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激熱…夏の陣!東西ロケット花火戦争

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激熱…夏の陣!東西ロケット花火戦争

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第1章 熱き戦場の開幕

「皆いくぞぉおおー!」
 開戦の合図を告げるほら貝を、イレブン・オーヴィル(いれぶん・おーう゛ぃる)がボォオオッと吹き鳴らす。
 イレブンは向かってくる西軍の相手をハリセンで叩く。
「始まったわ!はら早くどんどん花火持ってきてよ!」
 30度角の砲台の前で飛び跳ねながらイブ・チェンバース(いぶ・ちぇんばーす)は、ダンボールの中に入っているロケット花火を持ってくる楠見 陽太郎(くすみ・ようたろう)を待つ。
「あんなにはしゃいでまったく・・・。分かりましたよ・・・僕が給弾手をするから思いっきりどうぞ」
 陽太郎は大量の花火をイブの傍に置く。
 このロケット戦争用花火の火薬の量は通常の数倍あった。
 ちょっとしたダイナマイトくらいの分量あり、1mほど長さがある鉄棒の先に紙で包まれた火薬がくっついている。
「この辺かしら」
 イブは望遠鏡を覗き込み、西軍の人々がいる位置を確認する。
 どうやら両軍の基地の距離幅は4kmほどあるようだ。
「飛んでいけー、あっははは!」
 数十本のロケット花火に、イブがガスバーナーで点火していった。
 花火は時速500kmという猛スピードで、ヒュィイインと高音を立てて夜空に真っ赤な弧を描いて飛んでいく。
「さぁ・・・もっともっと飛ばすわよ!てっ・・・あぁあ!」
「どっどうしたんですか!?」
 叫び声を上げるイブに、陽太郎が駆け寄った。
「あぁあ・・・あたしの服が・・・せっかく陽太郎があたしに買ってくれた服が・・・。よくも・・・よくもよくもっ!」
 敵陣から飛んできた花火が、イブの服に当たって焦げてしまう。
「そういう服はこういった場所に着てくるものじゃないのに・・・」
 ふぅっと呆れたため息をつく陽太郎の傍ら、イブは怒りの炎に燃えていた。
 逆上したイブは砲台にセットされた花火を火術で、一斉発射させていく。
「あわわっ、危ないでござるな。見方の拙者にも当たってしまいそうでござる!」
 撃ちまくるイブの花火に、西軍の人々がいる付近から空を飛んでいるエー テン(えー・てん)は回転しながら間髪避ける。
 敵軍の後方へ回り込むのと同時に、低空飛行の体勢時にテクノは水爆弾を投げつけ、砂煙に紛れ込みエーから飛び降りて潜入に成功した。
 エーは2度リターンして水爆弾で爆撃した後、花火に当たらない位置に身を隠し、テクノを回収して戻るための持久力を残すことにする。
「いったた・・・よくもやってくれましたね!」
 爆撃された拍子に砂の上に尻餅をついてしまったレロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)は、砂煙で見えなくなった相手に対して怒鳴り散らす。
「やられっぱなしなのも癪です・・・。フッ・・・フフフ・・・アッハハハ」
 地面からゆらりと立ち上がったネノノ・ケルキック(ねのの・けるきっく)が不適な笑みを漏らした。
「えっ・・・あぁあっ!?」
 レロシャンが小さく声を上げると、ネノノは怒りに暴走して敵陣に突っ込んでいく。
「ちょっと待ってぇええ!これじゃあ、真っ先に映画とかで天へ召されちゃう人になっちゃいますー!」
 気づいたら手ぶらのまま、レロシャンも敵陣に向かっていた。
「というか私もですかぁあっ」
 自分自身に突っ込みを入れ、彼女は後悔の悲しみに涙する。
 ネノノの狂気に満ちた赤色の瞳は、もはや東軍基地しか見えていなかった。
 彼女たちは飛び交う爆炎に吹き飛ばさた拍子に気絶してしまい、あえなく戦場に散ってしまった。
「ややっ負傷がいるであります!」
「おやおや、早くも犠牲者がでたようだね」
 真紀とサイモンの2人は、負傷者の少女たちをタンカーの上に乗せてやり救護テントの方へ運んでいく。



 戦争開始から30分後。
 東軍に向かって朱 黎明(しゅ・れいめい)が思いつく限りの罵倒をする。
 砲撃から逃れつつ、陣の辺りに潜伏していそうな西軍の人間を探す。
 怯えながら攻撃の機会を窺っているゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)の姿を見つけた。
「降伏しますー!」
 黎明はゴットリープに向かって大声で白旗を振った。
「―・・・あぁビックリしました。こちら側に降伏なさるんですね」
「えぇ、そちら側で最善を尽くさせていただきます」
 まったく裏のなさそうな爽やかなゴットリープへ笑顔を向ける。
「では一旦戻りましょうか」
「そうですね」
 心中ではしてやったりと、黎明はほくそ笑んでいた。



 暗闇から2匹の獣、一色 仁(いっしき・じん)昴 コウジ(すばる・こうじ)が、戦場に群れる東軍の子羊を狙っていた。
 コウジの方は小汚い体操ジャージを着て、頭には黒字でパ平連と書いた工事用ヘルメットを被っている。
 さらに汗拭きタオルで口元を覆っている姿は、活動家気取りのつもりの格好だった。
「一体何をしようとしているのですか?」
 ライラプス・オライオン(らいらぷす・おらいおん)が女子に悪さをしようとする2人に背後から声をかける。
「―・・・うぁあっ!何だオライオンでありますか・・・、驚かさないでください・・・てっきり敵陣の人間に気づかれたのかと思ったであります」
 一瞬敵陣の女子に感づかれたのかと思ったコウジは、目を丸くしてビクッと身を震わせた。
「あっごめんなさい、襲撃する機会を見計らっていたのですね」
 彼らが最悪な行為をしようとしていたのに気づかないのか、ライラプスはしゅんと顔を俯かせてしまう。
「攻撃するならこそこそ隠れないで、こうやって堂々とするものですわ!」
 反撃に臆することなく手拭とゴーグルで顔を覆ったミラ・アシュフォーヂ(みら・あしゅふぉーぢ)は、麦藁帽子を被りなおして堂々と東軍の人たちに姿を見せる。
 ワサビとカラシをたっぷり塗りこんだ手袋を両手にはめている。
 次々と敵陣の人間の顔を、その手袋でチェインスマイトのスキルを発動し2度撫でていく。
「オォッホホホ!あなた方の今まで生きた人生をとことん呪うといいですわぁあ!」
 ミラは高笑いしながら犠牲者を増やしていく。
「よし・・・この隙によさげな女子を・・・」
「あの子なんかいいんじゃないか?」
 仁が指差す先には、夢中で花火を発射させる魔女の少女イブの姿があった。
 ターゲットに気づかれないよう、そっと近づく。
「もうっ、また服を焦がされたわ!」
 苛立ち紛れにイブは力任せに手にしているロケット花火を振り回し、忍び寄る2人の脇腹にヒットしてまとめて50mほど先へ飛ばす。
「場外ホームランまではいかなかったようですわね」
 パートナーが鉄棒で飛ばされたのにも関わらず、ミラは暢気に状況を見る。
「まったくもう、こういう戦いの時くらい漢しく戦いなさぁあいー!」
 侵入者に気づいた桐生 ひな(きりゅう・ひな)が、たっぷりマヨ醤油の入った袋を花火につけ、仁に向かって発射させた。
 爆発で破裂した袋からマヨ醤油がベシャッと仁に降りかかる。
「びゅーんでづばばーんでしたよね」
 牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)もコウジに向けてマヨの入った風船をつけた花火を放つ。
「自業自得であろうな・・・」
 アルコリアの傍らで見ていたシーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)が、ため息混じりに言う。
「あぁっ・・・コウジったら・・・」
 ライラプスは砂の上で伸びているマヨまみれのパートナーの姿に涙する。
 ミラとライラプスは互いのパートナーを引きずりながら、西軍の陣へ戻っていく。
 混乱に乗じて禁猟区で襲いかかる花火を避け、笹原 乃羽(ささはら・のわ)が東軍側へ向かってくる。
「あっははは、やーりぃー!また来るからねー♪」
 3台の砲台を仕込み竹箒で叩き壊し、ロケット花火を紐で足にくくりつけて台を蹴るのと同時にライターで花火に着火した。
 花火の反動を利用して飛び去っていった。