカレーの力を得れば
スーパーアトラスに目覚め、
影響されたドージェがカレー祭りを始めて
奇跡が起こるのデース!
さあ、カレーを食べなサーイ!」
アーサーが、カレーへの妄執を「生きる活力」に昇華して叫ぶ。
「カレーを食べなサーイ!
リファニーさんも生きてカレーを食べるのデース!
そして、カレーを食べた後のリファニーさんの血をたっぷり吸いたいデース!
その柔らかそうな腕や胸や腿から!」
吸血鬼のアーサーがリファニーへの想いを口にする。

「ふふふ、この様子を放送すれば、
世界を破滅するカレーを流行らせることができるはずよ!」
アーサーを利用して自らの陰謀も達成しようとする真宵だったが。

「適当な具材がもっと必要デース!
真宵もある程度は経験を積んだ契約者デース!
カレーになりなサーイ!」
「え、ちょっと冗談じゃ……きゃあああああああ!?」
アーサーは、真宵もカレー鍋に放り込んだ。
近くにいた契約者達も、何人か巻き添えを食う。
「ヤバゲな厨二病患者の真宵もカレーにすれば改心するのデース!
ゲルバッキーもカレーを食べれば改心しマース!」
アーサーがカレー鍋のおたまをカレーゴーレムでかき混ぜ言った。


「あたしにとっての生きる活力、それはハンバーガー!
ハンバーガー!
ハンバーガー!
ハンバーガー!」
シャノン・エルクストン(しゃのん・えるくすとん)が、アーサー達に対抗するように叫ぶ。

「ハンバーガーほど素晴らし食べ物はない!
安くて美味しくて、都会なら大抵の場所に店がある!
それに、中の具材を変えれば何通りもの味を楽しめる!
チーズバーガー、
ベーコンバーガー、
アボカドバーガー、
コロッケバーガー、
チキンバーガーなどなど、数えきれないバーガーがあるのです!
全てにおいて完璧な食べ物。パーフェクトフードといっても良いでしょう!」

そう言いつつ、シャノンはハンバーガーにかぶりついた。
「バーガーは知識の源!
見えました、この戦いの活路!
バーガーの力によってアトラスの力を活性化し、
契約者達の力を極限まで高めるのです!
石原校長は若者に力を託すと言いました!
つまり、『若者の食べ物』であるハンバーガーを食べることによって、
さらにアトラスの力は活性化されるのです!」
ハンバーガーを食べたシャノンは血中ジャンク濃度がアップしたらしく、
さらにハンバーガーへの愛を轟かせた。

「ハンバーガーの友であるアテムさんも頑張っているんです。
グレゴさんも頑張ってください!」
シャノンはパートナーの英霊グレゴワール・ド・ギー(ぐれごわーる・どぎー)に声援を送る。

「我は唯進むのみ。
敵めがけて一直線に進んでいき、
我が剣で持って心の臓を破壊する。ただそれだけのことだ」
黒い獣が行く手を阻むが、
グレゴワールは剣で斬り捨てる。
「我には神の加護がある。
信仰こそが生きる意味。正義の実行こそ我が務め。
故に、我はただ突き進み、いかなる障害も敵もただ粉砕するのみ」
グレゴワールは勇猛果敢に進軍していく。
「神がそれを望んでおられる」
黒い獣が断末魔をあげて、グレゴワールの剣で弾き飛ばされた。

オニギリ、ラーメン、カレー、ハンバーガーという食べ物の力で、
皆の力が鼓舞されているのだ。
「おお、これが食い物四天王じゃ!」
シボラの国家神アテムが、
感嘆して叫ぶ。
たまたま食べ物が四種類だっただけともいえるが。
「そう、四という数字には意味があるのです!」
数式に基づいた魔術を旨とするシャノンが叫んだ。

「食欲……そうね、生物にとって、
もう一つの重要な欲求を見せてあげるわ!」
崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)が、
妖艶な笑みを浮かべ、服を緩める。

一方、パートナーのマリカ・メリュジーヌ(まりか・めりゅじーぬ)は。
「私もまだやり残した事があります。
好きな人の事も、主の事もあります」
じっと空を見上げ、「生きる活力」を鼓舞しようとしていた。
「皆さんと平和な時間を過ごしたい、ただそれだけですが
しかし平穏無事と虚無を同一視するわけには参りません。
それこそが何よりも得がたく、変えがたい幸せでもあると、私は思います」

「うふふ、駄目ね、身体が昂ぶってしかたないわ。
濡れる心と身体……。
決戦前に、私と『戯れて』はくれないかしら?」
気づくと、マリカの後ろへと、亜璃珠が迫っていた。
「え、亜璃珠様!?
ちょっと、ひゃうっ!?」
「あら、ご主人様の言うことが聞けないの?
もっとも、身体の方は正直なようね。ふふふ……」
「いけません、駄目ですってこんなところで……。
だからそこは〜!」

地面にくずおれたマリカを背に、
亜璃珠は、
サクユリの名を持つ海竜、サクへとまたがった。

「さあ、サク
一緒に生きる力を示しましょう。
爪でも牙でも、使えるものはなんでも使って、ね」
亜璃珠が、サクの、鱗に覆われた身体をなでる。
鱗の隙間に指をさしこまれ、
海竜は喜悦ともとれる雄叫びをあげた。

「行きましょう、どこまでも!
生きる活力、それはすべてを肯定する力……。
禁忌などない、本物の自由よ!」
亜璃珠はサクと一心同体となり、
闇の力をまき散らす、“龍頭”へと突っ込んでいった。