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リアクション
第2章 扉を開けて
扉の前へと辿り着いた一行。
エメネアとその護衛をするという学生たちは、扉から少し距離を取るために、改めて下がっていく。
エメネアを追いかけてきたというゴーレムも今は鳴りを潜めているのか、扉の向こうから、それを開こうとする音はしない。
「あの……皆さん、ここに来る途中で、いろいろ調べてみたのですが……」
陽太が皆に向けて、遠慮がちに声を掛けた。
「この神殿の外は、通ってきたようにジャングルが広がっています。そちらへと逃がすと見つけるのも困難になるでしょう。ですので、討ち漏らしのないように戦うことが必要になると思います。扉を開けていただいたら、出来る限りこれより先でゴーレムの相手をし、それでも出てくるものは後ろに控えた方々が討つ……そういったスタイルで戦うのはどうでしょうか?」
「それでよいのではないだろうか?」
クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)が頷き、他の皆も頷き合う。
「ところで、エメネア。地下部分、どの程度の被害まで許容されるのだろうか? ガーディアンゴーレムというくらいだ、何かを護っているのではないか? とすれば、その『護るべきもの』まで破壊してしまっては困るだろう。ゴーレムは待機状態で特に何かを護っていたわけでもないなら、いっそ地下ごと埋め潰す手もあるが?」
彼女はエメネアの方を向くと、そう訊ねた。
「奥に何かを確認したわけではありませんが、ないとも限りませんー……。なので、埋め潰すのは勘弁してくださいー……」
通路が通れなくなってしまうと聞くと、エメネアは思い切り首を横に振った。
「多少の破壊は仕方ないことですので、構いません。最終的に安心して通れるようにしてくださいーー」
「そうか。もう1つ……ゴーレムの弱点は分かるだろうか? ゴーレムにもいろいろ種類はあるだろうが。魔術的にキーワードが刻まれていたり、構造的に弱い部分があったり、何かそういう弱点があるならそこを狙えば効率的なのだが」
クレアの2つ目の質問にエメネアは軽く首を横に振った。
「逃げるのに必死で、そういうところは確認していません……。ゴーレムの存在自体も潜って初めて知りましたので、どういったものを用意しているのか聞いたこともありませんしー……」
お役に立てず……とエメネアは肩を落とした。
「嘆いても仕方ないのであります! 早々に作戦開始といきましょう!」
そう言って相沢 洋(あいざわ・ひろし)は隠れ身を用いて、扉の傍に控える。彼のパートナー、乃木坂 みと(のぎさか・みと)も扉が開いて直ぐ、奇襲を仕掛けることが出来るよう、ハーフムーンロッドを構えた。
後部座席を取り払い、銃座として機関銃を固定している小型飛空挺に乗り込んだ天城 一輝(あまぎ・いっき)は扉の上の辺りで、ホバリングしている。
『誤作動、ということは、そうした事態に対応する緊急停止装置がある筈でしょう? いちいち誤作動の度に討伐隊を出して破壊していたのでは、コストパフォーマンスに見合わないのではないかしら? 緊急停止装置、まさか無い、なんていうことは無いと思うのだけれども、その辺りはどうなの、エメネア?』
手渡していた無線機越しにローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は、後方で護衛の学生たちの後ろで応援をしようとしているエメネアに問いかけた。
「ないことはないのかもしれませんが、分からないのですー……」
ゴーレムの存在自体、追われて初めて気付いたのだから、それを止める術も知るはずない。
「再び、討伐隊を組んで、倒してもらう、などということがないように、ゴーレムは破壊してくださってかまいませんから!!」
そう告げて、エメネアは無線機越しのローザマリアたちや周りの皆に「よろしくお願いします」と改めて、頭を下げる。
「お茶会と言い今回と言い、エメネアさんの事件は情報が少ないわね……」
危険を承知でゴーレムに近付くというアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)と、後方から狙撃する者たちが狙撃しやすいよう囮となることにしたヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)が、観音開きの扉それぞれに手を掛けた。
重量のある扉をゆっくりと開いていく。
開かれた扉の先、階段を下りた辺りに、ゴーレムたちが立ち並んでいた。
閉じ込められた後、一度はスリープ状態にでもなっていたようで、学生たちの存在を感じ取ると、瞳らしき部位に光が点り、それぞれが武器を構え始め、ゆっくりと階段を上って来る。
同時に、陽太の構えた星輝銃から、雷電が放たれた。雷電はゴーレムたち全体の間を駆け巡り、傷を与えていく。
それを戦闘開始の合図に、ゴーレムたち、そして学生たちが動き始めた。
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