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第三章  地下からの先行

【先行部隊・地下】のメンバーは以下のとおりである。
高月 芳樹(たかつき・よしき)アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)ユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)閃崎 静麻(せんざき・しずま)○{SFL0007888#レイナ・ライトフィード)}○九条 瀬良(くじょう・せら)佐々木 真彦(ささき・まさひこ)出水 紘(いずみ・ひろし)カミラ・オルコット(かみら・おるこっと)樹月 刀真(きづき・とうま)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)

 遺跡の側面をたどるようにして進むと、十年前に地盤沈下で山崩れを起こした崖がある。そこを下れば、山崩れの衝撃で出来たヴォル遺跡の地下通路へと出れる。
「……ここが……例の遺跡か……かなり古いな……。……足場が悪いな……ユニ……危ないぞ……おぶってやる……」
「え!? いいですよっ。これくらいならなんとか、大丈夫です」
 クルードの後をユニが慎重に付いていく。
「いや〜、ユニさんは偉いですね。誰かさんにも見習ってもらいたいものです」
 刀真が抱きかかれている人物を横目で見ながら言う。
「……刀真、あまり揺らさないで。乱視になってしまうわ」
「こんなところで本を読まないでください!てか月夜さんも自分で歩いてくださいよ!」
「……運動は苦手なの。知ってるでしょ?」
「なんだ、刀真。甲斐性ねーな。どうだよ月夜、なんなら俺が抱えてってやるぜ?」
 刀真と月夜が言い合っているところに瀬良が割り込む。
「……私はこれで結構よ。それよりあっちの人に手を貸してあげたらどうかしら?」
 月夜が指差す先には肩で息をし、必死に付いてくる真彦の姿があった。
「はあ、はあ。助かります〜」
「真彦かよ。駄目駄目、俺は女の子専門なの。ヤローは自分で歩きな。ま、よせ、寄りかかってくるな! ぎゃ――――!」
 真彦の巨体を瀬良が支えきれず、二人は急勾配を転げ落ちていった。
「こうして二人は帰らぬ人となりましたとさ」
「こらこら。なに勝手に殺してるんですか」
 二人に向かって合掌をしている紘に、カミラが突っ込む。
「なんだか緊張感がないわね」
「いやいや、それだけ余裕があるってことでしょ。頼もしい限りだね」
 呆れたように腕組みをしているアメリアの肩に、芳樹が手を置いて微笑んだ。

 一行が地下の進入口にたどり着く。中は内壁が淡く光っておりうすぼんやりとしていた。先は通路が続いており、土砂などが入り込んでいてかなり荒廃が進んでいる。そして床には大人一人余裕で入れるくらいの穴がところどころ点在していた。
「おい、あそこでチカチカしているのはなんだ?」
 遺跡を進んでいるところ、静麻が遠くの暗闇で切れかけた蛍光灯のように光っているものを見つける。
「これはシャンバラ古王国時代のトラップ用魔法陣ですね。まあ陣が崩れて機能していませんが」
 片膝をついて観察しているレイナの上から静麻が覗き込む。
「さっき【通信班】から聞いたやつか。しかしその崩れた魔法陣の断面……まるで床をえぐりとったみたいになってるな」
「人為的なものなのか、もしくはモンスターの仕業か。いずれにせよ油断禁物ですよ、静麻」
一行は罠と穴に注意しながら遺跡の奥を目指した。途中、魔法陣があったが、どれも先ほどのものと同様に陣を崩され機能しなくなっていた。しばらく行ったところで少し拓けた部屋に出る。ここも床にはいくつかの穴が開いていた。
「部屋の隅! なにかいるぞ!」
 芳樹が叫ぶ。一行に緊張がはしった。
 陰の落ちている隅から這い出るようにそれは出てきた。
「魔法陣……?」
 アメリアが問うように呟いた。それは先ほどから見かける崩れた魔法陣に類似していた。魔法陣が生き物みたいに動いているのだ。まるでなにかを探しているようだ。
 そのとき、魔法陣が落とし穴の間を縫うようにしてものすごい速さで近づいてくる。
「気をつけろ! 触れるなよ!」
 みんなが散開する。すると魔法陣は分裂し、おのおのに向かってくる。
「うわぁ! 駄目だ〜」
 機動力のない真彦が魔法陣に追いつかれてしまう。魔法陣が真彦の足元に滑り込むと大きな穴と変わった。真彦が落ちていく。
「ク、クルードさん! 助け――」
次に捕まったのはユニだった。
「ユニ!」
 落ちていくユニに向かって手を伸ばすクルード。なんとか手は取ったものの彼も一緒に落ちてしまった。
 紘、カミラはバーストダッシュを使って魔法陣を振り切ろうとするが、それを使うには部屋が狭かった。それにそこら中にある穴のせいで足場の確保もままならない。
 魔法陣が新たな動きを見せる。影の触手のようなものが生え、紘の足に巻きつき穴へと引きずり込んだのだ。同じようにしてカミラも捕まってしまう。
 瀬良、刀真、月夜、静麻、レイナ、次々と魔法陣に呑み込まれていく。
 残りは芳樹とアメリアだけだ。しかしいくつもの魔法陣の強襲を辛うじてかわしているアメリアの足に触手が絡みついた。
「アメリア!」
 ほうきに乗って魔法陣の触手から芳樹が助けようと手を伸ばすもあと少しのところで届かない。アメリアも消えてしまった。
「くそっ。一体……なんでこんなことに」
 魔法陣が一つに集まり床いっぱいの大きな穴へと変わる。そして影が伸び上がり芳樹を丸呑みにする。
「うわああああああああああああああああ」
誰もいなくなり、部屋には静寂がおとずれた。そして魔法陣は何事もなかったかのようにもとの位置へと戻っていった。