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激熱…夏の陣!東西ロケット花火戦争

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激熱…夏の陣!東西ロケット花火戦争

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第9章 華やかに散りゆく灯り火

 遠くの高台から望遠鏡で戦争の状況を覗いていた黒子たちを、切縞 怜史(きりしま・れいし)が見つける。
 怜史は光学迷彩の術で姿を隠し、相手に気づかれないように近づいていく。
「だいぶ祭りを楽しんだようだな愉快犯ども・・・」
 逃げられないように、背後から1人取り押さえた。
「オレは誰かが怪我するかも知れないことを、自分の手を汚さずに・・・ただ見ているだけの姑息なヤツが大嫌いだ」
 喋りながら少しづつ、間合いを詰めていく。
「まぁこういったお祭り騒ぎは悪くはないな。キチッと片付けまでてめえらがやるなら何も言わない。オレの相棒も楽しんでるようだから・・・」
 表情を変えずに怜史は、冷静な口調で黒子たちにさらに詰め寄る。
「だが・・・・・・断ると言うなら、てめぇらは2度とお祭りを楽しめない様にする。どうした?さっさと“はい”か“イエス”で答えろ・・・」
 捕まえた黒子の首を片腕でギュッと閉めた。
 仲間の危機に仕方なく、黒子たちは地面に落ちた花火を拾い始める。



「ふぅ・・・、男子用のテントの設置完了っと」
 土塗れになった体を水で拭き、浴衣に着替えるためのテントを周が手早くセッティングする。
 きちんと洗浄したい人のために、開戦前にサイモンたちがシャワー室を組み立てていた。
「さぁて・・・それじゃあお楽しみの・・・のぞき・・・もとい、部活動をするか」
 女子のシャワー室には入り口の50cm先に看板が立てられ、真っ赤なペンキでこう書かれていた。
 ここから先立ち入った男子は、須らく蜂の巣の刑に処す。
「それくらいで退く俺じゃないぜ!」
 周は壁をよじ登り、その隙間から覗こうと試みる。
 その様子をメイが見つけてしまう。
「何やってるのかしらあの人・・・」
「どうしたのさ?」
 メイに膝枕をしてもらい空を見上げていたカリンが身体を起こす。
「ちょっとそこ、何をやっているだよ?」
「へっ?あわわっ!」
 部活に集中しようとするあまり、急に声をかけられた周は地面に落下する。
 落ちた振動でトラバサミが地中から現れ、危うく足を挟まれそうになった。
「怪しいねぇ・・・」
「分かったわ、シャワー室を覗こうとしてたのね!」
 逃げようとする周に向かって、メイが雷術を放つ。
 バチバチッと感電し、さながら人間花火のようになった。
 覗かれずに着替えを終え、シャワー室から女子たちが出てきた。
「くっ・・・くそぉ・・・俺のパラダイスが・・・」
 まったく部活動ができなかった周は、力尽き倒れ込む。



「今日は頑張ったようだから・・・わたくしからご褒美を差し上げますわ」
「―・・・えっ!?」
 驚きのあまり陽太は目を丸くする。
「まぁっ、何ですの。その意外みたいなリアクション!」
「いっいえ・・・なんというかその・・・真夏なのに雪が降るんじゃないかと」
「失礼ですわね、いいわよ。差し上げなくても」
「えぇっ!そ・・・そんなー・・・。いります、ありがたくいただきます!」
 エリシアお手製のブルーハワイ味のカキ氷を受け取った。
「うぁっ、いっ・・・」
「そんな一度に沢山食べるからですわ」
 急いで食べたせいで頭を痛める陽太の様子に、エリシアは思わずクスッと笑ってしまう。



「線香花火、沢山持ってきましたよぉ」
「いっぱいあるから取り合わないように!」
 メイベルとイリーナの2人が、用意しておいた線香花火を参加者たちに配っていく。
 参加者はそれぞれ浴衣に着替え終わり集まっていた。
「暖かいスープやパンもありますよ」
「スフィーリアお手製だよー!食べなきゃ損だよ」
「そんな・・・簡単なのしか作っていないのに」
「いいじゃない、こんなに美味しいんだから冷めないうちに全部配り終えるためにもさ」
 そう言いながらフタバはパンを手に取り、皿に移したスープに浸してつまみ食いをする。
「こっちに冷えたスイカもありますよーっ」
 大きなスイカを抱えて、刀真が声を上げて呼びかける。
「斬っておいたほうがいいのかしら」
 負傷者たちにヒールをかけ終わった月夜が傍からひょこっと顔をだす。
「そうですね、斬って配りますか」
 刀真は光条兵器で地面に置いたスイカを斬った。
「すみませんー、パンとスープ・・・それからスイカくださいー」
 スフィーリアたちに向かって、遠くからライゼが手を振る。
「はーい、どうぞ」
「全部1人で持てますか?」
「大丈夫ですよ」
 2人はライゼに手渡してやった。
「美味しいです。垂さんも食べますか?」
「あー・・・うん」
 気のない返事をしながらも、垂はパンを手に取る。
「俺の味付けってさー・・・そんなに悪いのかな」
「へ?今何か言いましたか」
「―・・・いや・・・なんでもない!」
 垂はそう言い、パンにかぶりつく。
「面白いわね線香花火・・・」
「えぇとても綺麗です」
「綺麗・・・?そんな言葉で片付けるのミストラルは」
「ではメニエス様、何と表現すればいいのでしょうか」
「花火が落ちる瞬間・・・人の終わりに似ていない?」
「儚く散っていく感じが・・・ですか?」
 彼女の言葉にミストラルは考えながら言う。
「フッフフフ・・・人との生命が燃え尽きて消えるような感じと同じに見えるのよ」
 ぽとんと地面に花火を落ちる瞬間に、メニエスはクスッと冷笑する。
「いいですね線香花火。私も遊びませんか?」
「そうでありますな」
 楽しく遊ぶメニエスたちの姿を見て、ライラプスとコウジも線香花火で遊ぶことにした。
 メイベルから花火をもらって火をつけると、パチパチと小さな火花が散る。
 10秒くらいで2人の線香花火が落ちてしまう。
「綺麗だけどやっぱりすぐ終わってしまいますね」
「まだあるからもう1度やってみるでありますか?」
 ライラプスは嬉しそうにコウジから花火を受け取り、花火に火をつけて美しく輝く火花を眺める。
「周くんあたしも花火やりたいなー・・・」
「―・・・あぁそうだな」
 女子のシャワー室の近くで雷術をくらい、元気のない周は気のない返事をする。
「線香花火・・・嫌い?」
「あっ、いやそんなことはないぜ」
「じゃあ一緒に遊ぼうよ」
 すでに線香花火で遊んでいる人に少し別けてもらい、2人で遊び始めた。



「もう皆楽しんでいるみたいね」
「あぁそうだな」
 涼しげな風にあたりながらルカルカとダリルは、線香花火や残りのロケット花火で遊んでいる人々の様子を眺めていた。
「綺麗ね・・・。空に向かって飛んでいくロケット花火の炎が、まるで天に流れる流れ星の帯のようだわ・・・。なんてね・・・」
 ルカルカは暖かいスープを飲み、ぽつりと詩人のような言葉を並べる。
「なぁルカ、どっちの花火が日本の夏の風物詩なんだ」
「そうねー・・・両方かしら?」
 ダリスの疑問にクスッと可愛らしく笑って答える。
 岩陰から線香花火を楽しむ人々を、博士がじーっと見つめていた。
「ナンダヒロシ・・・ハナビ・・・ウヤマシイノカ?ハシャギタイノカ?ソンナニミンナトイッショニヤリタイノカヨ」
 彼の後ろからロ式がひょっこり現れた。
「この我輩が・・・う、羨ましがってるわけないだろう花火ごとき!それにヒロシではない、ハカセじゃあ!帰るぞロ式!!」
 一見やせ我慢に見える態度で、博士はその場から立ち去っていく。
 その態度にロ式は深いため息をつき、彼の後をついていった。
「はて・・・イリーナたちはどこにいるのでしょうか。こう人が多くては見つけづらいですね・・・」
「そこの美しい方。さっきは敵同士だったが、お詫びと言ってはなんだけど・・・俺と一緒に夜空の星を眺めないか?」
 イリーナたちを探しているクリスフォーリルにテクノが話しかける。
「―・・・すみません、友人と約束があるので遠慮しておきます」
 きっぱり断られたあげく不審者を見るような目で見られ、テクノはあえなく撃沈してしまう。



「どうやら戻ってきたですねぇ」
 伽羅が救護班のテントからイリーナが戻ってきたことを、タンたちに知らせる。
「いよいよ例のプランを実行するのでござるな」
「上手くいくといいでありますな・・・」
「何をだ?」
 金烏が小声で話していると、至近距離から野武がひょっこりと顔を出す。
「あぁあっ!なっ・・・なんでもないであります!」
 挙動不審な金烏に、野武は眉を潜める。
「おーい!線香花火、持ってきてやったぞ」
 伽羅たちに向かってイリーナが片手を振る。
「今そっちに行くでありますー」
「あぁーっそうですぅ、思い出しましたぁあ!」
 わざとらしく伽羅が声を上げる。
「私たち・・・ちょっと用がー・・・」
「そうでありますか、それは残念・・・てっ・・・!?」
 金烏とタンの2人がトゥルペの手を引き、無理やりその場から離す。
「なっ何でありますか、ワタシも線香花火したいでありますー!」
「それはこっちで一緒にやるですぅ」
「どうしたんだ花火なら私たちと一緒にやらないか?」
「わっ・・・私たちは用事を済ませた後でやるんですぅ!」
 野武とイリーナの2人をその場に残し、伽羅たち3人は嫌がるトゥルペを連れて立ち去っていった。
「ワタシもイリーナと一緒に・・・むぐっ」
「あわわっ、シーッ!静かにするですぅ!」
 伽羅が騒ぐトゥルペの口を手で塞ぐ。
 彼らは岩陰から2人の様子を見守っていた。
「仕方がないな・・・2人で遊ぶか・・・」
「そ・・・そうであるな」
「綺麗だなー・・・」
 線香花火の火花がパチパチと散り、その輝きをイリーナは楽しそうに眺める。
「2人の位置がだいぶ離れているようであります」
「ムムッこれだけ雰囲気を作ったのに何故でござるか!」
「シィーッ!声が大きいですぅ!」
 気づかれると思った伽羅は、パートナーを叱る。
「あーっ、いたいた。イリーナさーん!」
 女子たちが手を振って駆け寄ってきた。
「うあ・・・あちゃー・・・」
 せっかく作り上げた空間を一瞬にして破壊された伽羅は、残念そうにため息をつく。



「美味しい美味しいももんじゃもんじゃー♪」
 楽しそうに歌いながら、ラヴィン・エイジス(らうぃん・えいじす)はもんじゃを作っていた。
 コテを使い鉄板の上でトントントンッと野菜を刻む音が響く。
「ちょっと怜史も手伝ってよ!」
 ラヴィンは遠くにいる怜史に呼びかけが、彼は無視を決め込む。
「まったく・・・」
 仕方なく自分1人でもんじゃを焼くことにした。
「うーんいい匂いだなー」
「我輩も何だか腹が減ってきたようであるな」
 もんじゃの香に屋台へ、イリーナたちが引き寄せられる。
「すみません、人が多すぎてなかなか見つけられなくて」
「そうだったのか、クリスも隣に座って一緒に食べよう」
「えぇ、ではご一緒させていただきますね。もんじゃができる間、線香花火でもしましょうか」
「あぁそうだな」
「ワタシも食べるでありますー!」
 伽羅たちの拘束から逃れ、トゥルペが岩陰から飛び出す。
「どこに行ったのかと思ったらそんなところにいたのか・・・」
「実は伽羅たちが・・・むぐ!」
「あは・・・あははは!何でもないですよぉ。あー私もお腹減ったですぅ」
 わざとらしく乾いた笑い声で、伽羅は状況をごまかした。
「あっ!いましたね」
「私たちも向こうに行こうよ」
 イレブンとカッティもイリーナたちの傍に寄ってきた。
「線香花火ちょっともうらよ、はいイレブンの分だよ」
 カッティから花火をもらい、イレブンも線香花火で遊び始める。
「メイベルちゃん、わたしたちも食べにいこうよ」
「えぇいきましょう〜」
 線香花火で遊んでいたメイベルやセリシアたちもベンチに座り、ラヴィンのもんじゃ焼を待つ。
「(結局、搬送作業の料金できそうにないな・・・)」
 武尊は心中で呟きながら、線香花火を見つめる。
「武尊さん、もんじゃきましたよー」
「―・・・あぁ・・・。(現物支給か・・・)」
 メイベルからもんじゃを食べるためのハガシを受け取った。
「美味しいお菓子や冷たいジュースもありますよー」
「沢山あるから皆〜来てねー♪」
「ジュースをくれー」
「私にはお菓子をください」
 葉月とミーナの屋台に、セツナとリリーが寄ってきた。
 好みのお菓子とジュースを、それぞれ手渡してやる。
「休憩がてら僕たちも花火で遊びますか?」
「えぇそうね」
 屋台の販売を休み、葉月とミーナの2人も線香花火で遊んでいる人々の中に混ざることにした。
「わわわたちも混ぜてほしいのじゃ」
 ようやく浴衣に着替え終わった縁とサラスが手を振りながらやってくる。
「いいよー、一緒に遊ぼう」
「わーいありがとう。線香花火ってすぐ終わっちゃうけど面白いよね」
 ミーナなから花火を受け取り、サラスはさっそく遊びだす。
「そうじゃのう」
 縁は手にしている線香花火を、パートナーの花火の火花に近づけて着火させる。
 刀真とスフィーリアたちからスイカやスープをもらい、めいっぱい食べた真はベンチの上に横になり寝入ってしまっていた。
「おや、疲れて眠ってしまったんでござろうか」
 線香花火していた薫が、寝入っている真の姿を見つけた。
「そのようですね、防衛に頑張っていたようですし」
 花火で遊んでいた水神も寄ってきて顔を覗き込む。
「あっ!それじゃあ顔にラクガキを・・・」
「だ・・・だめですよ!」
「冗談ですよー冗談♪しかも花火じゃラクガキできませんから」
 ひなは手にしている線香花火を見せる。
「本当にやったら洒落にならないですよ」
 傍で様子を見ていたアルコリアが苦笑する。
「ボクにはそたなたの方がやりかねないかと・・・」
 シーマが近くからボソッと言い、アルコリアが忘れていった紅茶の入ったカップをパートナーへ手渡してやる。
「そっと寝かせてやったらどうだ。そんな傍で騒ぐと起こしてしまうぞ」
 ブレイズが横から口を挟む。
「向こうで一緒に花火しましょうよ」
 空いているベンチの方をロージーが指差す。
「場所とってありますよー!」
 巽がブンブンと片手を振って呼ぶ。
「皆の分のジュースやスイカもちゃんととってあるよ」
 ブレイズたちに呼びかける樹の傍らで、すでにフォルクスがスイカにかぶりついていた。
「酷い傷ね。まったく・・・無茶するから」
 月夜は怒りながら刀真の手当てをしてやる。
「すみません・・・ちょっとはしゃぎすぎちゃいましたね」
「限度があるわよ!」
 包帯を巻いてやった刀真の足をバシッと叩く。
「痛っ!」
「そう思うなら今度から気をつけることね」
「あっはは・・・そうだ、線香花火もらったんでやりましょうか」
「(すぐそうやってごまかそうとするんだから)」
心中でため息混じりに言い、月夜は花火を受け取った。
「風流じゃのう」
「派手な花火もいいけど、こいうのもいいよね」
スープを飲みながら、縁とサラスも花火を楽しんでいる。
「結構な数の花火が落ちているであります」
地面に落ちている花火を拾い、真紀は水の入ったバケツに入れていく。
「皆さんーっネアが歌ってくれますってー!」
「そんなに大声で言われたら恥ずかしいでございます」
 大々的に言う黎明のせいで、人々の視線を集めてしまったネアが顔を赤らめる。
「では・・・歌わせていただきます・・・」
 ふうっと深呼吸をすると、ガヤガヤと騒いでいた話し声が止んだ。
 静かな闇夜に優しげなネアの歌声が空へと響き渡っていった。

担当マスターより

▼担当マスター

按条境一

▼マスターコメント

こんばんわ、按条境一です。
また夜更け突入のシナリオですね。
だいぶ眠い方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さて、今回はロケット花火戦争でした。
倒れたふりの扱いも討ち死に扱いとなっております。
時速500kmのこの花火を普通に受けたら、どうなってしまうのでしょう。
火薬の量もちょっとしたダイナマイトサイズでした。
鉄筋コンクリートを破壊する程度の威力ですね。

仮設シャワーシツですが、女子(見た目含む)の方の場所に男子は半径100m立ち入り禁止とさせていただいております。
そこにドリームがあってものぞいたら最期・・・どうなることやらですね。
シャンバラ大荒野の土に(首辺りまで)埋まって夜空を見上げられることでしょう。
別の祭り系シナリオで、命綱のないギリギリラインの内容を考えようと思っています。
大惨事になりませんからご安心ください。

今回は危険度の高い方法で敵陣へ突っ込んでいった方とトラップを作った策士の方、それと観戦者の方と別途で西軍の一部の方にも一部に称号をつけさせていただきました。