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都市伝説「闇から覗く目」

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都市伝説「闇から覗く目」

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SCENE・4 夜の光零にて 
 
「コウジ」
 バトラーの高谷智矢(こうたに・ともや)は、はしゃいで前を走る剣の花嫁の白河童子(しらかわ・どうじ)を追いかけていた。すっかり暗くなっているが、複雑な細い道が多い光零の街は、童子にとっては冒険心を刺激される場所だった。
 しかし、ふいに横道から小型飛空艇に乗ったセイバーの荒巻さけ(あらまき・さけ)が出てくる。
「コウジ! 危ない!」
キューーー!
 高谷の悲鳴に近い叫び声と急ブレーキの音が重なる。咄嗟にさけはハンドルを大きく逸らし、童子に当たる寸前で止めることができた。
「あ、危なかったですわ」
 さけは冷や汗をかきながら、ぐったりとハンドルへ凭れかかった。
 高谷は怯えて立ち尽くしている童子を抱き締める。
「良かった……。また……コウジまでいなくなってしまうのかと怖かったんですよ」
「ご、ごめんなさい」
 童子は泣きそうになりながら言う。高谷はしばらく童子の背を撫でていたが、未だにぐったりハンドルに凭れ掛かっているさけに気づき、声を掛ける。
「申し訳ありません。お怪我はございませんか?」
 さけは高谷の呼びかけに、やっと顔を上げる。高谷は心配そうに顔を曇らせている。
「ごめんなさい。お姉ちゃん、大丈夫?」
 童子も一緒に心配そうにさけを見上げている。
「え、ええ! わたくしは大丈夫ですわ。でも、何か明かりを点したほうがいいですよ」
 さけは小型飛空艇から降り、高谷に言う。
「ああ! 気づきませんでした。それでは、コウジお願いします」
「うん!」
 童子の体が輝き、光条兵器の金色のスナイパーライフルが浮かび上がる。高谷はスナイパーライフルを持ちながら、恥ずかしそうに言う。
「実は……まだ射撃の腕は未熟で、あまり使う機会はないのですが……」
「へぇ〜、ライフルですか……誰か来ましたね」
 暗闇の中、ライフルは懐中電灯よりも明るく輝いている。その明りに誘われ、二台のバイクが近づいてくる。ただし、バイクは押して歩いている。
「おお! シーリルと同族がいるぜ。しかも、光条兵器も俺と同じ銃型だぜ。ちっと形が違うけどよ」」
 近づいて来たのは、ソルジャーの国頭武尊(くにがみ・たける)と剣の花嫁のシーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)だった。
「なあ! これ見てくれよ!」
 武尊は高谷たちの所まで来ると、自分のバイクの前車輪を見せる。前車輪のタイヤを見ると、ぺしゃんこになっている。
「まあ、何を踏んだんですか?」
 さけが訊くと、シーリルは肩を落として答える。
「本当は『黒喜館』に行くつもりだったんだけど、なぜか道にまきびしが撒かれていて……」
「ひどい事をする人もいますね。もし、コウジのような子供が踏んだら大怪我ですよ」
 普段は穏やかな高谷も眉をひそめる。武尊は怒りに声を震わせながら言う。
「絶対に犯人はこの街にいるはずだぜ! シーリルは買い物を楽しみにしていたのに! 見つけ出してボコボコにしてやるぜ!」
「武尊、もういいのよ。こうやって武尊と一緒に歴史ある街を歩くのも楽しかったわ」
「シーリル……」
 優しく微笑むシーリルに武尊は感激してイイ雰囲気になるが、
「そうだわ! わたくし、パトロール中に修理屋を見かけましたわ。案内しましょう!」
 さけの明るい声で雰囲気は霧散した。
「でも、夜だから閉店しているんじゃないかしら?」
「こまけぇことは気にすんなよ! 店は閉まる時間でも、寝てはないだろ。行こうぜ!」
 迷子だった高谷たちも一緒に行くことにした。