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第1章 アキバ分校突入!

「なんだってアキバ分校なんだ…!!」
 山葉 涼司(やまは・りょうじ)がアキバ分校に近づくと、つんざくような悲鳴と怒号が聞こえ、校門から次から次へと生徒達が転がるように走り出てくる。
「大丈夫か!?」
 涼司は慌てて一人の女生徒に駆け寄った。
「山葉さん! …た、大変です、恐ろしい化け物が現れて…まだまだ、生徒達が校内に居るんです! 助けて下さい!」
「なんてことだ…わかった。君たちは早くここから離れるんだ!」


 事件を聞きつけた生徒達が次から次へ、援軍に駆けつける。
 騒動を聞きつけ生徒達の救援に駆けつけた神野 永太(じんの・えいた)とそのパートナーの燦式鎮護機 ザイエンデ(さんしきちんごき・ざいえんで)もそのなかの二人だった。
「悪魔が人間を襲うなど、ありきたりだわ。そんな自然の摂理、放って置けばいい。いずれ魔は、聖者を気取った人間に滅されるのだから」
 ザイエンデは渋るが、しかし、と永太はいう。
「救いの手を求めてる人が居るのに放っておくなんて非情な事、できないですよ」
「救いの手を差し伸べる権利があるのは、私達だけじゃない」
 ザイエンデは分校に駆けつける数多の生徒を見、言う。
「彼らが救ってくれるわ。……たかだか悪魔が暴れてるくらいで、大袈裟なこと」
 分校の校門前で二人の押し問答が続き、時間を浪費してしまう。
 業を煮やした永太は、
「もう、いい。自分は行きますよ。君はそこで待ってればいい」
 校舎に向って駆け出していく永太。援軍に来た生徒達もそれに次々続いていく。
「突入だ〜!!」



 閃崎 静麻(せんざき・しずま)はハンドヘルドコンピュータを身につけた涼司と行動を共にしていた。
「涼司、俺はインプを徹底的に排除する。その後を付いてこい」
「まかせたぜ、静麻!」
 一流の射撃の腕を持っている静麻は、サガンとアロケルを倒す生徒達のために、インプを徹底排除することにした。
「たく、どこぞの転生物語じゃないんだ、悪魔の皆さんには早急にお帰り願おうか。1階から行くぜ…」
「静麻、私が露払いの役を引き受けます、援護をお願いします。サガンやアロケルはいませんね?」
 静麻は、サガンに遭遇しても直接目を合わせることがないよう、携帯の撮影機能や鏡などで曲がり角ではかならずチェックをしていたのだ。
「了解。このフロアにはサガンやアロケルはいないようだが、インプがうようよしてやがる。気をつけろよ」
「ありがとう、静麻」
「レイナのサポートはクリュティがいたしますな」
「クリュティ、お願いね」
 クリュティ・ハードロック(くりゅてぃ・はーどろっく)の言葉にレイナと静麻がうなずく。
 レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)は静麻が光条兵器のバトルライフルをSモード固定し、援護射撃をしている中、走り出したかと思うと、一撃必殺、ヒットアンドアウェイ方式で次から次へとインプを叩きのめしていく。そのレイナをクリュティがサポートし、襲いかかってくるインプたちから、レイナや静麻を守る。
(悪魔を倒したら表彰ものだけれど、静麻はそんなことは望まないわね…私にできることは、そんな静麻の力になること)
「凄い、レイナお姉ちゃん…」
 閃崎 魅音(せんざき・みおん)はただ、レイナの戦う姿に見とれるだけだった。
「魅音、ヒールをお願い」
「まかせておいて!」
 レイナはそのフロアにいたインプを倒すと、上がった息を整えながら、魅音にヒールを施して貰っている。
「このフロアのインプは殲滅した。あとは上に上がっていこう。悪魔と戦う連中のためにも、インプは一体でも多く潰しておきたいからな」
 静麻はバトルライフルを抱え直すと、その言葉に他の三人がうなずく。
 
 
 
 とは言え、学生たちはまだパニック状態に陥っていた。インプたちが次々に一般生徒たちを捕獲し、精気を吸い取り続けていたのだ。まったりした雰囲気だったアキバ分校はすでに、阿鼻叫喚の地獄と化していた。インプがまさに一人の生徒を捕まえ、精気を吸い取ろうとしたその時だった。
「お前らの相手は俺がしてやるぜ、雑魚悪魔ども」
 葛葉 翔(くずのは・しょう)が大きな声をあげて、自分の方にインプたちの注目を集め、グレートソードを振りかざして、インプを次々となぎ倒していく。一瞬インプたちは怯んだが、倒すべき敵と認識したのか一般生徒たちを放り出して翔目掛けてわらわらと集まってくる。
「よし、その調子だぜ、かかってこい!」
 翔は自分にインプたちが引きつけられているのを確認すると、きびすを返し、しかし速度を上げすぎない程度に逃げ出す。
「さぁ、今のうちに。 こっちよ」
 アリア・フォンブラウン(ありあ・ふぉんぶらうん)がインプたちの魔の手を逃れることができた生徒達を、そっと安全な方へと誘導にかかる。
 翔は一般生徒を逃がすために、わざと囮になったのだ。とはいえ、恐怖の余りに動けずにいる生徒たちもいる。
 アリアはそれでも笑顔を絶やさず
「大丈夫よ。私と翔クンがみなさんを守るもん!」
 ぶかぶかでサイズの合わないフルプレートアーマーを着込んだ美少女の笑顔に、生徒達はバランスの悪さとほほえましさを感じて、ふふっと笑みをこぼした。
「あ、危ない!」
 インプがアリア目掛けて襲いかかってきたが、アリアは右腕一本でそのインプをなぎ払ってしまう。フルプレートアーマーで覆われた腕でなぎはらわれたインプは、「グシャリ」と音を立て、廊下を二転三転して吹き飛び、壁にぶつかると動かなくなった。
「大丈夫か、アリア!」
 生徒達が悪魔に襲われないよう、逆方向で戦っていた翔が声を上げると、アリアはにこっと笑った。
「これくらい、問題ないもん! 生徒のみなさん、早く逃げて! …翔クン、私達も逃げますよ!」
「よっしゃ! 悪魔たちはあとのお歴々に任せて、俺たちも退散するぜ! 他に取り残されている生徒がいないか、チェック怠るなよ、アリア!」
 翔はグレートソードをぶん! と一回転させ、インプたちを圧倒すると、そのまま素早く退散し始めた。