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【海を支配する水竜王】その女…卑劣な声音

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【海を支配する水竜王】その女…卑劣な声音
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第8章 それぞれの行動

「そんじゃあ俺らは地下7階に行くか」
 地下6階にいるラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)たちは、道具を合成しに上の階に向かうエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)たちと別れた。
「さって、とっとと目的の部屋まで行くか」
 近くにゴーストが潜んでいないか、超感覚で警戒しながら進む。
「この辺にトラップがあるかもしれない。気をつけろよ」
 目を凝らしてトラップの位置を探す。
「暗くてよく見えないわ。どこにあるのかしら・・・」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は小動物のようにキョロキョロと辺りを見回した。
「ルカルカの足元だな」
「きゃぁあ!?」
 驚いたルカルカは床に転びそうになってしまう。
「本当だ・・・こんなところに」
 進もうとしている先の壁際に、放電トラップが仕掛けてあった。
 感知されないように飛び越える。
「他は行き止まりだったから、残る道はこっちの方なんだけど・・・。階段があったわ!皆、こっちよ」
 階段を見つけたルカルカは仲間たちを呼ぶ。
 ゆっくりと降りていくと扉がある。
「扉が開いたみたいね!」
 地下7階の扉のロックが解除された音を聞きいたルカルカは、さっそく扉を力いっぱい押して開ける。
 運搬場に入ると、ベルトコンベアの上を箱が流れている。
「ルカは猫みたいだからな、箱ばかり追いかけてはぐれるなよ」
「何よ!そんなのではぐれたりしないわよっ」
 冗談混じりに言うダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)に、ムッとしたルカルカは頬をぷぅっと膨らませた。
「飛べるカルキとは違うから、先の先まで流れを読むべき・・・」
 髪の引っかけ防止に夏侯 淵(かこう・えん)は後ろでにミツアミ結って挑む。
「って、何を笑っておる」
 傍で笑っているカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)を睨んだ。
「可愛いぜおさげちゃん」
「絡まり防止だというに、ええいウケルなっ!」
 ケラケラと笑いながら言うカルキノスに、淵は顔を真っ赤にして怒鳴る。
「パワーブレスをかけたが、そんなに長くは持たない。効果が切れたら俺のところに来い」
 作業を開始するまえに、ダリルが仲間たちにパワーブレスをかけてやり、各自担当の位置に移動した。



「とりあえず、いくつか箱を確保しよう」
 箱を確保するためにルカルカと淵はベルトコンベアに飛び乗った。
 レバーを切り替えるために、切り替え台の傍でダリルとカルキノスが待機している。
「向こうに箱があるわ」
「よし、切り替えるぞ」
 ダリルはガコンッとレバーを降ろす。
「ダンボールの箱ね」
 拾い上げた箱をダリルに投げ渡し、他のも確保しようとキョロキョロと左右を見る。
「奥の方にあるわ、急がないと流れていっちゃう!」
 飛び跳ねながら、ダリルを急かす。
「今度のはダンボールじゃないわね」
 ルカルカはベルトコンベアの上を流れる2つ目の箱を見つけた。
 緑色の厚紙で作られた箱を拾う。
「ちょっと、こっちのレバーも切り替えてよ」
「そう急かすな」
 ダリルにレバーを切り替えてもらい、ルカルカは元の位置まで戻ってきた。
 ベルトコンベアから飛び降りて彼に箱を渡した。
「あのまま流れていたら、荷物を一緒に別の階層にいきそうだよな。流しそうめんみたいに」
「ルカルカはそんなに背小さくないよっ」
 からかわれた彼女は眉を潜めてムッとした表情をする。
 一方、淵も箱を1つ確保した。
「やっと1つか」
「ベルトコンベアの流れる先に淵なら入れそうだよな」
「あんな狭いところに入れるかっ」
 荷物が流れてくる5cmの正方形の小さな入口と出口に、通れるんじゃないかとカルキノスに言われた淵が怒鳴る。
「箱があるぞ、流れを切り替えてくれ」
「よっと」
 カルキノスはレバーを上げて流れを切り替える。
 3箱拾い上げた淵は、元の位置へ戻りベルトコンベアから飛び降りた。
「空けてみよう」
 水中眼鏡とマスクをつけてルカルカが箱を開けた。
「何だろうこれ。かわいい!」
 中には小さなネコのぬいぐるみが入っている。
 彼女は目を輝かせて抱きしめた。
「―・・・ルカルカ・・・・・・それ、爆弾だぞ!」
「え・・・・・・ば・・・ば、爆弾!?」
 ラルクの叫び声にルカルカはぬいぐるみから手を離し、すぐさまその場から離れた。
 その中からチッチッチッと時計のような音がする。
 ズドォオンッ。
「きゃぁああっ!!」
 ぬいぐるみは爆発し、轟音が響き渡る。
「あと、残り4箱だな」
 残骸を目の前にダリルは冷静な口調で言う。
「数が少なく見えるのに、多く見えるのはなぜ・・・。うぅ・・・怖いよー・・・」
 ルカルカは恐る恐るダンボール箱の蓋を開ける。
 プシュウゥウーッ。
「うぁっ、痺れガスだぞ!」
 吸い込まないように片手で鼻と口を塞いだラルクは慌てて扉を開けて換気する。
「念のため、術で治療しよう」
 痺れ毒を消そうとダリルは仲間たちにキュアポイゾンを使う。
「うぁあん、こんなのばっかりー」
 2連続トラップの箱を開けてしまったルカルカは泣きそうになる。
「殺気看破は効かないし、超感覚も箱を開けた瞬間にしか分からないし・・・。もう開けるの怖いよ・・・」
 彼女はびくびくと怯えながら箱を開けた。
「はぁ・・・よかった何もない」
「いや、ほっとするな。目的の雷の玉がなければ意味がないぞ」
 空っぽの箱だったことに安心したルカルカがダリルに突っ込まれる。
「残り2つ・・・」
 ルカルカは息を呑み、箱の蓋を開ける。
「危ねぇ、離れろーー!!」
「いやぁあ、またトラップ!?」
 ラルクの声にルカルカは扉の方へ走る。
 箱の中から円盤型の機体が3体現れ、ルカルカたちに向かってレーザー光線を発射する。
「でっけーのいくゼー」
 カルキノスはファイアストームで一気に燃やそうと、空中を舞う機体に向かって放ち、熱と冷気で構造を脆くしようとブリザードを放つ。
「よし・・・スクラップにしてやったぜ」
「おい、カルキノス。後ろだ!」
「なっ何だと!?」
 残り1体を倒しきれず、レーザーに両足を撃たれてしまった。
「ちくしょう、イッてぇえ!!」
 術で治せない致命傷にはならなかったが、レーザーが掠った足からボタボタと血が流れる。
「確実に仕留めたかどうか確認するまで油断しないことだな」
 床に転がるカルキノスの元にダリルが駆け寄り、グレーターヒールで彼の傷を癒す。
「勝利を喜ぶなら、確定してから喜ぶんだな」
 淵が諸葛弩の弦を引き、ライトニングウエポンで帯電させた矢で射抜こうと射出口を狙う。
「ぶっ壊れな!」
 放たれた矢が射出口に命中したのを見て、止めを刺そうとラルクが軽身功の体術で壁を駆け上がり、則天去私の拳打をくらわす。
「なんとか片付いたな」
「残りの箱を開けてみろ」
「これで最後ね・・・どうかトラップじゃありませんようにっ」
 ダリルに開けるように言われ、ルカルカは厚紙で作られた箱の蓋を開けてみる。
「―・・・あった!これね・・・薄い金色に輝いているわ。綺麗・・・」
 見つけた雷の玉は宝石のような輝きを放っている。
「これは、どういう物なんだ?何に使うと思う?」
「中に入っているのは電気みたいだが。このガラス玉みたいな材質がなんなのか、分からないな」
「どこかで電力を供給する時とかに使うのか?」
「そうかもな・・・」
 2人が分析している傍でルカルカは他のことを考えていた。
「(だいぶ地下まできたわ。皆は無事かしら。それにしても、水竜さんはどこにいるのかしら?)」
 1階に向かった仲間たちと、捕らわれている水竜の状態を心配し、祈るように両手を握り合わせた。



「この辺りなら敵に気づかれて消されないですよね」
 目印をつけておこうと、エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)がチョークで壁に印しをつける。
「地下4階まで戻ってきたけど、問題はここからだな」
 見つけた道具を合成しようと、エースたちは1階を目指して進む。
「沢山いるね・・・」
 クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)は通路をうろついているゴースト兵に見つからずに進むにはどうしたらいいか考える。
「でも、そこを通らないと上の階には行けないからね」
 進む方法を考えるクマラを見下ろし、メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)は勇気づけるように頭を撫でてやる。
「この人数で見つからずに行くのは大変でしょうからね」
「じゃあどうするんだ?」
 どうやったら進めばいいんだとザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)に、強盗 ヘル(ごうとう・へる)が首を傾げて聞く。
「それは・・・自分にも分かりません」
 ザカコは首を左右に振り、何も案が浮かばない。
「困ったな・・・クマラ、メシエ。少しSPを使いすぎてしまうかもしれないけど。ここを突破するためにやってくれないか」
「エース、何か思いついたの?」
「僕に出来ることなら。で・・・どんな方法で突破するんですか?」
「氷術と火術で霧を作ってオレたちの姿を隠してほしい」
「そっかー、その手があったね」
 なるほどとクマラは頷く。
「切れそうになったらSPリチャージをかけます」
 牢獄の近くではSPルージュを使っている暇はなさそうだと、浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)が補助をする。
「もし追われそうだったら、自分が後方を守ります」
「あぁ頼む」
 エースはザカコの方に顔を向けて頷く。
「それじゃあ・・・行くよ!」
 まずはクマラが術で霧を作り出し、その中に隠れるように見張りの兵を通り過ぎ走り抜ける。
「うぁっ、突然霧が!?」
「足音が聞こえるぞ、近くに誰かいる!」
「(やばいな・・・それならっ)」
 アシッドミストを兵に向かって放つように、エースはメシエへ目配せする。
「ちくしょうっ、逃げられたか」
 酸の霧に囲まれた彼らが、術から開放された頃にはエースたちの姿はなかった。



「なんとか地下3階に来れましたね」
 翡翠はゴーストがいないか睨むように廊下の奥を見る。
「体力を回復しておきましょうか?」
 クマラにSPリチャージをかけてやる。
「ありがとうっ」
 SPを回復してもらったクマラはニコッと笑う。
「今のところ、超感覚も反応しないから大丈夫だと思うわよ」
 彼の傍にいるアリシア・クリケット(ありしあ・くりけっと)が言う。
「敵はやり過ごすことが賢明だろうな・・・。とにかく合流することを考えよう」
 万が一の事態に備え、虎鶫 涼(とらつぐみ・りょう)は念のためアーミーショットガンを構えて進む。
「左側の通路は無理ね。ゴーストの気配がするわ」
 アリシアは天井を這う亡者の気配を察知した。
「向こうはゴースト兵ね。そっちならなんとか追われずに通れそうよ」
「それなら弾幕援護で姿を隠しましょう」
 一気に進もうと、自分と仲間たちの姿を隠す。
「もうすぐ地下2階だ、急げ!」
 涼が上の階に上がる階段を指差す。
「はぁ・・・はぁ・・・もう走れないよ」
「手を出せ、離すなよ」
 一緒に登ってやろうと涼がクマラの手を掴む。
 階段を駆け上がると、地下1階から1階に登る階段付近をゴースト兵たちが見張っている。
「アリシア頼みます」
「分かったわ。皆、目を閉じて!」
 目晦ましさせようと、アリシアが兵に向かって光術を放つ。
「ぐぁっ、何だ!?」
 あまりの眩しさに見張りの兵たちは思わず目を閉じてしまう。
「くそ・・・このまま行かせてたまるかぁあっ」
 兵は足音を頼りにアリシアたちに向かってハンドガンの銃弾を撃つ。
 アルティマ・トゥーレの冷気を纏ったカタールの刃で、ザカコが亡者の手首を斬り落とす。
 1階にたどりついた彼らは会議室に駆け込んだ。
「あーっ、もう走れない」
 ドアを閉めたとたんに、クマラは床にぺたんと座り込む。
「走ったり、階段を一気に登ったからな」
 エースはマグライトの電池を交換しながら彼の方を見る。
 安心しきっていると突然、ドンドンッとドアをノックする音が聞こえた。
「(ゴースト兵か!?)」
 彼はドアに耳を当ててドアの向こうにいる者の声を聞き、生徒かどうか確認しようとする。
「あれ閉まってますね。開けください、合成用の道具を持っている者です」
 ゆっくりドアを開けて確認すると、ゴースト兵でなく生徒のようだ。
「ふぅ・・・。ひとまず合流完了か」
 彼らの姿を見て、涼はほっと息をつく。
「ラキシス、忍。マジックボトルとフラスコ、ちゃんと持っていますよね」
「持っているよ」
「心配しなくても、守りきったのじゃ。途中でゴーストに襲われて転びそうになったんじゃがなぁ」
 大事に持って来たラキシスと忍は、傷1つつけずに持ってきた道具を大和に見せる。
「レッドドロップとパープルシロップは、マジックボトルに入れるのか?」
 ボトルの中にエースがパープルシロップを入れる。
「次はドロップを入れましょうか」
 ザカコがドロップを入れると、シロップの液に溶かされ赤紫色の液体になった。
「フラスコの中には鍵を入れるのかのぅ」
「これだね」
 忍はクマラから受け取った銀の鍵と、北都から受け取ったもう1つの鍵を入れる。
「この液体をフラスコに注ぐのか?」
 涼がフラスコにボトルの液を注ぐ。
「合成したら何が出来るんでしょうね」
 ジュウジュウと溶ける鍵を、大和はじっと見つめる。
 液体の中で解けた鍵が混ざり合い、1つの鍵になった。
 やがて液体は気化し、フラスコは液の酸に耐え切れず、灰となって消えた。
 三日月の型をした鍵が床に落ち、大和が拾い上げる。
「どこかで使うんでしょうか?」
「情報を集めないと、ちょっと分からないな。休憩してから、どこで使うか調べよう」
 ひとまずエースたちは会議室の中で休んだ。