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アーデルハイト・ワルプルギス連続殺人事件 【前編】

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アーデルハイト・ワルプルギス連続殺人事件 【前編】

リアクション

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 如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)とパートナーの二人の機晶姫、ラグナ アイン(らぐな・あいん)ラグナ ツヴァイ(らぐな・つう゛ぁい)が、気を取り直して調査を行う。
 「殺しても生き返るって、緑のキノコでも食い溜めてんのかこの人は……。ともかく、どうせ生き返るから殺しても良いなんて考えは、人道に反してるよなぁ。犯人にはしっかりと灸を据えてやるか。……でも俺たちが探偵ごっこする必要あるのか? 二人とも……」
 「ちょっと不謹慎ですけど、私、一度探偵をしてみたかったんです! 佑也さん、ツヴァイ。火曜日の2時間ドラマのノリで、ばばーんと解決しちゃいましょう!」
 「なにやら楽しそうな事件が起こってますな。姉上、兄者。ここは軽く解決してボクらの力を見せ付けてやりましょう」
 アインとツヴァイは、完全にノリノリであった。
 ツヴァイは、インバネスコートに鹿撃ち帽、玩具のパイプを咥えた探偵コスプレをしていた。
 「……やっぱり、こういうのって本職の人に任せた方がいいんじゃないか?」
 そう言いつつも、佑也は、聞き込みを開始し、特に殺された本人であるアーデルハイトには念入りに情報を聞き出そうとしていた。
 「胸に致命傷があるってことは、撃たれる瞬間に犯人の姿見てたんじゃないですか?」
 「いや、姿は見えなかった。まず胸を撃たれ、その場で復活したら背後から撃たれたのじゃが、犯人は目の前にいたはずなのに、私は声しか聞いておらんのじゃよ。おそらく何らかの手段で姿を隠しておったのじゃろう」
 雰囲気を出すために、菫やパビェーダと同様、現場を「KEEP OUT」のテープで封鎖したり、床にチョークで人型を描いたりしていたアインが、推理を披露する。
 「凶器が銃であったと判断するのは早計です。聞いたことがあります……地球には指先一つで人を殺傷できる暗殺拳法があると!」
 「なるほど、ボクは、パートナーの死体を見ても淡白な反応しかしなかったエリザベートが怪しいと思ってましたが、さすが姉上! 博識ですな! 齢七つにして魔法のプロであり、世紀末拳法家でもある……末恐ろしいお子様ですな」
 ツヴァイは、盛大な勘違いをしたまま、エリザベートに近づき、手をとる。
 「この指をババァの秘孔にシュウゥゥゥ!」
 「もう、ツヴァイったら。ババァなんて乱暴なこと言っちゃいけません。まだまだ現役ですよね、アーデルハイトさん?」
 「いや、『チャン』を父親の意味と解釈してる辺り、充分に歳食って……ゲフンゲフン」
 アインがとりなすが、佑也がついツッコミを入れてしまい、アーデルハイトににらまれて咳払いする。
 「何言ってるんですぅ?」
 ツヴァイが、怪訝な顔のエリザベートの頭をナデナデする。
 「キャラがかぶってるとか自分よりキャラクエで人気あるとか、そういう嫉みが募って犯行に及んだんでしょうな。安心なさい。ロリババァより真性ロリの方が需要あるさ」
 「いいがかりですぅ! 別にキャラかぶってないですぅ! だいたい、わたしのほうが超ババ様より人気ありますぅ!!」
 「誰がロリババァじゃ!!」
 エリザベートとアーデルハイトが同時に魔法を放ち、ツヴァイもまた、お星様になるのであった。
 
  そのとき、エリザベートの衣装ダンスの中から高笑いが響いた。
 タンスが、内側から思い切り開かれる。
 「話は聞かせてもらった! 美少女探偵MADOKAここに推参!」
  桐生 円(きりゅう・まどか)は、タンスの中から華麗に回転ジャンプすると、アーデルハイトの死体の上に着地し、思いっきり上半身をそらして胸をアピールし、右手を顔の前に、左手を後ろに反らして、片足立ちでもう片方の足は膝まで曲げてつま先立ちでポージングした。
 なお、本人は豊満な胸を強調しているつもりだが、実際はとても貧乳である。
 続いて、円のパートナーの吸血鬼オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)と、同じく円のパートナーで英霊のミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)が、ゆっくりとタンスから出てくる。
 「どうしてわたしのタンスに入ってたんですかぁ!?」
 3人とも、エリザベートの質問には答えない。
 オリヴィアは、円の立っていた死体をごそごそあさると、ぼそりとつぶやいた。
 「……ピンク」
 そして、アーデルハイトの死体から、紐のような衣装を取り出すと、ポケットにしまい、死体を担ぎ上げる。
 「こ、こら!! 何をしておる!!」
 「うるさいわねぇ〜、今狙われている事とぉ〜、死体どっちが大事なのよぉ〜、TPOをわきまえなさいよぉ〜、今やらなきゃいけない事があるでしょぉ〜」
 アーデルハイトがわめくが、オリヴィアは強引なマイ理論でガン無視を決め込む。
 「まずは状況を把握するのが一番だ、現場を再現してみよう。アーデルハイトくん、ここに立ってくれたまえ」
 「私は今こやつと話をしておるのじゃ!」
 「いいから早くしてよ! 事件を解決する気がないのかい!?」
 「む、むむぅ……」
 円の剣幕に、アーデルハイトは渋々従い、自分が撃たれた場所に立つ。
 円はハンドガンを取り出し、至近距離からアーデルハイトを射殺した。
 「はい、このように、至近距離から撃たれたわけだ、みんな質問はあるかな?」
 「質問っていうか、何やってるんだ!?」
 「ちょ、婆さん!? また死んじゃった!?」
 佑也と菫が慌てるが、アーデルハイトがまたしても復活して戻ってくる。
 「おいなんのつも……」
 「えっ? まだ解っていないの? 仕方ないな、アーデルハイトくんまた定位置にお願いするよ」
 「あ、ああ、わかった。……あ」
 円は、あくまで真面目にマイペースに、再びハンドガンを発砲し、アーデルハイトはまた射殺された。
 なお、悪意はないと思われる。……多分。
 そのころ、ミネルバは暇だったので、トレジャーセンスでエリザベートの下着を発見していた。
 「オリヴィア! オリヴィア! 見つけたよ! エリザベートのしょうぶしたぎ!」
 「よくやったわぁ〜、ラベルをちゃんと貼ってこのパックの中にいれておくのよぉ〜」
 ミネルバはオリヴィアに頭をなでなでされる。
 「あ、マスター! ボクもがんばってるのに!」
 その様子に、円はちょっと嫉妬する。
 「おぬしら、許さんぜよ!」
 セーラー服姿の小次郎が、円達に宣言する。
 ただ単に決め台詞を言いたかっただけである。
 「天良 高志(てんら・たかし)、ただいま参上っ! この事件、僕も巻き込ませて貰うよ。お前のやったことは全てまるっとお見通しだ!」
  高志も決め台詞とともに現れ、円に攻撃する。
 「ぐはっ!?」
 高志の不意打ちに、円は吹っ飛び、校長室の窓から落下していった。
 「あ、しまった、真犯人を取り逃がしてしまった!」
 探偵役のつもりだったのに、犯人というか、自称「美少女探偵」をぶっ飛ばしてしまい、高志は慌てて窓に駆け寄る。
 「こうなったら、検死をするよ。君、ちょっとそのアーデルハイトさんを貸して」
 高志は、お持ち帰りモードのオリヴィアから、アーデルハイトの死体を奪い返す。
 「やだぁー、なにするのぉー」
 「あなたこそ何してるですぅ!!」
 「いいかげんにせんか!!」
 オリヴィアとミネルバは、エリザベートとアーデルハイトの魔法で窓から吹っ飛ばされ、円ともども校長室の窓から落下した。確保した下着も、すべて魔法によって灰になる。
 「あぁー、もったいないぃー」
 「おたからがー」
 オリヴィアとミネルバが叫ぶ。
 「お前も、検死とかしなくていいからな」
 アーデルハイトが、高志から死体を取り上げる。
 「何言ってるんですか、検死は殺人事件には非常に重要な……痛い痛い、杖で叩くのはやめてください! 遺体だけに!」
 「……」
 「なんで黙るんですか!?」
 
 そんな中、「パラミタのホームズ」こと剣の花嫁の漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)は、事件を前にやる気であった。
 「真実はいつも一つ」
 「月夜、俺は早く帰ってご飯の準備したいんですけど」
 一方、パートナーで「パラミタのワトソン」こと樹月 刀真(きづき・とうま)は、まったくやる気が出ない。
  月夜はいきなり、刀真に銃を向ける。
 「えーと月夜、何で俺にそんな物騒な物向けてるの?」
 「刀真が犯人」
 「俺が犯人なんですか……いやナイナイ」
 刀真は顔の前で手を振ってみせる。
 「こうすれば事件解決って本に書いてあった」
 「何々『真犯人の仕立て方、これであなたも名探偵』……エッ? ナニコレ」
 月夜が先日購入したその本には、「適当な人に銃を向けて『お前が犯人だ』と言えばOK、否定されそうになったら引き金に指をかけましょう」と書かれていた。
 「お前そんなくだらない本を買う為に食費を使い込んでんのかよ!」
 「くだらなくない、実際事件解決めでたしめでたし」
 「解決してねえめでたくねえ! その『名』の所を『迷』に書き直せ!」
 刀真は怒っているので普段と違い、口調が荒くなっている。
 「お前最近本ばっかり読んで運動して無いだろう、体重どれだけ増えたんだっ……うおっ」
 「……当たれ」
 「ぐはっ!?」
 「危なっ!? ホントに撃つなよ! 誰かに当たったらどうするのさ!! って当たってるよ!?」
 アーデルハイトが、またしても床に倒れていた。
 「……お前が犯人か!」
 刀真に指さされた月夜は、悲しそうに首を振って言う。
 「違う私は犯人じゃない、これは不幸な事故」
 「不幸じゃないし事故でもない、どう考えてもお前のせいだよ! 謝っとけ」
 「ごめんなさい」
 90度頭を下げて、月夜は謝罪する。
 「お、お前ら、さっきからいいかげんにしろよ!?」
 それからしばらくの間、2人にアーデルハイトによるお説教が続いたのであった。
 「なんで俺まで怒られるんですか?」
 「うるさい! パートナーへの責任不行き届きじゃ!」
 「刀真、私の責任者?」
 「……月夜、お前、もう黙れよ」