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◇第五章 お祭りにおけるゲームの達人 ―3― ◇

 ――まだまだ続きそうな気配もあるが、色々な諸事情で物語は加速していく。

 そこは型抜き会場。【型抜き】の連中はそこにいた。
「よし、おまえら。ルールはわかったか? 途中で型が割れて失敗したら、店の親父に秘孔を突かれてアベ死ッ! の刑に処されるぞ!」
「ゾゾゾッ、ご主人様、怖いですね……あいたっ!?」
 エメ・シェンノートは笑顔で片倉 蒼の太腿をつねった。
「では、楽しみましょう。私は動物が好きなのでカメ……いや、ジャパニーズ・ガメラを型抜きします」
「僕はツキノワグマにするよ。これって、食べられるでしょ。壮太?」
「ククッ、食べたら、秘デブッ! だ」
「ゾゾゾッ、瀬島様、それは怖い……あいたっ!?」
 目の前の瀬島 壮太は蒼の頬っぺたをつねった。ミミ・マリーはそんな蒼の太腿をさすってやる。
「敬語禁止!!! よし、オレは守護天使の羽が描かれた型だ!! お前はどんな型を抜く、蒼!!?」
「僕はこれ、いや、これにしようかな?」
「な、なにィィィィッツーーーーーー!!!!?」
 壮太は驚き飛びのいた。なんと、初心者の蒼が選んだのは難易度最高と呼ばれるフェニックスの型抜きだったのだ。
「やるな!! 熱い勝負になりそうだぜッ!!!」

 これは長い長い勝負の末の結果である。
 エメは三十四アベ死ッ、六秘デブッ。 結果失敗! (ニホンのサムライはこんなゲームを……恐ろしい)
 ミミは八アベ死ッ、十九秘デブッ。  結果失敗! (お腹一杯食べたから結果はどうでもいいよね)
 壮太は二アベ死ッ          結果成功! (まっ、当然だな)
 蒼は七アベ死ッ、七秘デブッ。    結果成功! (器用かも?)

 エメ達の結果は散々だったが、壮太は揃いの金魚柄の風鈴を四つ買っていた。エメ達に日本風の祭りの記念を残しておきたいと言う彼の心遣いらしい。それを受け取ったエメの顔といったら、白くて白くて大粒の……まぁ、一年に一度のお祭りだけはあったよ。そして、壮太は照れくさそうに笑ったのだ。

 そして、輪投げの屋台では――
「ほいっ! あああぁん!? 何て、このゲームは難しいの!!? こんな小さな輪であんな大きな置物が取れるわけないでしょ!!」
「さけは不器用なんですよ。こんなモノ……こうすれば……このようにすれば……キイイイィッ!! 何よ、この不良品!!!?」
 どちらかと言えば大人しい性格の荒巻 さけが乱れ、大人っぽい日野 晶はこの理不尽なゲームになんだか無性に腹が立った。そして、二人で結託すると、次々とお金をつぎ込んで大物を狙う。
(ほいっ、ほいっとこう言うのは、割と俺、得意かなぁ? 光司、そんなムキにならなくてもぉ)
「輪投げか! 絶対、取ってやる! くっそ、上手くいかねえ!!」
 麻野 樹は輪投げが得意だったらしい。次々と商品をゲットしていく。雷堂 光司は負けず嫌いぶりを発揮するが残念ながら、技術が追いつかないようだ。

 これは長い長い勝負の末の結果です。
 さけは変な置物をゲットした。           (……きまぐれなわたくしにこのゲームは向いてませんわ)
 晶は最後の最後に目の前の小さな置物をゲットした。 (くっ、屈辱)
 樹はたくさんの置物をゲットした。         (取ったはいいけど、使い道無いよねぇ)
 光司は何も取れず落ち込んでいた。晶はそんな光司に声をかける。

「元気だしなさいよ。男らしくない」
「だってよ。何か取れたら、お祭りの思い出にみんなでプレゼント交換でもしようと思ったに……」
「あらっ?」
 根が素直で熱血漢な光司の直球的な態度に、晶は少しだけ心打たれる。
「じゃあ、私の取った小さな置物をあげます」
「俺も置物をやろう」
「じゃあ、わたくしも変な置物をあげますわ」
 光司は置物のプレゼントでいっぱいになる。今日から彼は『置物コレクター』と呼ばれるだろう。
「おおっ、何て言うかお前ら、本当に良い奴だな! じゃあ、俺がクレープをおごってやるよ!! ブルーベリーもあるらしいぜ!」
「賛成!!!」
 そして、【蒼薔薇】の面々はその仲を深めるべく、クレープを目指すのだ。

 そろそろ、お祭りも終わりが近づいてきただろうか?
 ――だが、そのお祭りに来ているメンバーの何人かは確実にその異変に気づき始めていたようだ。【壁画の目撃者】でお祭りの警備に当たっていた橘 恭司(たちばな・きょうじ)もそれを暗示する紙を見つけたようだ。
『ぼくのかんがえたすごいさくせん』
 そこにはミミズが這ったような字で色々な作戦が書かれていた。同時に各方面で悲痛な叫びが聞こえてくる。
「あぁ〜!? 写真に夢中になっていたら、売上金が減っている!?」
「ひと儲けしたはずなのに俺の金……パラミタ一の商人の夢がぁぁぁ!!!」
 それはクレープ屋とチョコバナナ屋から聞こえてきた。
「やれやれ、みんなを楽しめるための裏方が好きだからって、警備していたのに何て失態ですか」
 恭司はタバコを口に含むと周囲を見渡した。警備だけを手伝っていれば、こんな失態はしなかったかもしれないが、あまりにお祭りは楽しそうで、恭司もついつい楽しんでしまっていたのだ。
(俺は俺にできる事をするだけだろ?)
 義眼の左目の奥が疼く。戦場で失ったのは左目だけではない。自分と言うアイディンティティーだ。彼は暴力と破壊のみが乱舞する戦場で己を見失い、自分が何者なのか知るためにこの地にやってきたのだ。
「この字、犯人は子供だろうか……いや、この平仮名だけの文章、まさか、パラ実かッ!!?」
 そして、恭司は動き出した。勿論、すごいさくせんをかんがえた奴を倒すためにだ!!