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【十二の星の華】マ・メール・ロアでお茶会を

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【十二の星の華】マ・メール・ロアでお茶会を

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「ティセラ様に投資してみるなんていかがですかぁ?」
 雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)が環菜へと問いかける。
「軍事国家は大量の武器を必要としますしぃ、都市整備、工場建設……投資対象としては十分魅力がありますわよぉ」
 煽るような発言に環菜の護衛として控えているヴァンガード隊員や他の学生たちが身構える。
「流石にそれは遠慮しておくわ」
 身構えた彼らを制しつつ、環菜が応えると、リナリエッタは「そう」と短く頷いて、ティセラの方へと向き直る。
「私ティセラ様にお聞きしたいことがあります。ティセラ様の考える軍事国家とは一体どのような体制になるのですかぁ?
 自分が何をしたいのか。その中身、そして何故それを考えるようになったのか……きちんと示していただければ、それに共感してティセラ様に身を捧げてくださる方が増えると思いますわぁ」
「わたくしの考える軍事国家とは、女王を始め、国軍が強い国ですわ。民は女王と国軍に守られて平和に暮らせる国ですの」
 共感してくださる方が増えるのは良いことですわ、と微笑んでティセラは答える。
「リナリエッタさんは共感してくださいますの?」
「私? 私は銃や剣を持つより、その手で殿方にワインを振舞うほうが得意な方でして、戦力としてはお役に立てないかと。ふふ」
 ティセラに問われれば、リナリエッタは微笑んで、そう答える。
 不意に、リナリエッタの隣に座っていた彼女のパートナー、南西風 こち(やまじ・こち)が手を上げた。
「……ごきげんよう。こちと申します。こちは機晶姫です」
 ティセラの視線が己へと向けられたのを確認してから、こちは挨拶から話し始める。
「お姉様達は、立派な武器を持っていると聞きました。……そして、とても強いとも聞きました。けど、こちは、起きた時に何も持っていませんでした。……こちや他の人達は、昔は強かったですか? 戦ってたのですか?」
「古代国家の軍事体制について、参考程度に教えていただきたいのですわぁ」
 こちの言葉を補うように、リナリエッタが言う。
「……マスターの言う通りです。教えてもらえますか?」
 リナリエッタの言葉に頷いて、こちは首を傾げ、ティセラを見る。
「残念ながら、シャンバラ古王国時代の軍事体制は知りませんの」
 答えられないとティセラは首を横に振った。
 ティセラの前に、そっとチーズケーキが差し出される。
 隣に立つ給仕の顔を窺えば、それは本郷 翔(ほんごう・かける)であった。
「どうぞ、一息ついてください」
「ありがとうございます」
 微笑む翔に、ティセラも微笑み返す。
 「次の質問は?」といった視線を向けつつもフォークを手に持ち、ケーキを一口サイズに切り分け、口へと運んでいく。
「お疲れでしたら、肩でもお揉みしましょうか? リラックスできるでしょう?」
「そこまで疲労しているわけではありませんから、大丈夫ですわ」
 翔の問いかけに、ティセラは答える。
「あの、少し伺いたい事が在るのですが、宜しいでしょうか?」
 次に挙手して訊ねたのは、月詠 司(つくよみ・つかさ)だ。
 ティセラが頷けば、司は改めて、口を開き、質問を言の葉に乗せ始める。
「私は、十二星華に、ティセラくん一派に興味があるのです。あなたのこと、仲間の十二星華のこと、敵対している十二星華のこと、それに十二星華以外の仲間がいれば、その彼らのことなど教えていただけないでしょうか?」
「仲良くしているのはセイニィにパッフェル……エメネアさんも今は協力してくださっていますわ。敵対といえば、テティス、さんかしら? クイーン・ヴァンガードとか仰るそちらの女王候補の下に居るのでしょう?」
 司の問いに、ティセラは一部だけ答えた。
「ありがとうございます」
 彼が礼を告げれば、「どういたしまして」とティセラは微笑む。
「バルコニーで話さないか?」
 如月 正悟(きさらぎ・しょうご)がティセラを誘った。
「構いませんわ」
 誘いにのったティセラの後を親衛隊が護衛として追おうとする。
「同じ食堂内ですから……」
 ティセラが言えば、離れたところに親衛隊が控える形になった。
「まずは此度の手紙をエメネアが持って来た辺り、彼女の洗脳、たぶん解けてないよね? その辺り、聞かせてもらいたいかな」
「エメネアさんが洗脳されている? 随分酷いことをなさる方もいらっしゃいますのね」
 皆とお茶を飲んでいる様子のエメネアへと視線を向けながら、ティセラが答える。
 自分は洗脳していない、というのだ。
「その酷いことをするのがティセラさん、君ではないかと聞いているんだけどな……」
 ティセラの様子に正悟はため息を1つ吐く。
「前から思ってたんだけど女王目指そうかってしてる人間が洗脳なんてセコイ手をつかったり、かとおもえば今回みたいに大胆なまねしたり……何がしたいんだ?」
「いろいろ行ってみて、可能性を模索中ですわ」
 微笑むティセラに、正悟は納得したわけではないけれど、次の質問を紡ぎ出す。
「軍事国家を目指すという話は以前聞いたけど、そのわりには行動が全然あってない気がするし……もし『本当』の目的があるのなら教えて欲しいな」
「シャンバラ女王の必要性を皆様に分かっていただこうとしていますの」
「うん。あとは……そうだな、ティセラさん、個人的には、ティセラさんのほうが好みだし、もしあなたの陣営に手を貸すとしてそれに対するメリットがあるなら教えて欲しいんだ。
 ま、陣営に入ったとしても以後洗脳なんて事したら離れるかもしれないし、その場合は力の弱い弱者なりに全力で抵抗させてもらうとおもうけどね」
 訊ねた後ぽつりと告げる正悟を見て、ティセラは一息吐き出し。
「メリットがなければいけないような人の手は借りませんわ」
 長テーブルへと戻りながら、告げる。
 バルコニーへと1人取り残され、正悟は質問を誤ったな……とため息をついた。
「ハーブティーでございます」
 椅子へと座ったティセラに、ティーカップを差し出したのは虎鶫 涼(とらつぐみ・りょう)だ。
 ティセラや環菜の意思、十二星華の情報など、聞き逃せない情報があると踏んでやって来た涼は、給仕をしながら話の内容に耳を傾けているのだ。
 今のバルコニーでの話も離れたところから聞いていて、ティセラの様子を窺い、戻ってくる直前にハーブティーを用意した。
 「ありがとう」とティセラは差し出されたティーカップを手にし、一口飲んでから、ほぅっと息をつく。