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リアクション
第4章 要塞内を探索?
お茶会が始まるまでの間、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)は取材用カメラを手に、食堂から出ていた。
取材に興味を持った彼女は、要塞内部や今回のお茶会の様子を記録することで、何かあったとき、対応できるようにしようと思ったのだ。
発着所から食堂までの間は至るところに防火扉が下ろされており、お手洗いくらいしか、覗ける場所はない。
そろそろお茶会が始まる頃合だろうかと、食堂に戻ると、皆へと紅茶や珈琲が配り終わっており、丁度、始まるときであった。
「浮遊要塞の実力、教導団員としては大いに興味をそそられる対象だ」
要塞の構造や機能について調べたいと考えたクレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)は、茶会が始まるなり、ティセラへと辺りを歩き回る許可を求めた。
「食堂から発着所までの間、皆様が行き来して良い場所であれば、構いませんわ」
ティセラから答えを受け取れば、パートナー2人を伴って、早速食堂を出て行く。
クレーメックは発着所から、食堂まで歩いてきた廊下を歩くことにした。
「あれ?」
ビデオカメラを手にした麻生 優子(あそう・ゆうこ)は、首を傾げた。
録画ボタンを押してみても反応がない。
「撮影はご遠慮くださいってことね?」
1人納得して、優子はカメラを仕舞いこむと代わりにスケッチブックと鉛筆を取り出した。
廊下の様子を記していく。
一通り廊下を歩き、発着所へと辿り着くと、クレーメックは振り返り、廊下を見た。
お茶会の前に優希が確認したのと同様に、至るところは防火扉が閉められており、途中で立ち寄ることが出来たのはお手洗いくらいだ。
優子は途中のお手洗いや発着所の景色もスケッチブックへと収めている。絵の中には通気口などもしっかり記していく。
「関係ないところは見せないということだな?」
呟きつつ、防火扉に触れてみる。
破壊しようと思えば出来るのかもしれないが、それは教導団員として逸脱した行為になるだろうと判断し、行わない。
「何してるのかな?」
クレーメックたちの後方から声が掛けられた。
振り返ってみると、シャムシエルが立っている。
「いや、この浮遊要塞に興味を持ったので、探索したいと思ったんだが、あまり歩き回れないのだな?」
クレーメックが訊ねると、シャムシエルは「それはそうだ」と笑う。
「今回はお茶会のために招いたんだから、そう簡単に手の内は見せないってことだよ」
くすくすと笑いながら告げる。
「ところで、聞きたいことがあるのですが」
桐島 麗子(きりしま・れいこ)がマイクを向けた。
「録音するの? 出来ないでしょ?」
シャムシエルが訊ねるので、麗子は今の言葉がきちんと録音されているのか、再生してみた。けれど、砂嵐のようなザーッという音が聞こえるだけで、言葉は録音されていない。
マイクは仕舞いこんで、麗子はメモ帳とペンを取り出し、メモをとる準備をする。
「改めて。あんたはティセラのことをどう思っていますの?」
「そうだね。気高く孤高で、人恋しいお嬢様、ってところかな」
シャムシエルの答えをメモへと走り書いて、麗子は礼を告げた。
「どういたしまして。今日はお茶会の席なのだから、探索は程ほどにして、食堂に戻りなよ?」
3人に向かってそう告げると、シャムシエルは奥へと去っていく。
追おうとしたけれど、奥の防火扉はやはり閉まっていて、追って内部を知ることは出来ない。
シャムシエルの忠告どおり、3人は食堂へと戻ることにした。
歩きながら、クレーメックは思う。
教導団がより大きな利益を得られるのであれば、ミルザム支持を撤回してティセラ支持に動くのも一手ではないか、と。
環菜や他校生の前で告げるようなことではないため、例え食堂に戻ったとしても、その考えを誰かに伝えるつもりはないけれど。
茶会の途中でお手洗いに行くと席を立つ隼人に、パートナーの士元は退路の確保を指示した。
食堂を後にして、まずは発着所へと向かう。
飛空挺がなくなっているなんてことはなく、その傍で待機しているアリアも無事のようだ。
蒼空学園で留守をしている風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)へと連絡を取ろうと、携帯電話を取り出す。
発信してみるけれど、電波が届いていない旨のアナウンスが流れるだけで、繋がる様子がない。
「おかしいな……」
携帯でのメールも試みてみるけれど、そもそもネット回線に繋がらない。
妨害電波でも出されているのだろうか。
環菜を初めとする学生たちを孤立させ、罠に嵌めるつもりかと考える。
何があっても脱出できるよう、退路確保のため、隼人も発着所で待機し、飛空挺を見守ることにした。
「さぁて……何か面白そうなものは、っと……」
食堂を抜け出した司は、廊下を歩く。
食堂にはティセラ以外の彼女の仲間が居なかったため、廊下で出逢うことを願ってみた。
けれど、何処もかしこも防火扉が下ろされて、行き来できる範囲も発着所と食堂、お手洗いだけ。
それだけの間で、彼女の仲間に出逢うことはなくて、また食堂へと戻ることにした。
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