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ザンスカール・フェスティバル

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ザンスカール・フェスティバル

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1.祭りの始まり

 心地よい涼風が吹きぬける夏の夕暮れ。
 ここ、ザンスカールのイルミンスール魔法学校では、毎年恒例の夏祭りが開かれていた。

 この「ザンスカール・フェスティバル」は、魔法学校らしく、ヨーロッパっぽい上品な雰囲気のお祭りとして有名だ。

 世界樹イルミンスールには、華やかな飾りつけがほどこされ、魔法学校の瀟洒な校舎が、その雰囲気に彩りを添えている。

 催されているイベントも、これまでは、劇の上演・魔術による花火・ケルト風のダンス・オペラなど、おしゃれをかんじさせるものばかりだった。

 しかし、この祭りに出店している屋台の多くは、どう見ても日本風の、いわゆる飲み屋街にあるような赤提灯系の屋台だ。

 そうなってしまったのには、こういう経緯がある。

 ザンスカール・フェスティバルは伝統あるお祭りだが、近頃は、いまひとつ盛り上がらない。

 そこで、イルミンスールの学生ジャクリーヌの提案により、パラ実の生徒を招いて屋台コンテストを開くというはこびとなったのだ。

 もっとも、コンテストといっても、何かを競うわけではなく、単にいろいろな屋台が出ているだけなのだが・・・・・・。

 まずは、どんな屋台があるのか、見てみることにしよう。


屋台の紹介

 屋台の主役といえば、やはり食べ物系だ。

 黄色い明かりに照らされた屋台から、ソースの匂いがプーンとしてくる・・・・・・そんな様子を思い浮かべるだけで、食欲がわいてくる。

 食べ物関係の屋台は、一区画にまとまってお店を出していた。
 主催者側によると「食べ物屋台連合」というらしい。

 これらの準備は、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)羽瀬川 セト(はせがわ・せと)らが中心となって事前申請などを行った。
 祭りの準備もいろいろ大変だが、楽しいことならば苦にならない。

 では、今回店を出す食べ物屋台を順番に紹介しよう。


魔女の鉄板焼き

 店を出すのは、羽瀬川 セトとエレミア・ファフニール(えれみあ・ふぁふにーる)のふたり。

「お祭りといえば、やっぱり屋台がないとだめですよね。屋台はそうですね・・・・・・鉄板焼きでもしましょうかね店の名前は『魔女の鉄板焼き』・・・・・・よしこれでいきますか」

 こう元気に言う羽瀬川 セトのいでたちは、浴衣にたすき掛け、そして頭にはねじりハチマキという姿だ。
 やっぱりお祭りなので、衣装にはこだわりたいところ。

 エレミア・ファフニールも浴衣姿ではしゃいでいる。
「屋台にはやっぱり売り子がいるじゃろうな・・・・・・よし!このかわいいわらわがやってやろうかのぅ」

「メニューは焼き肉、焼きそば、お好み焼き・・・・・・いろいろ作りたいですね」

 これだけならありきたりだが、よく見ると特別メニューとして、張り紙に大きい字で「魔女焼き」と書いてある。

 はて、これはなんだろうか?


バナナの叩き売り

 店を出すのは、クラーク 波音(くらーく・はのん)アンナ・アシュボード(あんな・あしゅぼーど)のふたり。

「盛り上げたほうがいいなら屋台やってみよー!」
という直感でやってみた。

 ただ、アンナと二人だけでは手のこんだことは難しいかもしれない。

 そこで、アンナの提案でバナナがあればできる、日本伝統の啖呵売「バナナのたたき売り」にチャレンジしたのだ。

 バナナの叩き売りは、売れるとか売れないというより、パフォーマンスのほうが重要。

「元気よければいいんだ、面白そう!」
とアンナもいってくれるので、安心。

 屋台では、バナナ売り役を担当するのがクラーク 波音。

 そして、アンナ・アシュボードは、バナナを買ってくれた人に対して、それをチョコバナナにしてあげるサービスの担当だ。


イルミンスール魔法学校名物 「クトゥルフ焼き」

 店を出すのは、本郷 涼介、クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)のふたり。

 やる屋台はたこ焼きだ。
 但し、ただのたこ焼き屋ではない。

 商品は、1パック8個入りの、何の変哲もないたこ焼きである。
 でも、蛸のぶつ切りが大きく、食べ応えは十分。

 ちなみに8個入りというのは蛸の足の数にちなんでいる。

 この後のサービスがすごい。

 お買い上げいただいた方には、6面体ダイス2個を振っていただき、その出目に応じたおまけがある。

 ゾロ目が出た場合は、4個入りの半パックをサービス。
 さらに、出た目が6のゾロ目だったときは、なんと8個入りの1パックを特別サービスだ。

「さあさあ、一度食べたら病み付きの名状しがたきうまさがここに!!
 是非、皆さんお誘い合わせの上お越しください。」

 こういって、本郷 涼介たちは、元気に客引きをはじめた。


炭火焼屋台

 店を出すのは、片野 永久(かたの・とわ)三池 みつよ(みいけ・みつよ)のふたり。

 メインは、炭火で焼いた焼きトウモロコシと焼き鳥だ。

 氷水で冷やした缶ジュースも売っているが、微妙にぬるい。

「みつよ、一緒に屋台をやるわよー」
と元気よくパートナーを誘えたのも、今回は運良く食材が安く仕入れられたからだ。

 さらに、しっかりものの片野 永久は、売れ残りを防止するため、やや少なめに材料を仕入れていた。

 なお、今回、コンテストは全く考えてない普通の屋台として出店するつもりらしい。

 お店での役割だが、片野 永久は、呼び込みと会計を担当。
 そして、三池 みつよは、巫女さんの格好で料理を担当する。

「こればっかりは永久に任せられないからね」

 炭火で焼いた本格派の屋台に、みつよは自信をみせている。


オレの料理

 店を出すのは、ルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)

 店の名前は「オレの料理」という、いかにも美味しそうなタイトルだ。
 しかし、ルース・メルヴィンの料理能力はゼロ。

 屋台を準備するルースの機嫌は、あまりよろしくないようである。

 というのは、本当なら恋人と一緒に、このザンスカール・フェスティバルに来たかったのだが、それができなくて不機嫌らしい。

「オレの料理を食べさせてカップルのラブラブをぶち壊す」

 どうやら、彼の目論見は、そこにあるようだ。


チョコバナナの屋台”BJBJ”

 店を出すのは、藤原 和人(ふじわら・かずと)

 屋台では、甘いものとして人気のチョコバナナを売っている。
 でも、単なるお菓子屋台ではないようだ。

 この店はでは、店主の藤原 和人と、トランプで勝負することができる。
 勝負の結果によって、貰える本数が変わってくるのだ。

 それで、競うゲームはブラックジャック。
 カードの合計が”21”に近いほうが勝つというアレだ。

 ルールは、客が1回勝てば3本もらえる。
 負けても1本分の料金ですむようだ。

 さらに、チャンスアップ方式もあるようで、チャレンジして2連勝すれば、5本もらえるという算段だ。

 ギャンブル好きなら、試してみるのも面白いだろう。


灼熱!外道焼き

 店を出すのは、カレン・ドレッドノート(かれん・どれっどのーと)

 ここで出そうとしているのは、なんとイボガエルの姿焼!
 しかも超激辛だという。

 出すものがすごいだけに、店主も売ろうとは考えていないようだ。

「売れるわきゃないのはわかっているが、一応材料のイボガエルは大量に用意しておこう」

 そういって、カエルたちを集めていたようである。


 以上が、祭りをおいしく彩る「食べ物屋台連合」の面々である。


 さて、次は食べ物以外の屋台を見てみよう。
 こちらも、いろいろと個性的な店がそろっているようだ。


貸衣装屋、フェイスペイントサービス

 店を出すのは、ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)クラウン ファストナハト(くらうん・ふぁすとなはと)のふたり。

 クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)も、お店を手伝ってくれるようだ。

 学園祭の出店で、貸衣装屋なんて難しい気もするが、そこはさすがパラ実のナガン ウェルロッド。

 少なくとも最低屋台2個分のスペースが貰えれば、衣装置きスペースと着替えスペースは作れるからいけるはず。

 そう考えて、屋台の場所は、祭りの入口付近に陣取った。
 参加者が、お祭りの最初から楽しめるようにするためである。

 まぁ、これだけ派手にやれたのは、イルミンスール側からの依頼なんだがちょっとぐらい費用と協力要請したっていいハズ、という目論見もあってのこと。

 さて、この店で貸す衣装だが、普段ナガンが来ているようなピエロ服をはじめ、特攻服、さらし褌、刺繍入り長ラン、スケバン、レザー鋲打ち系などが、所狭しと並んでいる。

 いわゆる、パラ実生徒が着てるような、破天荒な衣装を貸し出すつもりなのだ。

 でも、それだけではなく、恋人向けにペアルックや結婚衣裳も用意している。

 ナガンの方針としては
「カオスな衣装を着てみんなが騒ぎまくること」
 これが重要なのだ。

 また、衣装を着た人への、フェイスペイントサービスもおこなっている。

 腕前は、参加者の中では美術はトップクラスだし大丈夫だろう、と本人はいうが、果たして???

 コンテストについては、特に狙うほどがっついていないが、貰えるのならば貰っておこうという程度のものらしい。

 相棒のクラウン ファストナハトも、張り切っている。

「貸衣装屋のお手伝いじゃん。
 色違いのピエロがやる貸衣装屋とか最高じゃん」

 しかし
「基本的にナガンは言動がちょっとヤバいから、参加者の着替えの手伝いなどを行うじゃん」
と、来客へのフォローも忘れてはいないようだ。

 そして、もうひとり、店を手伝ってくれるクライス・クリンプトは、女装であらわれた。
 しかも清楚で可憐!

「これで誰も僕が薔薇学の生徒だと思わないはず!」

 クライス・クリンプトには、パラ実生の事をよくわからないイルミンスールの生徒たちに、パラ実の流儀を叩き込もうというのが目的らしい。


恋愛成就薬、ミラクルキューピッド

 店を出すのは、カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)のふたり。

 お店は、ミラクルキューピッドという可愛らしい名前だが、売っているのは、いかにも怪しげなジュースだ。

 店主のカレン・クレスティアによると、これは
「飲んだ後、最初に目にした人を好きになるという媚薬入りジュース」
らしい。

 果たして、真偽のほどはいかに!?


金魚さん危機一髪!? 弱肉強食金魚すくい!!

 店を出すのは、伊達 恭之郎(だて・きょうしろう)天流女 八斗(あまるめ・やと)のふたり。

 見せの名前に「弱肉強食」が入っているのは、水槽にいるのが金魚だけではないからだ。

「普通の金魚すくいじゃつまらないから」
ということで、伊達 恭之郎たちが、そこらの川や池から取ってきた魚も一緒に入れてある。

 パートナーの天流女 八斗は、赤い金魚柄の浴衣を着て、店番に参戦している。


世界樹異琉明数流慈慧斗鋼巣蛇(世界樹イルミンスールジェットコースター)屋台!

 店を出すのは、ハーリー・デビットソン(はーりー・でびっとそん)

 なんと、ここは、世界樹イルミンスールそのものを舞台にしたジェットコースターなのだ。

 ・・・・・・常に片隅に放置されているハーリーは屋台の事を良く知らない。

 辛うじてある知識といえば、それは車やバイクなどで引いて周って来るラーメン屋台の夜鳴き蕎麦くらいだ。

 話を聞けば、ラーメン屋台はどんな場所であろうがやってくるらしい。
 ・・・・・・もっとも、この話はラーメンの出前と混同しているようだが・・・・・・。

 そして気付いた。

 そう、つまりは屋台とは、場所を問わずに駆け抜ける物なのだろう。

 その発想の元完成したのがこれ!

世界樹異琉明数流慈慧斗鋼巣蛇(世界樹イルミンスールジェットコースター)屋台!

「がっちり安定感の、ハーリーを中心とした二台のスパイクバイクを固定したハイパワートリプルバイクが引く屋台が、巨大な世界樹を縦横無尽に駆け巡るのだ」

 こう豪語するハーリー・デビットソンとしては
「デートのカップルにも定番っぽくてバカウケだ!」
と信じている。


恋愛支援

 店を出すのは、當間 零(とうま・れい)ミント・フリージア(みんと・ふりーじあ)のふたり。

 ふたりの恋を成就させるための、お守り・アクセサリーの販売や、相性占いがメインだ。

 品物の仕入れは、ミント・フリージアをはじめ、学友の女性陣や、雑誌等から最近のトレンド等の情報を集めて仕入れたもの。

 ちなみに、商品の値段は、ほかの屋台での商品の価格を考慮して決めている。

 商売感覚に優れた當間 零は、それらに見合った適切なモノを仕入れ、損益が出ないように考えていた。


クトゥルフ神話学科の屋台

 店を出すのは、いんすます ぽに夫(いんすます・ぽにお)巨獣 だごーん(きょじゅう・だごーん)のふたり。

 主に、海産物の焼き物を売ったり、神話学科の紹介をする予定だ。


須鯛律朱(すたいりっしゅ)☆射的遊戯

 店を出すのは、御弾 知恵子(みたま・ちえこ)フォルテュナ・エクス(ふぉるてゅな・えくす)のふたり。

「お祭りにゃ屋台は欠かせないよね!」
という御弾だけあって、景品にはお菓子、玩具、化粧品等をそろえている。

 ここでは、通常の射的のほか、二挺拳銃コースというのがある。

 これは、一回分の料金で、弾が6発もらえるというものだが、お得なように見えて実は難しい。

「宣伝の際はその辺の不利になる文句を全く言わず、有利な点だけを強調するようにするのさ。
祭りは人の金遣いを荒くするから、儲けが楽しみだねぇ。」
と、したたかな計算を忘れない御弾 知恵子であった。


歌とダンス

 ザンスカール・フェスティバルでは、屋台以外にも催し物が予定されている。

 ステージやストリートで、歌とダンスを披露したいと考えているのが、はるかぜ らいむ(はるかぜ・らいむ)だ。

 ステージがなくても、屋台の邪魔にならなくて通りかかる人が多い場所があれば・・・・・・・・・・・・と、キョロキョロと場所を探している。

 幸い、ステージがあったので、責任者に断り、正式にステージに上がれることとなった。

「うまくいけば、ボクも人気が出るかもしれないし、祭も盛り上がるぞっ。よし、やったねっ!!」

 スカウトされたことがある歌とダンスで、祭りの参加者の視線を引きつけたい。

 はるかぜ らいむは、期待に胸をふくらませていた。


アクロバット飛行イベント

 このお祭りで、ひとつ騒いでやろうという男がいた。

 波羅蜜多実業のテクノ・マギナ(てくの・まぎな)だ。

 彼は、パートナーのエー テン(えー・てん)に乗って一発やらかしてやろうという算段らしい。

「ヒャッハー! パラ実で名を上げるためにド派手に登場だ!」

 彼らは一体、何をしでかすのだろうか?


ポイントシール集め

 こちらもまた、屋台ではないが、棚畑 亞狗理(たなはた・あぐり)がひとつの企画を考えていた。

「パラミタ裏三大祭りといえば『春の菓子まつり』『某映アニメまつり』『華皇ヘアケア祭』だ」

「・・・・・・アニメは戦闘物の教導と美少女の百合、ヘアケアは美容の薔薇と健康の蒼空に任せるき、俺様たちは残る『菓子まつり』を同時開催すべきじゃ」

「自らの食い意地のためじゃなく、魔女の鍋と実業の食品製造業がマッチしちょるからじゃけん、後ろ暗いトコは無いき!
 実業の本領たるテキ屋稼業としても、祭りに付き物の福引もでき、コンテストへの動員客もガッちょり確保、方々の屋台も売上倍増ちゅう皮算用じゃ。」

 ・・・と息巻いている棚畑 亞狗理だが、要は次のことがやりたいらしい。

 1:ポイントシールを作り各屋台に押し付ける。無断で商品へ貼付するのも可

 2:景品の皿は、負けず嫌いの校長と木工系出身の王ちゃんに提供させる

 3:入口で会場マップを兼ねたカードを配布、ラリー制で客に会場全域を廻らせる

「出資の件は、『世界樹のプリント柄』の皿の可愛さで御神楽校長に差をつける!・・・・・・とか言いくるめるンじゃ。
これで屋台巡りも活性化するき!」

「ついでに女連れの野郎どもの財布も軽くなってザマァみろじゃい! ・・・・・・畜生!
 あ、シー・イーの買い物や屋台の売り子中は、ポイント倍増サービスじゃ!
 いつも可愛いのう・・・・・・こっそり贔屓しちゃるかのう・・・・・・」


警備

 フェスティバルの警備を買って出たのは、レベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)アリシア・スウィーニー(ありしあ・すうぃーにー)のふたり。

 彼らは「屋台コンテスト出場中の屋台の広告」をつけた移動式屋台を引いてフェスティバル会場を巡っている。

 巡りつつも、悪さをする者がいないか目を光らせている。

 屋台は、大型リヤカーベースの移動式屋台の外装を、デコトラの要領で電飾やペイント、ステンレスやメッキのパーツでゴテゴテ飾り立てたデコ屋台だ。

 しかも、広告は、各屋台の特色を活かし紹介する、付け替え可能な自作の派手な看板型となっている。

 屋台の引き手はレベッカとアリシアが交代でやり、満遍なく皆の屋台を紹介してまわろうと考えている。

 宣伝するときは、つねに愛想良く。
 特に子供には愛想良く!

 また、ザンスカールの特性上、空から見られる事も考えてあるというから、手が込んでいる。

 彼らの本当の目的は、「パラ実=悪」ではない事をザンスカールの人達に示すこと。

 パラ実生を敬遠する人達にも、祭や屋台に来場してほしい。
 その思いが、悪さをする者を止める「警備」となってあらわれているのだ。