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【海を支配する水竜王】その女…卑劣な声音

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【海を支配する水竜王】その女…卑劣な声音
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第6章 落ちてまた落ちる往復ラッシュ

 地下3階の保管庫から回収した武器を、生徒たちに渡した朝霧 垂(あさぎり・しづり)たちは、さらに地下を目指し進む。
 階段を降りると地下4階にはゴースト兵たちが待機している。
「見張りのやつらいるね・・・」
 ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)のディテクトエビルで、侵入者に対する彼らの殺気を探知した。
「なるべく戦闘は避けたいところですけど。どうします?」
 声を聞かれないように夜霧 朔(よぎり・さく)は垂の方に顔を向けて小声で言う。
「力任せに強行突破するか・・・と言いたいところだが。この先に進むのに余計な体力を消耗したくはないな」
「ではどうしましょうか・・・」
「姿さえ隠せればなんとか行けそうなんだけどな」
 見つからないように進むにはどうしたらいいかと、垂と朔は何か対策案を出そうと考える。
「なぁライゼ。氷術と火術で霧を作り出せないか?」
「術で作った氷を炎でいっきに溶かして霧を作るってことかな」
 ライゼは首を傾げて言う。
「この階段の下の方と兵たちが集まっていて通れないところ。地下5階に降りる階段の3箇所で術を使ってくれ」
「3箇所だね。いざとなったらSPタブレットもあるし、なんとかなるかな」
 垂の説明に頷いたライゼは、地下4階の階段に向かって氷術と火術放ち霧を作り出す。
 突然発生した霧に驚き、何事かと兵たちは慌てふためく。
 その隙にいっきに走り抜けようと、垂たちはライゼが作り出した霧の中に身を隠し階段を駆け降りる。
「(うわぁっ、沢山いる。よし、霧を作ろう!)」
 術を使い霧を作り出し、兵にぶつからないように走る。
「あれが下の階に行く階段か。ライゼ、頼む」
「了解だよっ」
 SPタブレットを口の中に放り込み、階段付近に霧を発生させた。
 階段を駆け降りた頃には、彼女たちは3人とも疲れきっていた。
「はぁ・・・もう走れない」
「霧が消えないうちに走り抜けないといけなかったからな」
「えぇ・・・・・・途中で止まってしまっては・・・、見つかってしまいますからね」
 息を切らせながら朔は壁に寄りかかる。
「ひとまず休憩しましょうか?」
「えーっ、まだいけるよ」
 ライゼはまだ進もうと朔の服の裾を掴む。
「いや、休憩しよう。途中でライゼが術を使えなくなってしまうとこの先厳しいからな。どこか隠れられそうな場所を探そう」
 ひとまず休もうと入れそうなところがないか探す。
「こっちにドアがあります」
 中に何か潜んでいないか、ドアに耳を当てて室内の音を聞こうとする。
「何も聞こえませんね・・・ゴーストがいないければいいんですけど」
 ドアノブに手をかけて、ゆっくりと開ける。
 そっと覗き込むと、中にあったのは鉄くずだけだった。
「大丈夫です、何もいません」
「よし、そこで休もうか」
 垂たちは地下5階の廃材庫のドアを閉め、休憩することにした。



「連絡が来ないな・・・」
 景山 悪徒(かげやま・あくと)は休憩がてら、小型 大首領様(こがた・だいしゅりょうさま)からの連絡を待ったが、連絡がくる気配がまったくない。
「ここにいてもしかたないし、とりあえず上の階に行ってみるか」
 まず4階に向かおうと階段を登る。
「ゴースト兵たちはいないみたいだから、今のうちに進むとしよう」
 廊下の上を数歩進むと、突然ぐらぐらと床が左右に揺れる。
「おぁっ、何だこれは!床が斜めに!?」
 床が70度に傾き、足を滑らせた悪徒は3階に落ちてしまった。
「どぁあーっ!」
 悪徒は顔面からべしゃっと床に落下した。
「イッてて・・・。通るにはかなりバランス感覚が必要だな・・・1人じゃ無理だ。誰かと一緒に進まないと・・・」
 上の階に進む人たちと一緒に進むために、4階で待とうと階段を登った。



「アウラさんたちは地下へ進んでいるようですから、遙遠たちは上の階を目指しましょう」
 3階にいる緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は5階を目指すために、階段を登り4階へと向かう。
「この床・・・気をつけて進まないと、3階に落とされてしまいますね」
 紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)は床を踏んで進めそうか確かめる。
「なぁ、この先に進むのか。よかったら一緒に行ってほしいんだが。1人だと通れなくてな」
 一緒に5階へ進もうと悪徒が声をかけてきた。
「施設の兵と同じ服を着ているようですが・・・」
 眉を潜めて遙遠は警戒しているような眼差しを悪徒に向ける。
「ちっ違う、俺はゴースト兵じゃない!」
 ヘキサハンマーを構える遙遠に、悪徒は慌てて言う。
「そうなんですか?てっきりここの兵かと思いました」
 ゴーストじゃないと分かり、遙遠はハンマーを下ろした。
「あれ?そこに誰かいるのか?」
 3人の話し声を聞いた佐伯 梓(さえき・あずさ)が階段を登ってきた。
「(ふむ・・・何とか進めそうか?)」
 他の生徒たちと協力て進もうと待っている遙遠たちを見て、オゼト・ザクイウェム(おぜと・ざくいうぇむ)はほっと一安心する。
「(若干、人数が足りないような気もする・・・が!?)」
 いっきに走り抜けようとするが、ズズズッと床が傾いてしまいオゼトたちは3階に滑り落ちてしまう。
「あ〜、イッてー・・・」
 梓は落下の衝撃で痛めた足をさすりながら起き上がった。
「もう1度試してみましょう」
「そうだな・・・」
 遙遠に言われ梓はもう1度チャレンジしようと、協力者の生徒たちと共に4階に向かう。
「進む時に左右のバランスをとらないとな」
 右側を歩こうと梓とオゼトは右端に寄る。
「遙遠と遥遠は左側を歩きましょうか」
「それじゃあ俺は真ん中な」
 進む人数を合わせようと、悪徒は真ん中を歩くことにした。
「あぁっ、もうちょっと右に行ってください」
「え?こっちか・・・?」
 床が傾いてしまい、遙遠は悪徒に少し右側へ移動してほしいと言い、落ちないように踏み止まろうとする。
「おぉおい、こっちが傾いてるんだけど!」
「えぇ!?あ、こっちか?」
「こっちに来すぎです、もう少しそっちへ!」
「は・・・ぇえ!?どっちに行けばいんだぁあ!!」
 悪徒はどっちにいったらいいか分からず、左右にうろうろ動き回る。
「(―・・・落ちるな・・・これは)」
 落ちる瞬間、オゼトは冷静に諦めた。
 ドサドサァアッ。
 足を滑らせた5人は、3階に落とされてしまった。
「あともうちょいで、1つ目の床を通り抜けられそうだったのによぉ・・・」
 床をダンッと踏んだ悪徒は悔しそうに言う。
「仕方ありません・・・。後、何度落ちるか分かりませんけど。4階に戻りましょう」
 遙遠は天井を見上げ、ため息をついた。