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激熱…夏の陣!東西ロケット花火戦争

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激熱…夏の陣!東西ロケット花火戦争

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第3章 対岸の火事はいとをかし

 熱気が高まっていく戦場を、2人の少女が冷静に眺めている。
「まったく野蛮よね、花火は本来ゆっくり見て楽しむものに。まぁ・・・こうやって高みの見物してるのも面白いけど」
 高台からアイスティーの入ったカップを片手に、お洒落な白い椅子に座っているメニエス・レイン(めにえす・れいん)が戦争の光景を見下ろす。
「メニエス様は参加しないのですか?」
 ミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)は、メニエスを洋風の団扇で扇ぎながら訊く。
「いやぁね、このあたしがそんなことするはずないじゃないの」
 クスッと笑ったメニエスは、テーブルの上に置かれた皿に盛られた焼き菓子を1つ食べて紅茶で喉を潤す。
「どっちが勝っても、あたしにはどうでもいいことだし」
 彼女たちはこの戦況をじっくり鑑賞することに決め込んだ。



「向こうさん結構な人数を送り込んできそうですね・・・。これは東軍の皆さんに早いところ知らせに戻らないと」
 大地は岩陰の死角になる位置から、西軍の動向を探るために偵察しに来ていた。
「こちらから東軍側に直接攻撃をしかける人が行っているようですから、当然向こうからも来てるはずですよね・・・」
 影野 陽太(かげの・ようた)は注意深く花火の発射台付近を警戒していた。
「陽太・・・あの辺に人影がいますわ!」
 噂をすれば何とやらと言うべきか、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が暗闇に紛れて蠢く人影を見つける。
「よし・・・そっと近づいて捕らえてやりましょう。おっと、こんな所にロープが。そんなトラップには引っかからな・・・てっ・・・うわぁ!」
 大地が仕掛けた1つ目のトラップをかわした直後、見えづらいようにコーティングされた糸に陽太が足を引っかけてしまう。
「(この隙に逃げますか)」
 西軍の人間を見事トラップに引っかけてしてやったりと顔をし、大地は東軍側へ帰ろうとする。
「そう簡単に逃がしませんよ!」
 侵入者の大地を捕らえようと、砂の上から立ち上がった陽太は彼の左脇腹へ掴みかかった。
「うぁっ、離してください。ならば・・・これでも食らいなさい!」
 ネズミ花火を投げつけて陽太から逃れ、身を隠すために煙玉を地面に投げつけて逃走する。
「げほっげほ・・・そちらがそうくるのでしたら、俺もそれなりの手段を取らせてもらうまでです!」
 大地が逃げていく方向に花火の発射台を向け、ロケット花火を発射した。
 エリシアも一緒に花火を乱射させる。
「うぁあ!?やっぱり撃ってきましたか。しかし、何がなんでも生き延びてみせます!」
 ジグザグに走りながら大地は、死に物狂いで花火を避け全力で戦場を駆け抜ける。



「凄い光景だな・・・。陣地付近だともっと凄いもんが見れそうだ」
 海老煎餅をバリバリと音を立てて食べている和原 樹(なぎはら・いつき)が、双眼鏡で戦場を眺めている。
「ただ単に花火を撃ち合っているだけならいいのだが・・・。我らの方に飛んできたりしないであろうな」
 状況を見ながらフォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)は、樹の不穏な発言に嫌な予想をし始めた。
「近くで見た方がもっと迫力ありそうだな・・・。いや、寧ろ参戦したほうがいいか?」
「まっ待て樹!ロケット花火以外の水爆弾やらいろんな物が投下されているではないか!」
 ロケット花火の威力でさえまともでない状況で、参戦したがっている樹を必死に止めようとする。
「そうだ別の菓子をやろうではないか」
「腹はそんなに減ってないよ。十分戦に参加できる」
「いやっ、まだ十分ではないぞ!」
 フォルクスは必死に樹を観戦していた位置に押し戻そうとし、おかきを彼の口の中へ無理やり突っ込む。
「ふぉへあふぁんかへぇふぅ!(訳:俺は参加する!)」
 口いっぱいに煎餅を頬張りながら、樹は戦場の方へ進もうとする。
「良く分からない物まで飛び交っているのだ危険すぎる!」
 今度は樹の襟首を掴んで力任せに引き戻す。
「まぁ・・・救護班の世話になるのもなんだしな。しかたがない・・・観戦しているか」
「そうだ、それがいいであろう。ん・・・何かこっちに飛んでくるようだ・・・が!?」
 ようやく諦めた樹に安堵するのも束の間、西軍側の陽太が東軍のスパイに向けて放ったロケット花火が、フォルクスたちの方へ飛んできた。
 ドォオンッと轟音を辺りに響かせ、フォルクスたちの近くに花火が着弾する。
「樹・・・もっと安全そうな観戦できる位置に移動した方が・・・」
「―・・・げほっ・・・同感だ」
 何とか立ち上がると、フォルクスと樹は救護班がいる付近へ移動していった。