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【海を支配する水竜王】その女…卑劣な声音

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【海を支配する水竜王】その女…卑劣な声音
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第3章 その思いは猛々しく

「オメガちゃんを悲しませた人たち、ファイ、怒ったのですーっ!」
 黒色の双眸に怒気を込め、広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)は小型飛空艇のハンドルをぎゅっと握り締める。
「捕まえたら、絶対オメガちゃんに謝ってもらいますですからねーっ!!」
 薙刀の柄を握り東門へ向かう。
「ボクが視界を封じている隙に倒しちゃえっ」
 ウィノナ・ライプニッツ(うぃのな・らいぷにっつ)がゴースト兵の群れに向かってアシッドミストを放つ。
「ありがとうウィナノちゃん!」
 ハンドルから手を離し、ファイリアは兵に刃の切っ先を向ける。
「悲しませる人たちを捕まえるためななら、手荒なことだってするです!」
 怒りの刃を振り回し、機関銃で狙う相手の手首を斬り落とす。
 ベシャァアアッ。
 斬り落とされた手首が地面へ貼りつくように落ちる。
「ファイ・・・前きた時とはなんか雰囲気がちょっと違うね」
 ウィノナは臆せず挑むファイリアを横目で見る。
「これなら油断しないでなんとか頑張れそうかな」
 ゴーストに対する恐怖心を、怒りの感情により押さえ込んだのだと感じた。
「ボクたちも頑張らなきゃ、いくよウィル!」
 ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(うぃるへるみーな・あいばんほー)の白馬を孤島へ運ぶために、ウィノナは自分の飛空艇にロープで馬の胴体を機体にくくりつけている。
 馬を地上に降ろそうとウィノナが火術でロープを焼き切った。
 ファイリアの飛空艇から飛び降りたウィルヘルミーナが白馬に跨る。
「氷炎の貴公子、ウィルフレッド・アイヴァンホーが分霊、ウィルヘルミーナ!我が剣の錆になりたい者からかかって来るがいい!!」
 バスタードソードの刃をギラつかせ、ターゲットの胴体を薙ぐ。
「ゴースト兵が生徒さんたちに気を取られている隙に入りますわよ!」
 施設内へ侵入しようとフィリッパたちが駆け込む。
「何人か無事に入れたようだね」
 ウィノナが傍にいるファイリアに小声で話しかける。
「なんとか気づかれていないようです」
 薙刀を構えたままファイリアは彼女たちが入っていった門の方を見ずに言う。
「あ、入れてない生徒が近くにまだいるようだよ」
 生徒たちが隠れて様子を窺っていると、ウィルヘルミーナは南門側の岩場へ馬の身体を向ける。
「確実に侵入させるなら、煙幕ファンデーションよりも術のほうがいいね」
 ウィノナは岩場の周囲と門の前に、酸濃度のないアシッドミストを放つ。
「術の霧で入りやすくったね」
 入るタイミングを窺っていたミサがニヤリと笑う。
「ならば今のうちに!」
 水海はミサの手を引き、南門の方へ走る。
「くそっ、何も見えん。誰か入り込もうとしていないか入り口を警戒しろ!」
「おっとあなたたちが行く先は向こうではない」
 門へ行こうとする兵たちを、白馬に乗ったウィルヘルミーナが阻む。
「邪魔をするな小娘。退かないと、銃弾の餌食にしてやるぞ!」
「やれるものならやってみなさい」
 慣れた手綱をさばきで馬を操り、足元を狙う銃弾を避ける。
 片手で剣の柄を握り、機関銃の銃弾が腕を掠めようが臆せず無慈悲に斬り伏せる。
「いったみたいですっ」
 ミサと水海が無事に門から侵入したと、ファイリアはウィルヘルミーナの傍に行き伝えた。
「そうですか、よかった・・・。でもまだ侵入出来ていない生徒さんたちもいるでしょうから、もう少しここで引き付け役をやりましょう」
 べったりと血糊がついた刃を振り払うウィルヘルミーナが、生徒たちのために侵入の手引きを続けようと言い、ファイリアとウィノナはこくりと頷いた。



「もうすぐ目的地点だな」
 天城 一輝(あまぎ・いっき)は小型飛空艇のハンドルを握り、島から2km離れた位置で高度を最大まで上げる。
「大砲があるのか・・・あれに狙われたら厄介だな」
 島の上空から砲台の位置を確認した。
「東門あたりに兵が群がっているな」
 敵に気付かれないように、太陽を背にしたまま高度500mをキープし、ゆっくり降下して敵兵の動きを双眼鏡で様子を見る。
「何人か侵入できてない生徒もいるのか。外壁銃がまだ修繕されていないから、東側を狙って侵入しようしているようだ」
 別の門へ引き寄せようと空を見上げ、眩しそうに太陽の位置を確認する。
 機関銃や機体に迷彩塗装を施して見えなくする。
「何か空に誰かいないか?眩しくてよく見えんな・・・」
 建物の屋上から兵が望遠鏡を覗き、一輝の姿を発見した。
「上手く姿を隠したつもりだろうが、自分自身までは隠れきれていないようだな。ちくしょう、目がやられた」
「だったらオレが代わりに撃ち落としてやるぜっ」
 別の兵が駆けつけ、機関銃の銃口を一輝に向けて発砲する。
「目が潰れたとしても、別のやつがいるってわけか」
 一輝は屋上にいる兵たちに向かって弾幕援護を放つ。
「な、何だ!発砲してきたのか!?」
 スプレーショットだと勘違いした彼らをみて、一輝がニヤッと笑う。
「いや、待て違う。撃つなぁああ!!」
 兆弾した弾丸が屋上へ落ち、兵の膝を貫通し骨を破壊する。
「門の守りが減ってきたようだな」
「よし、走るぞ!」
 東門から入ろうと阿童が走り、彼に続けて草むらの陰に隠れていたアークも侵入する。
「どうやら大丈夫そうね、気づかれないうちに入るわよっ」
 隙を窺っていたローザマリアとグロリアーナが駆け込む。
「ようやく手製の爆弾を使う時がきたようだね」
 ルーセスカ・フォスネリア(るーせすか・ふぉすねりあ)も門から入り込んだ。



「耐空用の銃が壊れているな、そこから侵入出来そうだ・・・・・・」
 小型飛空挺に乗り、外壁の銃が破損している東門を狙い、クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)が施設内へ侵入しようとする。
「こっちに飛空挺が飛んでくるぞ。撃ち落としてやれ!」
 兵たちはいっせいに機関銃の銃口を向けて発砲する。
「そう簡単に侵入されてたまるか、蜂の巣にしてやれぇええ!」
 怒鳴るように言い銃弾を放つ。
「やはり容易く入れないようだな・・・・・・」
「うわっ、何やってるんだ。そんなところから侵入しようとしたら的にされるぞっ」
 騒ぎに気づいた一輝が驚きのあまり目を丸くした。
 片手を上下に振り、飛空挺から降りるように仕草をする。
「2階からは入れそうにないか・・・。無理はしないでおこう・・・・・・」
 仕方なく門から入ろうと、クルードは飛空挺から飛び降りた。
「行かせるか!」
 クルードを追おうとする兵に向かって一輝が銃弾を放る。
「さて、そろそろ燃料がきれるな。いったん離れてローザとコレットを待つか」
 彼に続けて侵入に成功した理沙の姿を見ると、一輝は施設から離れた。