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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第3回/全3回)

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 また、その一方、赫夜を助けたいという意図で動いていた、ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)はミルザムから赫夜を遠ざけつつ、説得しようと試みていた。
 ラルクはその破壊力ある拳で、赫夜の体を狙う。軽身功でフットワーク軽く動きつつ、ドラゴンアーツを乗せて、赫夜に致命傷を負わせないよう、拳を次々と繰り出す。
「お前がやるべき事は…こんな事じゃねぇはずだ! 赫夜! こんな事意味ねぇんだよ! それはお前が一番知ってることだろう!?」
 強化スーツのためか、飛躍力が上がっている赫夜だったが、ラルクの拳が一発、腹部にヒットする。
「うっ…」
 腹部を押さえ、うずくまりつつも、よたよたと内股で立ち上がる赫夜。
「俺は、こんなにがんじがらめにされているお前を救ってやりてぇ! 俺だって、愛してる奴の為だったら、何だってする! だから、お前の気持ちわからなくもねぇ。でもだ。だからこそ二人とも幸せになるべきなんだよ!」
 ラルクの言葉に、動揺する赫夜。一瞬、星双頭剣を下ろそうとする。
 しかし、その時だった。
 屋上から見下している真珠の声が、響き渡る。
 その指には不気味に青い指輪が強弱をつけ、輝きを放っていた。それはまるで、真珠のこころとシンクロしているかのように見えた。
「姉様、何をしているの? 姉様、あなたのすべきことは、理解しているはず。…姉様、皆殺しにしなさい。ミルザムを、そしてミルザムを護るもの、その男のようにあなたの心を乱す者、全て殺しなさい。それが姉様、あなたに課せられた運命」
「何言ってやがる! 真珠! 本気なのか!」
 さすがのラルクも真珠の変貌ぶりに驚いてしまう。
「そうでないと、この私の体も心も壊れてしまうのよ。姉様、姉様は誰が一番大事なの? それは私でしょう?」
 一瞬、がっくりとうなだれる赫夜。恐らく絶望の淵に立たされているのだろう。しかし、星双頭剣をにぎり直すと、ラルクに、そしてその先にいるミルザムに向かって突進してくる。
「ちくしょう…!!」
 ラルクは赫夜の気持ちが痛いほど理解できた。しかし、無意味な殺生をさせるわけにはいかない。力尽くでも、自分が傷付いてもいい、そうラルクは覚悟を決め、赫夜を止めるつもりで赫夜に正面を向いた。
「助太刀いたします!」
 そこに『二刀の構え』で九条 風天(くじょう・ふうてん)がラルクを斬りつけようとする赫夜の剣をなぎ払う。
「赫夜さん、本意じゃないんでしょう!? あなたの性格ですから、今の状況はとても苦しいはず! でも、これ以上の争いは無用です!」
 風天は叫ぶ。
「…やめてくれ」
 赫夜は仮面の下から、絞り出すような声を出す。
「やめてくれ、私のことなど、どうなってもいい。あなたたちを殺したくもない! 争いたくもない! だが、今の私にはこれしか道がないんだ! 私はミルザム殿を討ち取らなければならない…今の私は『悪』そのものだ。だから、お願いだ、私のことなど、気にかけないでくれ!」
「馬鹿なこと言うな!」
「馬鹿なことを言わないで下さい!」
 ラルクと風天は同時に叫ぶが、意を決したのか、赫夜は二人に『その身を蝕む妄執』をかけると、強化スーツで二人の頭上を飛び越えた。
 ラルクと風天はその場にうずくまってしまう。二人にかけられた『その身を蝕む妄執』は、それほどきついものではないことを、二人は悟った。
「うう…赫夜さん…」
「バカヤロー…とことん、バカだぜ、かぐや…」


☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆


 その一方。
 怪しい人物がいないか探っていた夕凪 あざみ(ゆうなぎ・あざみ)がシャープシューターを構えている三池 惟人を見つけた。隠れ身で姿を隠しているため、あざみの姿は見えない。
 その惟人の構えるシャープシューターの標的の先にいるのは、そう、ミルザムだった。
「うにゃ! そうはさせないです!」
 飛びかかるあざみ。
「な、何をする!」
 さすがに突然現れたあざみに驚く惟人は、シャープシューターをあざみに向け、発砲しようとする。
「おっとそうはさせないぜ!」
 軍用バイクを操縦し、惟人を探していた霧島 玖朔(きりしま・くざく)が、あざみを背後にし、強化型光条兵器で、惟人の前に立ちふさがる。玖朔は赫夜と真珠を助けたい、その一心でキーマンとなる惟人を探していたのだ。
(藤野姉妹、なんとかしてやりたい…!! 助けてやりたい…!!)
 強い決意が、玖朔の心の中、青い炎を燃やしていた。
「何をやってるんだい、君たち」
 急に紳士のように振る舞う惟人。
「今更何を! ミルザム様をあなたは狙っていたではないですかー!」
「そうそう、それはこっちのセリフだぜ、三池 惟人、いや『ミケロット・ダ・コレーリア』
 玖朔は、惟人に致命傷を与えてしまうと、謎を解く鍵がなくなってしまうと考え、『弾幕援護』を使用し、惟人の視界を遮ってしまう。だが、敵もさるもの。
「…なんのことかな? 僕はミルザム様を護るために、あの『アッサシーナ・ネラ』を狙っていただけだよ」
 と、にっこり笑うとそのまま惟人は、玖朔とあざみに向けてシャープシューターを撃ってきたのだ。
「あぶないですー!」
「畜生!」
 しかし、その一方、弾幕のなか、ひっそりと惟人の姿を伺うものがいた。弥涼 総司(いすず・そうじ)である。
「『部員の恋路は応援する』『ミルザムも守る』両方やらなくっちゃあならないってのが、『部長』のつらいところだな。」