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【十二の星の華】ゴアドー島を襲うもの

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【十二の星の華】ゴアドー島を襲うもの

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「とりあえず、びーむ対策よ」
 告げて伏見 明子(ふしみ・めいこ)は、自分を含め周りの皆が魔法的な攻撃に抵抗できるよう、聖域を張った。
 更に自分の攻撃力を高める。
「……なんていうか、すっかりメイスが手に馴染んできたわねえ」
 明子はフェイスフルメイスを握り締め、ゴーレムへと近付いていきながらぼやいた。
 重くてかさばるキマク鋼で出来た盾で、ゴーレムが振り回すハンマーでの攻撃を受け流しながら、隙を突いてメイスで殴りかかる。
「任務をこなしたら、きっと美味しい食事にありつけると思うんどす。エメネアさん、安価で美味しくてそこそこ多い量とか期待してはりますよ!!」
 イルマ・スターリング(いるま・すたーりんぐ)は告げながら、雷を呼び出し、ゴーレムへと飛ばす。
 玲もナラカに棲む蜘蛛の吐いた糸に特殊な処置を施すことで作られた鋭い刃物を手に、ゴーレムに近付いていくと、その刃物に闇黒の属性を纏わせ、切りつけた。
 久はエメネアを背に庇いながら、魔獣を呼び出す。呼び出された魔獣は、一帯を駆け回り、ゴーレムへとぶつかるようにして痛みを与えていく。
「機械部品とかがあって電気に弱かったらラッキーよね」
 言いながらルルール・ルルルルル(るるーる・るるるるる)が呼び出したのは降り注ぐほどの雷だ。
 ゴーレムに向かって雷が次々と降り注ぎ、大きな痛みを与えた。
 佐野 豊実(さの・とよみ)が大振りの太刀を振り上げる。音速を超えた一撃が繰り出され、ゴーレムの首が落とされる。
「ところでエメネアちゃん……ソボクな疑問なんだけどね。ここって貴女がずーっといた所なのよね?」
「ええ」
 近付いてくるゴーレムは居なくなったところで、とルルールが訊ねる。
「じゃあ、星槍ほどじゃないにしても、エメネアちゃん用の武器とか置いてないの? 守護が役目だったんなら、予備武器位あってもおかしく無いんじゃない? ……ねえ、どうかな?」
「……そう、ですよね」
 バーゲンで買い込んだ品物の中に、武具の類もあったかもしれないとエメネアは思い出す。
 ただ、買っていたとしても何処に置いたかまでが思い出せないのだけれど。
「あったとしても何処を探したものか、と……次に皆さんと戦場に出るときには、手にしておけるように探しておきますねー」
 口元に苦笑いを浮かべて、エメネアはそう答えた。
「久君も言っているが、失敗など誰でもする事だからねえ。それを解決する為に動けたんだから、自責はほどほどにだ」
 エメネアが落ち込んでやしないかと心配した豊実も声を掛けてくる。
「はい」
「長らくこの、絶空の孤島でお役目を果たして来たんだろう? 子供じみた性格もバーゲン好き大いに結構。気晴らしは必要ってものだよ。私たちに出来る限りなら、こうやってフォローするから……さ」
 豊実の言葉に、エメネアは「ありがとうございますー」と、微笑んだ。
 彼女の周りが和やかな空気に包まれようとも、ゴーレムと戦っている前線は未だ、緊迫したままだ。
「先ずは、一手――先陣、賜ります!」
 上杉 菊(うえすぎ・きく)が放った炎の嵐が、扉の奥から出てくるゴーレムを次々と包み込んでいく。
「続いて二手――高温で熱せられ、次いで急速に冷凍する……如何な強度を誇るゴーレムとは云え、脆弱化は避けられまい!」
 死刑執行人が使用していたという巨大な剣を振るうグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)は、その剣から冷気を放ちながら、ゴーレムに斬りかかった。
 熱せられたゴーレムの身体が、一気に冷気に晒されていく。
「三手――ゴーレムでもポイントを絞って撃ち抜けば、無事では済まないでしょう?」
 ローザマリアは、ゴーレムの膝関節部分へと狙い澄ました一撃を撃ち出した。
「はわ。四手――投了でチェックメイト、なの。真理を、死に変えて、おやすみなさい、なの」
 片足を破壊され、後方へと倒れ込むゴーレムに向かって、エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)が大鎌を振るう。振るわれた大鎌から爆炎が放たれ、ゴーレムを再び、炎で包み込む。
 燃やされながらもゴーレムは腕部を持ち上げるけれど、それより早くローザマリアが弾を撃ち出し、その発射口を狙う。
「私は不可視の狙撃者――私の存在を知覚した時には、何もかもが終わった後よ」
 エネルギーが集められつつあった、腕部が暴発し、ゴーレムは動きを止めた。
 瞳の部分に点っていた光が徐々に消えていく。
 奥から更に出てくるゴーレムたちに、ライザと菊がそれぞれの技で凍らせ、足止めをしていく。
「はわ……強い、の。でも負けない、退かない、振り向かない、から」
 足止めされたゴーレムたちにエリシュカの振るう大鎌から放たれる爆炎が飛び、次々と痛みを与えていった。
 神野 永太(じんの・えいた)が連れてきた狼のマルクスと巨大甲虫の姫子にゴーレムの間を動き回らせる。スライムのハイデッガーも連れてきていたけれど、ゴーレム相手に戦力になりそうにない、と後方でヌルヌルと蠢かせておいた。
 そして、彼自身は護国の聖域を展開させ、ビームへの対策を立てた後、弾幕を張り、ゴーレムの魔法防御を下げた。
 燦式鎮護機 ザイエンデ(さんしきちんごき・ざいえんで)は、六連ミサイルポッドをけん制として、ゴーレムに向かって放った。
 その間に、加速ブースターを2基稼動させ、ゴーレムと距離を詰める。
「では、行きますよ」
 静かに、淡々と告げれば、先端部分に螺旋状の溝が入った円錐形のドリルでゴーレムの身体を穿った。
 火花が散り、ゴーレムの身体に穴が開く。
 それでもまだ動くゴーレムに、ザイエンデは2発目、3発目……と、ドリルでの攻撃を繰り返した。
「さて、俺はサポートにでも徹するか……」
 呟く虎鶫 涼(とらつぐみ・りょう)は、自分からゴーレムに向かうことはせず、ゴーレムの間を駆け回っているアリアを目に留めると、彼女のサポートをするように、ゴーレムの手足を狙って、アーミーショットガンから轟雷を放った。
 寸でのところでゴーレムからの一撃を喰らいそうになっていたアリアは、突然の轟雷に驚きはするものの、顔を上げて助っ人の確認をすると笑んだ。
 ゴーレムの間を駆け回っていた彼女の制服はボロボロで、下着が見えないようにと庇って動いていたため、ゴーレムからの一撃を受けそうになっていたのだ。
「アリアおねえちゃん、大丈夫ですー?」
 ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)がアリアへと駆け寄り、ぎゅっと抱きついた。それと共に、彼女の傷を大きく癒しの力で癒していく。
「ええ、大丈夫。ありがとう」
 ボロボロの服が戻ることはないけれど、その下の傷が次々と癒えていくのを感じて、アリアは微笑む。
 ヴァーナーの持っている天使の救急箱の中の包帯やら消毒液やらを用いて、アリアの傷をあっという間に治していった。
「甘いな。動きが鈍いぞ!」
 その間、涼が続けざまにショットガンで撃ち抜くなどしてゴーレムを足止めしている。
 教導団から地雷や手榴弾をくすねて来てゴーレムに対して罠を仕掛けようとしていた白 舞(はく・まい)であったが、盗んだところでセキュリティの高い教導団から逃げられるわけもなく、自身が所属する葦原明倫館と教導団の関係を悪くするだけだ。
 予め教導団に所属する学生に協力を得ておけば、それらの用意も出来たかもしれないけれど、得てもいない。
 仕方なく、当初の予定は諦めて、舞はクナイを手に、ゴーレムへと立ち向かった。