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トリック・オア・トリート~イタズラっ娘は誰ですか?!

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トリック・オア・トリート~イタズラっ娘は誰ですか?!

リアクション

 たくさんのお菓子にちょっと不気味な飾り付け、ハロウィンは子どもたちの天国だ。子どもの好きなモノがてんこ盛り。もちろん、何もなくてもムダにテンションの上がる子どもたちのメモリはいっぱいいっぱいだ。
「とりっくおあとりーとー!」
「とりーとー!」
 崩城 理紗(くずしろ・りさ)崩城 ちび亜璃珠(くずしろ・ちびありす)は、ここぞとばかりに走りまわって、お菓子を手に持っている女の子に半端ない奇襲をかけている。お菓子くーださーいなっ!!
「じゃあ、どちらがたくさんお菓子をもらってこられるか、競争にしましょうか」
 崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)がそう言ったのが、2人の闘争本能に火をつけた。
「トリックオアトリックですわー!さぁ、おとなしくイタズラされて下さいませー!」
 ロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)の闘争本能も違う方向に火がついたようだ。ある意味、いつも通りとも言えるが。……普段から本能のまま?
「ロザリィは競争しなくていいわよ」
「それじゃ、わたくしはご褒美をもらないですわー!」
 じたばた、と暴れるロザリィヌ。せっかくの亜璃珠とお揃いのサキュバス衣装が色っぽく見えない動きだ……。
「ふふったまには妹孝行も良いでしょ。私たちもたまにはゆっくりしましょ」
 亜璃珠は、走り回る妹たちを嬉しそうに見つめていた。
 そして、走り回るちびっこを、うらやましそうに見つめる一人の男……。いいなぁ、パーティーをあんな風に楽しめるなんて。嫉妬の方向がヘンなところに向かっているのは、パーティーに来た早々、後悔して凹んでいるリュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)だ。お菓子にはしゃぐ子どもをうらやましがっているなんて、相当終わっている証拠だっ!
(あぁ……、なんでこんなかっこで来ちゃったんだろ)
 後悔の源は、アイドル魔女リュ子の仮装。ツインテールにハートのステッキ、どこからどう見ても可愛い女の子☆っていうことは……そう、女装だ。女装はいい。パーティーだし、楽しければ。ただ、それは好きな娘がここにいなかったらの話し。誰が好きな娘に女装を見られたいものか。なんでいるんだよ、理沙ちゃーーん!
 白波 理沙(しらなみ・りさ)の姿を見られるのはものすごくうれしいものの、こちらは姿を見られたくない……。はっ!ストーカーになればいいんだ!!チガウ。忍者だ!イヤイヤ。……隠れよう。しょんぼり。
(あぁ……、なんでこんなかっこで来ちゃったんだろ)
 本日何回目の同じ呟きを繰り返しながら、リュースはがっくりと裏庭へと消えて行った。

 ちびっこ2人が元気よく走りまわっている姿を見つめている死神がいた。黒霧 悠(くろぎり・ゆう)は、崩城 理紗(くずしろ・りさ)の命を狙っているのだった。……ウソ、それは大げさだった。せっかく死神の仮装をしているのだから、パートナーをちょっと驚かせたい。悠は、ちょこちょこと走りまわっている理沙とちび亜璃珠に声をかけるタイミングを考えていた。それにしても動きが速いっ!観察していたら、目が合ってしまった。
「とりっくおあとりーとー!」
「とりーとー!」
 お菓子集め競争をしている2人は、すでにお菓子を持っていない人までターゲットにし始めている。どかっ!どすっ!と悠にも体当たりだ。
「えーと、それじゃイタズラのほうで……」
 悠は選択すると、理沙の身体をちょいとつかみ、死神の鎌を当て、フフフと妖しげな笑い声を立てた。ちび亜璃珠の動きが止まったっ!理沙はきょとんとしている。
「お前の命をもらい受けよう……」
「ちびちゃん、ごー!」
 悠がイタズラを選択したのだと悟ると、理沙とちび亜璃珠のテンションは跳ねあがった。イタズラは戦いだーっ!と2人で悠へと襲いかかる。わーい、戦いごっこだー。
 いくら軽いとは言え、まさか反撃してくるとは思わなかった2人がいきなりのしかかってきたので、悠は尻もちをついた。痛くはないが、ちび亜璃珠はぽかすかと殴ってくる。子どもは加減を知らないからもー。
「ふふっイタズラを選択したんでしょ。ごめんなさいね」
 崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)が現れて、妹たち2人を止めた。イタズラを選択されたら、ただちに反撃することになっていたようだ。亜璃珠は悠の手を取って、引っ張り起こした。

 ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)は、みんなが楽しそうに談笑しているパーティーをきょろきょろと見まわしながら、こっちのパーティーはいいなぁ、と考えていた。地球にいた頃のパーティーはいつも、堅苦しくて楽しくないものばかりだった。自分のパートナーはどこにいるだろう?ミューレリアは、パートナーを見つけだして、一緒にダンスがしたかった。堅苦しい礼節ばかりを重んじるようなパーティーではなく、心から楽しめるダンスが出来たらいいな♪ミューレリアは胸のカードナンバーを確認しながら歩いた。カードで出来ているカップルもいれば、友だち同士なのだろう、カードナンバーとは関係なく歓談している人たちも多くいる。
 如月 日奈々(きさらぎ・ひなな)も、百合園の女の子たちと談笑している一人だった。控えめに笑っている姿がいかにも大和撫子。ミューレリアは、カードナンバーを確認すると、思い切って日奈々に声をかけた。
「はじめまして、ですぅ…。こちらこそ、よろしくお願いしますですぅ…」
 日奈々の穏やかな話し方に、ミューレリアはなんだか落ち着いた気持ちになった。パーティーでちょっと浮かれていたのもあるかもしれない。日奈々はダンスは初めてだというので、しばらくそのままお話しすることにした。ミューレリアは後で、ちゃんとリードして、ダンスの楽しさを日奈々にも知ってもらいたいと思った。
「私にも、後でダンスを教えてもらえますか?」
 {SFM0004185#ロザリンド・セレナ}はミューレリアに言った。もちろん、大歓迎!
「ダンスの時には、義手は取らないとだめですよっ♪」
 フック船長の仮装をしているロザリンド・セレナは、愛らしくふふっと笑った。
「もちろん。なるべく優雅に踊れるようにがんばります」
 カードパートナーはすでに見つけてあった。彼女はダンスが上手だろうか?自分が頑張ってリード出来たらいいな。
 ダンスを楽しみながら踊れるように、ミューレリアはどうやって教えようかな?と考えていた。

 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は、一度見つけたカードパートナーを見失ってしまったので、ひとまず食事を楽しむことにした。百合園の見知ったお友達も多く、見ているだけでも楽しかった。小夜子のお相手である鈴倉 虚雲(すずくら・きょん)は、普段はなかなか出会う機会のない百合園女学院の乙女たちに囲まれて、緊張していた。女の子がいっぱい。このシチュエーションで緊張しないやつなんて男じゃない。緊張するとトイレに行きたくなるのは、みんな一緒だけど、迷子になるのはみんな一緒ではないだろう。ここはどこだろう…?女の子とダンスパーティーのはずが、巨大屋敷で迷路じゃあ、せっかくここまで来た意味がない。
 すでにパーティーが始まっているせいか屋敷内に人影は少ない。大きな屋敷なので、単純に人に遭遇しにくいというのもあるかもしれない。ともかく……えーと、どちらの方角に迎えが良いんだ?
 薄く開いた扉の向こうから、小さく人の声がする。虚雲がそっと覗いてみると、立派なピアノやヴァイオリンなど、楽器がずらりと並んでいる。パーティーの参加者だろうか、男の子と女の子が2人でしげしげと楽器に見入って、時々何かぼそぼそと話しをしていた。なんだか2人の間には壊しがたい雰囲気があったものの、いつまでも迷子でいるのはイヤだと、思い切って話しかけた。ゴシックなロングドレス姿の可愛い女の子が、正確に広間への道を説明してくれたので、無事に広間に帰りつき、パートナーにダンスを申し込むことが出来た。

 ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、可愛らしいかぼちゃの形をした王冠をつけて、ユカイに笑っているかぼちゃがドット柄風のかぼちゃパンツを身につけて、きりっとした表情で、自分のパートナーにダンスを申し込みに行った。こうして見ると、いつも通りひとつにくくられた髪も、きゅっとカッコイイ…というか、やっぱり可愛い。
「晃代ちゃん、ボクとおどってくれますか?」
 男役としてリードしようと張り切っているヴァーナーに、素直にはい、と答えて山田 晃代(やまだ・あきよ)は手を差し出した。王子様なら、チューだよね♪ヴァーナーはその手にちゅっと唇を近付けて、ダンスするために広間の中央へと晃代を連れ出した。
 えっと、1・2・3、1・2・3、ダンスの男役というのは、リードする分大変だ。自分よりも少し背の高い晃代の肩をそっと引き寄せて、頭の中でステップを繰り返す。1・2・3、1・2・3……。そんなヴァーナーを晃代は可愛いなと思って見ていた。物語の中の王子様ってこういう優しい感じだよねっ!視線に気付いて、ヴァーナーは声をかけた。
「その仮装、とってもかわいいです」
 かぼちゃの魔女の仮装をしている晃代とヴァーナーは、なんだか本当にペアみたいだった。2人はお互いの格好を見て、にっこりと笑顔を交わした。

 パーティーが始まってもなかなか姿を現さない変熊 仮面(へんくま・かめん)七瀬 歩(ななせ・あゆむ)は密かに心配していた。うーん……。あたしの招待状、見てくれなかったのかなぁ。ローレライの魔女の仮装をした歩は、友だちのヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が、かぼちゃ王子姿で女の子をリードしている姿を認めていた。うん、なかなか決まってるねっ!男役として一生懸命リードしてても、やっぱり可愛いヴァーナーの姿を、歩は微笑ましいなと感じていた。
 そんな歩の心配をよそに、当の変熊仮面が何をしているのかと言えば……見事に道に迷っていた。門から素直に送迎の馬車に乗ればよかったのだが、やはりこの姿を見咎められてもマズイか……、とこっそりヴァイシャリーの敷地内に侵入したまではよかった。しかし、ここはどんなに広いと言ったところで個人の邸宅。ラズィーヤの屋敷の案内図が出ているわけではないのだ。それでも、パーティーの開始時刻の17時、時計台の鐘が鳴った後に響いた花火の音でたいたいの場所はわかった。そこまでの距離がこんなに長いとは思わなかったっ!パーティーが終わってしまったらどうしよう、そう変熊仮面が不安になった頃、小さく音楽が聞こえ始め、薔薇の花壇の中に一人の美しい少女が目についた。花壇にしゃがみ、薔薇を眺めている後ろ姿には、黒猫のしっぽが揺れている。
「美しいお嬢さん、お手をどうぞ」
 変熊が声をかけると……、きゃーーーーーーーーーーーっ!!!!!
 島村 幸(しまむら・さち)は、さすがにびっくりして顔を覆った。全裸をマントで包んでいた変熊仮面、マントを押さえていた手を差し出したとなると、幸の顔前には……、想像がつくよね?
「幸っ、どうした…っ!?ぅあっ!!変熊!何してる」
 取りに行っていたのであろう飲み物を手に、ガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)は幸の悲鳴を聞きつけて、駆け付けた。
「あれ?幸だったのか。いつもと雰囲気違うから、わからなかった!ところで、ガートナ、道を尋ねたいのだが…」
 いいから、前を隠せ。ガートナのちょっと冷たい視線にもめげず、変熊はラズィーヤの屋敷の場所を聞き出すことに成功した。